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映画「この茫漠たる荒野で」感想 西部劇の古典への敬意と、現代社会への警告

どうも。

今日は映画レヴューいきましょう。これです!

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 トム・ハンクス主演最新作、「News Of The World」、邦題は「この茫漠とした荒野に」というタイトルがついています。こちらのレヴューをしようかと思います。この映画、現在も依然公開本数の少ないアメリカの興行において数少ないヒット作として健闘中。そしてアメリカ以外の国ではネットフリックスで公開。僕もそれで見ました。果たしてどんな映画なのでしょうか。

さっそくあらすじから見てみましょう。

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舞台は1870年。主人公ジェファーソン・カイル・キッド(トム・ハンクス)は元退役軍人で、今は人にニュースを読み聴かせる職業をしていました。

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その道中でキッドは、何者かに襲われた、先住民の衣装に身を包んだ謎の少女に出会います。その子は、先住民にさらわれて育てられた子で、英語が喋れず、カイオワ語という先住民の言葉のみを話します。

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言葉が通じず困惑するキッドでしたが、とりあえず検問所まで連れて行って、彼女を施設に預けるべく、二人は道中をともにします。しかし、検問所は留守で人が長期間戻らないことも判明します。

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2人は長期間一緒に過ごさねばならなくなりますが、会話や、いろいろなことを調べていくうえで、この子がドイツ移民の子供であったこと、先住民名がシカーダであることなどがわかりました。今はヨハナというドイツ語名で新たな人生をキッドは生きさせようとします。

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ふたりの行先は苦難の連続でした。あるところではヨハナが人身売買を申し出されたり、またあるところでは無法者に支配された地帯を通り過ぎねばならない危険もありましたが・・・。

・・・と、ここまでにしておきましょう。

この映画ですが

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監督はポール・グリーングラス。一般的には「ボーン・シリーズ」で有名な監督ですけど、人間ドラマが本来すごく得意な人でして、トム・ハンクスとは2013年、オスカーの作品賞とハンクスの主演男優賞ノミネートを導いた「キャプテン・フィリップス」以来の共演になります。

これなんですけど、僕はこれ、結構ツボなんですよね。

これ、まずひとつは

人情ウェスタンの王道ぶり

これがいいですね。

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まず思い出すのが「捜索者」(1956)という、ジョン・ウェイン、ジョン・フォード監督の最高傑作ウェスタンですね。これは、人種差別主義の保安官が、先住民にさらわれ行方不明になっていた少女を、すっかり先住民になってしまっていた彼女に最初は拒絶反応を示しながらも次第に心を通わせ、最後は全力で守る物語。実際のジョン・ウェインがこんな人なら良かったのにと思えるほど、グッとくる映画です。少女を演じたのはのちに「ウェスト・サイド・ストーリー」のヒロインで有名になるナタリー・ウッドです。

それから

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1969年と2010年に公開された「トゥルー・グリット」。これは老保安官と少女の道中もので、オリジナルの方はジョン・ウェインの唯一のオスカー主演男優賞。19世紀になんでこんなショートカットの女の子がいるのかは聞かないであげてください(笑)。2010年はコーエン兄弟によるリメイクでジェフ・ブリッジズとヘイリー・スタインフェルドによるコンビでした。

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この王道人情ウェスタンを、トム・ハンクスと、この女の子、ヘレナ・ゼンゲルが見事に演じ切ります。なんか見てて本物の親子みたいでグッとくるんですよね、この光景が。

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このヘレナですけど、2008年の6月生まれっていうから、まだ小学6年生ですよ!その若さでいきなりゴールデン・グローブ助演女優賞ノミネートです。この演技から判断するにオスカーの助演女優もありだと思います。

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あと、ハンクス、ここ最近、いいですね。彼の前作の「The Beautiful Day In The neighborhood」でも、ミスター・ロジャースっていう、伝説の子供番組司会者を巧みに演じていたんですけど、「心やさしき人格者」という彼の得意な役柄を、大味にさせない演出手腕にたけた監督のもとでいかしてますね。ライバルの多いカテゴリーではありますが、主演男優賞ノミネートがあっても本来はおかしくない出来だったと思います。

あと、これ、僕がもうひとつ好きな設定は

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ハンクスの役柄が「真実」を伝えていくことによって、野蛮だったり貧しい育ち方をした人たちが目覚めていくと言う設定ですね。ここを見ていて僕は、「ああ、フェイクニュースとか陰謀論にころっとやられている人たちにこそピンと来てほしいよ!」と思いましたね。

 真実を得ることで人間としての判断力や知性を得ていく生き方というのがいかに大切なことか。そして、それがいかに時を経ても普遍的に大切なものであるか。そのことをこの映画はしっかり伝えてくれています。

 オスカー争いですが、今のところクリティック・チョイス・アワードのみが作品賞にノミネートなので、ちょっと苦しいところですね。ヘレナちゃんの助演女優にかける感じだと思います。でも、そういうことに関係なく、これ、見て損はしない一本ですよ。

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