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改訂版2010年代ベストアルバム. 30~21位

どうも。

では改訂版2010年代ベストアルバム、続けていきましょう。今回は30位から21位。

このような感じです。

では、早速30位から行きましょう。

30(65).Red/Taylor Swift (2012)

30位はテイラー・スウィフト。2012年に発表した4枚目のアルバムですね、「Red」。自分でも驚いたんですけど、前回65位は自分でも評価低いですね。そう思って今回上げておきました。このアルバムこそが彼女のキャリアを見るに最大の転換作ですね。やはり、それまではどんなに巨大に成功していたとは言え、カントリーという分野の人だったわけで。ただ、それだとどうしても音楽表現的に制限が出来てしまうし、カントリーに置かれることが、まだ20代前半だった彼女の音楽的成長を止めることになってしまうのではないか。そう思うと、ここでの踏み出しは歓迎だし実際かなり上手く行ったと思うんですよね。そうすることによって、サウンドに広がりが持てただけでなく、彼女がもっとも得意とするところの歌詞のストーリーの設定や展開に大きな広がりを持てるに至りましたからね。やっぱりそれまでだと、どんなに少女たちからの歌詞への共感といったところで「田舎に住む女の子」の域を出にくかったし、描く世界も限定されかねませんでしたからね。そこが自由になったからこそ、彼女の描く世界は一気に広がった。しかもそれが、彼女のこれまでの音楽的ルーツを損なう形でなく(補足しておくと、ロックっぽいカントリー・シンガーとしても10代にして彼女は相当レベル高かった)、不自然なく移行できたんですから。そこから先に関しては、時には絶賛するし時には酷評もする感じですね(笑)。ケイシーのとこでも指摘した「Reputation 」での不似合いすぎるラップから離れたのは良いことですけど、彼女がジャック・アントノフ系として最近流行りのインディ・ガールズっぽい感じで行くなら、その領域ならもっと本心で愛せるアーティストならいるかな、というのが本音でしょうかね。


29(-).Fine Line/Harry Stayles (2019)

29位からハリー・スタイルズ。このセカンド・アルバムは前回入れるのはさすがに難しいです。なにせリリースされたのが2019年の12月の2週目。年間ベストに間に合わせて入れるのがやっとで、年代ベストになんて考える余裕なかったですもの。ただ、リリースされた時から語り継がれる傑作になる予感ならあったんですよ。成長、本当にすごかったから。ワン・ダイレクションの時代から、ハリーはロック・フレンドリーだったことは有名で、その頃から好感は抱いてたんですよね。ソロも早くからロックが期待されてて、2016年のソロ・デビュー曲の「Sign Of The Times」もボウイやプリンスを失った直後のロックに対しての彼なりの意気込みを感じさせるもので興奮しました。ただ、デビュー・アルバムは真っ正面からクラシック・ロックをやろうとしすぎるがあまり、気持ちが実際の彼に追い付いてなくから回ってしまった感が否めませんでした。そこをこのアルバムでは、アイドルの出自をあえて認めつつも、その上でロックするという路線のもと、彼自身とソングライターのキッド・ハープーンが取り組んだ結果、よい意味でのポップな軽さと普遍的なロックの両方の良さが感じられるものとなり、それが結果、これまでR&Bやエレクトロ一辺倒だったセレブやアイドルの楽曲傾向そのものを変える新しい基軸を産み出しました。「Adore You」「Golden」、そして全米ナンバーワン・ヒットの「Watermelon Sugar」。そしてブルージーな長いギターソロの入る「She」。その後の歴史は多くの人の知っての通りです。


28(-).Stranger In The Alps/Phoebe Bridgers (2017)

28位はフィービー・ブリッジャーズ。2017年11月リリースのデビュー・アルバム「Stranger In The Alps」。これもハリーのアルバム同様、今だからこそわかる評価であり、あの当時に今のような状況になるとは思わない時期の登場でしたね。リリースは2017年秋。あの、ロックがシーンからからっきし枯れきった年に、開墾地から新しい種子を巻くようにこのアルバムがデッド・オーシャンズというレーベルからそっと世に放たれたのでした。僕が意識したのは、その年の年間ベストが発表される頃で「あっ、これ見逃してたな」という頃。そんな彼女がボーイジーニアスを、たまたま先に注目していたジュリアン・ベイカーとルーシー・デイカスの二人と組んだのが、そのまんま1年後。そのときに各個人のソングライティングの高さと美しすぎる三声ハーモニーに身悶えました。その後、フィービーは2020年にインディ・フォークロックを多彩に高めた、あの年の僕の年間ベスト1位の「Punisher」で一気に時の人となり、今年ボーイジーニアス再結集で各媒体の年間ベスト1とグラミー賞6部門ノミネートと止まるところを知りません。その全てのはじまりがこのアルバム。なにがそこまでウケたのか。それはフィービーが「サッドガール・インディの女王」と水面下で讃えられていたことにありました。ここでの「Motion Sickness」や「Scott Street」は、日常にちょっとした違和感や孤独を感じている女の子たちにとってのアンセムに。いわば「裏テイラー」なポジションに位置している感じでしょうかね。


27(32).Beyoncé/Beyoncé (2013)

27位はビヨンセ。これは、ビヨンセがこれまでの従来型のR&Bの殻を破って、プログレッシブに進んだ先進的な、人気だけでなく批評でも文句無しにリスペクトされるアーティストへの道を築いた記念すべきアルバムですね。彼女の場合はこの次の「Lemonade」や昨年の「Renaissance 」での絶賛されぶりが記憶に新しいですけど、そもそもの契機となったのがこのアルバムだとして、コアファンの間ではかねてから人気の高いアルバムでもあります。彼女の場合、どうしてもホイットニー、ジャネット、マライアと続いてきたR&Bディーヴァの女王の継承者みたいなポジションの意識が強すぎたのか、やがてR&Bでの人気の人が相対的にいなくなり、後輩のリアーナでさえガンガンにエレクトロで攻めるようになってた中、それまでの90s~00sまでのR&Bのスタイルにこだわり続けてたらダサくなりかけてたタイミングでもあったんですけど、前作での中途半端な変化の後、ここでやっと本腰入れてかなりアッパーなエレクトロ・ファンクなアルバムになりました。そしてこのアルバムはブルー・アイヴィー出産後というタイミングも良かったですね。美についての彼女の意識だとか、人間の尊厳についてといった内省的なテーマ性に向かい合い、元来強いフェミニストだった彼女自身のアイデンティティを強化することにもつながりました。「Pretty Hurts」とか「Flawless」みたいな大事なアンセムも生まれてますしね。

26(-).The Idler Wheel…/Fiona Apple (2012)

26位はフィオナ・アップル。もう、このひとは3年寝太郎みたいな状態になっていて、一体いつ動くのかがわかりません。10年代もリリースしたアルバムはこれ1枚だけ。僕の場合、通常、そういう活動ペースのアーティストは年代ベストにあんまり入れたくないし、前回の時は、フィオナのことは90sの時から大好きでしたけど、そういう理由ではずしてました。しかし、2020年に8年ぶりに動いた「Fetch The Bolt Cutter」が貫録の内容でその年の僕の年間ベストで2位。さらに現状の音楽シーンでのあからさまなフィオナの影響の大きさを見るに考えを変えざるを得ませんでした。ラナ・デル・レイ、Lorde、そしてビリー・アイリッシュ。ダークな、長い髪の才女の系譜、そのまんまですよね。ラナが「Born To Die」でデビューしたときすごくフィオナを感じたんですけど、Lordeとビリーが音を簡略化してベース音とリズムに特化した感じを聴いた際にさらにそれを感じて。そしてそれはフィオナ自身もそうで。このアルバム当時、90sのときみたいなジョン・ブライオンの華麗さと歪みの両方を表現したパンキッシュなオーケストレーションがなくなり、ピアノとフィオナ自身の脈打つ鼓動だけを収めたミニマムな音楽性に「ちょっと実験的すぎるのでは」と戸惑ったものでした。ただ、それは「Fetch~」を聞く頃には慣れたものでもあり、改めて彼女の先行く時代感覚の鋭さに舌を巻いたものでした。このゴッドマザーが犬の世話と裁判ウォッチングをお休みして次に音楽に本腰入れるのはいつの日か


25(24).Body Talk/Robyn (2010)

25位はRobyn。2010年のエレクトロ・ポップの名作「Body Talk」。前回とほぼ同じ順位です。僕の場合、2010sを席巻したEDMのブームに関してはほぼ言うことがありません。前回の時は多少気にしましたが、さらに4年経ってあの頃を再評価する気運もないのでその分、気は楽なんですけど(笑)、EDMで一つだけ選ぶのなら、それはもちろんRobynです。スウェーデンから、ひときわ鋭角的な電子音を基にしたシンセポップがとにかくカッコいいんですけど、その一方でRobyn本人の繊細で壊れそうなくらいに優しくキュートでありながら、力強く伸ばせてかなりねちっこくソウルフルでもある、あの彼女にしか出せない、一度聴いたら忘れないあの唯一無二のハイトーン・ヴォイス。これがあのトラックの上に乗ってケミストリーを起こすことに醍醐味があるのです。しかも、その歌のほとんどが、女の子やゲイ、さらには彼女自身を奮い立たせるためのエンパワメント・ソングであることも。その実例が2012年のドラマ「ガールズ」で、主人公のハナが惚れた男がゲイだったことで落ち込んで、それをこの曲を部屋で聴きながら踊って振り払うという、非常に有名なシーンがあるんですけど、まさにそういう立ち位置の音楽。僕はこれを見て、娘の名前、ハナを演じたレナ・ダナムにちなんで「Lena」とつけたくらい影響力が強いです(笑)。Robynは2018年にリリースした「Honey」もランクインこそさせてませんが、これも見事な傑作でした。ただ、それが8年ぶりのアルバムで、それ以降も5年のブランク。活動をもう少し活発化させてくれると嬉しいんですけどねえ。

24(25).A Moon Shape Pool/Radiohead (2016)

24位はレディオヘッド。現時点での彼らの一番新しいアルバムですね。「A Moon Shaped Pool」。今回、ランクだけ上がってRobynを抜いてますが、全く他意はありません。ランク付けてる時、前回のランキングは一切見ないで決めたので、ただ単にこの2枚は僕の中で10年代を思う時の強度が変わらなかった、ということなのだと思います。このアルバム、年代を規定するほどのアルバムでないとは思うんですけど、僕個人的には彼らのアルバムでもかなり好きな方なんですよね。それはこのアルバムがトム・ヨークにとって極めて個人的なアルバムだから。「Daydreaming」を筆頭として、このアルバムのレコーディング中に癌と闘病していた妻レイチェルに捧げた曲がかなりの部分占めてて。で、リリースされて少しして亡くなったのかな。英語圏ではリリースされたくらいから、今作とレイチェルの関係はかなり言及されてて歌詞読んですごく納得したんですけど、この一件で「トムって、自身のロマンスに関して、ここまで赤裸々に取り乱せるヤツだったのか」と思ってですね、これで彼のことがこれまでに増して俄然好きになったんですよね。ラストなんて、以前ライブだけで出てた「True Love Waits」のセルフカバー。新婚で一番ラヴラヴだった時期に書いて他のメンバーにアルバムの収録止められてた曲なんですけど、今でも聴くと目から大粒の涙が流れてきますもの。そしてこれ以降、トムはレディオヘッドの活動には戻っていません。7年経つんですけどね。自分の内面出し切った作品の後だけに戻りにくいのかな、などと個人的な想像もするんですけど、どうなんでしょう。

23(18).Norman Fucking Rockwell/Lana Del Rey (2019)

23位はラナ・デル・レイ。2019年の各音楽媒体の年間ベストアルバムの1位を独占し、僕もご多分にもれず1位にした「Norman Fucking Rockwell」。前回はリスト作成した時期があの年の年間ベスト作る時期と近かったのでその時の興奮があったとは思うんですけど、さすがに傑作アルバムなので、その興奮が冷めてもそこまで下がるものではありません。多くの人が不思議に思ってると思うんですけど、なんで彼女はこのアルバムから絶賛されたのか。「ここから急に良くなったのか?」と思って人も少なくないと思うし、実際そういう人、いるんです。これ、一つ前のアルバムに音楽じゃなくて、彼女の気持ちというかアーティストの見せ方としての変化があるんですよ。そのアルバムで彼女、これまで見られがちだった「悪魔」がかったイメージから一歩引いて、「古き良きアメリカへの憧憬」を「極右的懐古主義」とか誤解して解釈されないためにドナルド・トランプを強く否定したりしてるんですよ。そこ、僕も彼女に対して長年引っかかっていたところでもあったので、あそこからはっきりファンを公言できるようになってですね。さらに、「死の匂い」が漂う人ではあったんですけど、その時のアルバム名が「Lust For Life」、まさに「生への意欲」でしたし。ここからラナ、次のフェーズに入ってるんですよね。で、そこがわかっていたから、このNFR、わかりやすかったんですよね。音楽面では「Born To Die」の時のようなダークなバロック・ポップを後退させ、ここから組んだジャック・アントノフと、ピアノとアコースティック・ギターを基調とした音数削った路線で、よりSSW的な告白調の作風になってるんですよね。歌い方もこれまでみたいに無理に低い声、出さなくなってきた(彼女、地声はむしろ高め)し、芝居がかってた感じのところが取れたというか。そしてラストの曲では「希望なんて、私みたいな女には危険なもの・・・でも持つけど」と、これまで消極的だったフェミニズムに対しての考えが変わったと思われる宣言がなされたり。絶賛されたここを機にインディ系のリスナーが急増したことは確かで僕も歓迎です。でも繰り返しになりますが、「ここから良くなったわけではなく、その前から音楽的には素晴らしかったので、そこも評価しましょうね!」とは釘を刺して言っておきたいです。

22(-).The Most Beautiful Moment In Life Part.1/BTS (2015)

22位はBTS。一般的に最高傑作とする説が多く、僕自身も後追いではありましたが、聴いて衝撃を受けた「The Most Beautiful Moment In Life Part 1」、これを彼らのベスト作とし、今回のこのランキングで初登場させていただきます。今回、初めて登場する作品の中ではかなり上位評価なんですけど、それはそうでしょう。だって、バンタンにとっての最高作ということは、「Kポップそのものの運命を変えた1作」というのと同義なわけですから。アーティスト単体の話ではなく、韓国という国の音楽界、そしてそれを受け入れる世界の音楽ファンを巻き込んだ画期的な変化のわけですからね。僕がこれを聞いたのは2020年の1月ですね。ちょうど彼らが世界5大市場で初登場1位の快挙を成し遂げた「Map Of The Soul 7」が出る前に、「ここでキャリアの最初からしっかり対策立てて新作に臨もう」とした時ですね。この時に、デビューから聴いてきて何が一番驚いたかって、この当時から、いやむしろこの当時にかなりヒップホップ色が濃厚で、曲によってはラップだけで終わることも珍しくなかったことです。「えっ、アイドルなのに、歌なしでラップだけで終わるの?」とびっくりしてですね。むしろ初期はラップ・ラインのレベルの方が高くて、この作品なんて特にそうでしたけど、ヴォーカルがラッパーのフィーチャンリングみたいな感じでさえあったんですよね。「ああ、これは確かにボーイバンドの従来の発想、大きく変えてるわ」と思って驚いたわけです。なんとなくのラップとかじゃないわけで。むしろヴォーカルの4人のコンビネーションがこの作品あたりからようやくラップラインに負けなくなって、高度なヴォーカル・リレー聞かせるようになったんだな、というのが確認できた時に、これが最高傑作と言われる所以が理解できましたね。そこにジミンのバレエとホソクのヒップホップで鍛えたダンス混ざるわけでしょ。「ああ、これは歌とラップとダンスの総合アートへの昇華なんだな」とわかって、バンタンをリスペクトするようになりました。その後の彼らの世界制覇への軌跡はミラクルの連続でしたが、本格国際展開の前にこれだけの実力があったことを思うと必然だったのかなとは思います。

21(28).Channel Orange/Frank Ocean (2012)

そして21位はフランク・オーシャン。2012年発表の、出るやいなや大旋風を巻き起こしたメジャー・デビュー・アルバム「Channel Orange」です。彼に関しては、その前年にカニエ・ウエストとジェイZがコラボで出したアルバム「Watch The Thtone」に「No Church In The Wind」という、かなり素敵な曲にフィーチャリングで参加したときにすごく存在が気になって名前覚えてたんですけど、やはり気になってた人多かったのか、デビューしていきなりかなり話題になりましたね。このアルバムに関して最初に感じたのは「こんないい曲作る新人、R&Bでいつ以来なんだ?」という、作曲面での才能ですね。とりわけ「Sweet Life」「Super Rich Kids」での、全盛期のスティーヴィー・ワンダーに肉薄するような名曲ね。しかもただ似てるだけでなく、決めのフレーズでの盛り上げのポイントがすごく細かく書けてて。しかもそういうタイプだけでなく、「Thinking  About You」や「Lost」「Forrest Gump」では全く違うアーティストみたいな形で別のタイプの優れた曲を書き分けることも出来て。これらの曲に関して、タイプとしてはいわゆる「ネオソウル」という、90sからある、現在の観点から70sソウルの再解釈を行うタイプのスタイルに近いといえば近いんですけど、それよりはむしろ、ブライアン・ウイルソンに通じるようは箱庭ポップ的な密室、個室での加工感覚があるというか。R&Bでは聴いたことのない、不思議な感覚でしたね。これは確かに新しかった。あの当時、「ベッドルーム・ポップ」なんて言われ方が流行ってましたけど、その時代の申し子的では確かにあったんですけど、そのジャンルで聞く他のアーティストとも明らかになにかが違ってましたね。ただ、その新鮮さの要素が逆にいえばウィークポイントにも彼の場合はなり得て。表に出てこないことでも知られた彼が「サタディ・ナイト・ライブ」、さらにはグラミー賞でパフォーマンスをやったんですね。そのとき、アルバムで聞くのとあまりにかけはなれた線の細い歌唱を聴いたとき「えっ・・」となってしまって。そう思ったのは僕だけでなく、世間的にも酷評。そこから彼のパフォーマンスを見る機会は減ってしまいました。これの続きはトップ10まで待ってくださいね。

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