消失した映画館の思い出①

1,イントロダクション

 自分は、映画が好きで、映画館も行けば、図書館の視聴覚ブースでも見るし、DVDやサブスクリプションで鑑賞することもある。いずれにせよ、様々な媒体で映画を楽しむことが出来るようになった。
 映画に熱を注ぎ込むようになったのは、恐らく大学時代だと思う。2年の終わりに、ジャン=リュック・ゴダールの作品を見て、それから就活が終わった後、余裕をかましすぎて、当時通っていた大学の近くの劇場や東京の映画館に頻繫に行くようになった。それ以前は、多少映画は見てはいたが、そこまで見ていなかったと思う。一応、小さい頃に『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』、『ターミネーター』や『スパイダーマン』も見ていたが、今はそういう系統は余り見ていない。
 休職していた時期や感染症蔓延下で、仕事もしていなかったし、当時ハマっていたお笑いに対して愛想を尽かしたと同時に、映画に対する情熱が再燃し、それから再び劇場やDVDなどで見るようになった。
 それでも、よく行っていた渋谷のアップリンクを含め映画館はなくなってしまうし、最近岩波ホールが閉館するというニュースを見て、ビックリした。ここで、消失した映画館の話をしていきたい。

2,消失した映画館

 今は閉館した、或いは、別の姿に変貌を遂げた映画館を紹介したい。記憶が曖昧になっているところもあるが、覚えている限りで話したい。一度しか行っていないところもあるが、見た作品についてもぼんやりとしか浮かばない、なんとなくという感じだが、しばし付き合って頂きたいです。

2-1,新橋文化劇場

新橋文化劇場(隣は新橋ロマン劇場)

 こちらを読んでいる方は、かつて新橋の高架下に映画館があったことをご存知だろうか。確か名前が「新橋文化劇場」という名前だった。隣に「新橋ロマン劇場」という劇場もあり、日活ロマンポルノなど、お色気映画も上映していたそうだ。

 そこで、2013年の10月頃に、チャールズ・チャップリンの『黄金狂時代』を見た。面白かったが、高架下にあったこともあり、電車が通るたび、線路が響くようになっていて、それが気になった。これはこれで良い思い出だけれど。
 チャップリンの『黄金狂時代』は、見てみたら、靴を食べるシーンや靴をテーブルの上に乗せてダンスするシーンなどが印象深い。吹雪や強風で山小屋が傾く場面なんて「ドリフやバカ殿じゃねえか!」と心の中で思ったのだが、もちろんこれが先に来ていたのであり、ドリフターズやバカ殿のコントは、これのオマージュなのだなあ、としみじみ思った。
 この劇場の記事を確認してみたら、35mmフイルムで上映してたことを知り、驚いた。
 1950年代から様々な名作映画を上映し続けていたが、2014年に惜しまれつつ閉館した。跡地は、何になったか知らない。トイレも端っこ辺りにあって、不思議な感じだったなあ、と思う。

2-2,シネマライズ

シネマライズ渋谷

 渋谷は、かつて割と映画館が多かった。今でもいくつか残っているが、ミニシアターブームの全盛期よりかは少なくなっている。
 宇田川町のスペイン坂あたりにかつて「シネマライズ」という映画館もあった。1986年から2016年初頭まで存在していた。調べてみたら、30年ほど続いてたのが凄いと思った。
 この映画館のアーカイブが残っているのが嬉しい。レオス・カラックスの作品も上映されていたのか、と思った。このサイトに、荒木経惟氏と蜷川実花氏の写真も残っている。

 シネマライズでは、ミシェル・ゴンドリーの『ムード・インディゴ うたかたの日々』と『武器人間』の予告編を観たことを覚えている。恐らく2013年の10月か11月あたりだっただろうか。ボリス・ヴィアンの『日々の泡(うたかたの日々)』を原作としたファンタジー映画だったが、良かった。見ていないけれど、確か『アメリ』で主演を務めたオドレィ・トトゥがヒロインを務めていた。ミシェル・ゴンドリーは、どちらかというと、ダフト・パンク『アラウンド・ザ・ワールド』とか、ケミカル・ブラザーズの『レット・フォーエヴァー・ビー』や『スター・ギター』のMVの監督という印象が強い。その不思議な映像効果やCGを使った面白い映像に酔いしれていた。
 1度しか行かなかったけれど、めちゃくちゃ広い、半円形の映画館だなあ、と思った。お客さんは、10人くらいだったなあ、なんて思った。

 その跡地は、WWW Xとなった。WWW Xは、SHE IS SUMMERと菊地成孔氏がいるFINAL SPANK HAPPYのライブで行った記憶がある。前者は2018年、後者は2019年だから、割と最近だ。しかし、色んな文化があった場所が消えてしまうのは、少し寂しくなるなあ、と思う。SHE IS SUMMERも、活動休止してしまうし……。始まりがあれば終わりもあるのだな、と気づいた。
 SPANK HAPPYのように、終わりからの復活・再生はあるのかもしれないけれど、その流れは滅多にないであろう。

2-3,アップリンク渋谷

アップリンク渋谷

 同じ宇田川町ではあれど、渋谷の奥にあった「アップリンク渋谷」も紹介したい。去年なくなったので、一時代を築いた文化も、感染症の前だったり、斜陽産業になったりすると、こんなにもフラジャイルなのかと思ってしまった。

 アップリンク渋谷は、5,6回くらい行ったかな、と思う。アンドレイ・タルコフスキー特集で、『ノスタルジア』を鑑賞したり、ヴィム・ヴェンダース監督の『パリ、テキサス』で号泣したり、『哭声/コクソン』で衝撃を受けたりした。ラブ・ディアス監督の『立ち去った女』も見たが、「凄い長い」という印象が貼りついた。
 最後に行ったのは、2020年11月5日に、城定秀夫監督の『アルプススタンドのはしの方』のトークショー付きの回だった。城定監督と小野莉奈さんが出ていた。『アルプススタンド~』は、話題になっていて見たけれど、演劇っぽくて面白かったし、新感覚を味わったけれど、何か残酷だったなあ、という感じだった。

 2021年5月に閉館した。恐らく感染症の蔓延下で、機材や設備の投資が出来なくなったらしいのだが、代表の浅井隆氏が起こしたパワハラ問題とも重なったので、それも原因ではないか、と思う。建物のテナント料とかも高そうだな、とも感じてしまった。ゆったりした感じで良かったけれど、もっと質の良い椅子にしてほしかった、とつくづく思った。
 アップリンクは現在、吉祥寺と京都に劇場があり、他にも配信という形で映画を発信している。

3,終わりに

 本来ならまとめて記事を書こうと思ったけれど、よくよく考えてみたら、長くなり過ぎたので、二回に分けた。岩波ホールも最近閉館が決まったけれど、映画館ってこんなにも閉館していたんだな、と切なくなってしまう。
 自分は、映画にとことんハマったりハマらなかったり、その落差が激しい節があるので、時間と金銭的、あるいは、精神的な余裕があれば、もっと行けばよかった、と若干の後悔がある。一つのことを追っかけるのは、やはり難しいなあ、と改めて気づいた。

 後半は、後ほど書きます。
 書けるかどうか、不安なところはありますが……。
 それでは。

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