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品質新撰組 /ep 2; Here I Go Again

注記; 身近で似た経験をした方がいたとしても、全てがフィクションであり、架空の物語です。


22:00、部屋の窓を叩く音、
”おい!出かけるぞ”
中学からの友、トミーの声だ。自分の会社勤めがあるのに、毎晩来てくれる。その意図は解る。前職の事は何も聞いてこないが、それが見せかけの言葉より救いになる時もある。
”はいよ” と返事しながら、外で待っているカプチーノ(スズキ車)の助手席に乗り込むと、Here I Go Againを歌うDavid Coverdaleの渋い声が流れていた。
深夜のドライブも、もう3か月か、、、、先ずは、アルバイトから、と思う気持ちが芽生え出していた。友とは、ありがたいものだ。

更に数週間後、トミーによる毎晩の窓叩きは終わった。求人雑誌を読んで行った靴屋チェーン店のアルバイト面接で、正社員で働くことになったのだ。
靴屋の事務所で昼食を食べながら、TVニュースを見ていると、中国産鰻の産地偽装が報道されていた。なるほど、箱詰めに近づくなと言われたのは、そう言う事だったのか。関わる前に転職していて良かった。と内心で苦笑い。
チェーン店靴屋勤務ながらも、時には小学校などへの売り込みもあって前職に続き、丁稚と行商(営業回り)的な日々を過ごす。

店番をしていると
”おい!アルバイトか?” 声の主を見ると、ヤンだった。高校の同級生である。
”正規だよ。”
”久しぶりだな、地元に戻っていたのだな。俺は、Uターンで自宅通勤だけど、みんな戻って来んし、今度、飯でも行こうぜ。”
”いいね~喜んでご同道するよ。そう言えば、ヤンは高校の時に洋楽を聞いていたよね。何か面白いのがあったら教えてよ。”
“お!歳も洋楽を聞くようになったんだな。そりゃ丁度良い。CD、レコード屋巡りもしようぜ。”

・・・・中華風の定食屋。風である。店名に楼がつき中華風だけど、定食屋の方がシックリする。カウンターと座敷はあるが、回転テーブル処か、テーブル席も無い。
”この店に来るようになって1年ぐらいかな”
”つまりは、歳の靴屋も1年経過か、このまま靴屋の店員か?家族を持った時とか、どうよ?”
”どうも副店長らしい、店長の日報で俺の名前の後に書いてあった”
”そう言や、外周りの営業販売までするって言っていたな。でも、話は無く、日報を見たら副店長って、またもや、前の会社と同じで妙な処だったりして!いつから副店長だったの?”
”知らんよ、たまたま解っただけだし、その後も店長には聞いてない”
”まぁでもアルバイトへの仕事の説明が上手いのは、この前の店番の時に覗いて解ったよ。でも、ずっと、このままか?歳の雰囲気。。。。靴屋への本気を感じないな”と唐揚げを口に運ぶ
”・・・・・”そう見えるのか、と内心で思いながらも、言葉は出なかった。
反応しない歳の表情を見て、ほんの少し口元を動かしたヤンが、間を埋めるように
“ふむ。。。。まぁ取りあえず帰るか”とお勘定をして店を出た。

“あれ?”
歳が愛車ローバーミニのキーを回すも、エンジンは、うんともすんとも、何も反応せず。
”マジかよ?歳、トミーでも呼ぶか?”

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