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大好きな10YCの服を今まで“あえて”買わなかった理由

心から欲しいと思った服を、“あえて”買わなかったという経験がある人が居たら、ぜひ友だちになりたい。

「この人たちが作った服を着たい」という感情をはじめて抱いたアパレルブランドが10YCだった。10年着続けたいと思える服づくりをするために、『10 Years Clothing』と名付けられたブランドだ。
自称“エシカルミニマリスト”の自分の中では、Patagoniaと並ぶような存在。大袈裟ではない。

彼らはnoteやPodcastでもブランドとしての想いやプロダクトのことを伝えていて、それらに触れるたびに 素直に応援したいという気持ちになる。

(4月15日に発表された『10YCが描く世界』の内容も最高だった。)



自分が10YCの存在を知ったキッカケは、NEUTの記事。パンチのあるタイトルに導かれるように読んだ。

(本文中より引用)
10YCの仲間と一緒に住んでたことがあるんですけど、彼がある日、1万円近い値段出して買ったというTシャツを手にして、「これ一回洗っただけでヨレちゃったんだけど、お前の業界どういう仕事してんの?」って言ってきたんです。

その日を境に、自分が苦労して納品した服が、翌週にはセール品としてたたき売られている状況。それでも売れずに処分されていく大量の在庫。しかし次々と新しい服を納品しなければならない日常。セール時の値引を見込んで計算されている定価。それらのすべてに違和感を感じ始めた。


この記事を読んだ当時の自分は、アパレル業界の裏側を伝えるドキュメンタリー映画『ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償』を夫婦で観たり、ジャーナリスト横田増生さんが命懸けで書いた『ユニクロ潜入一年』を偶然見つけて読んだりしていた影響で、年間10億点(供給量の約25%)が廃棄されると言われるアパレル業界の大量生産・大量消費の構造と、そこから生み出された製品そのものに大きな疑問を抱いていた。
(これは今も続いている。『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』を読んでその疑問は確信に変わったし、以降ユニクロや他のファストファッションブランドで自分の服を買うことはなくなった。)

だからこそ、10YCを立ち上げた下田さんたちの想いに強く共感したのだ。


(「服なんて何でもいい」という人ほど『ザ・トゥルー・コスト』を観てほしい。映画内でも紹介されている象徴的な事件 ラナプラザ崩落事故から4月24日でちょうど8年が経った。)

この映画や書籍でアパレル業界の裏側の理解を少し深めた自分。もともと備わっていたミニマル思考と、妻の影響でどんどんインプットが多くなっていたエシカル消費志向とも絡み合い、「すでに購入しているモノは長く使い続けたい」、「これから新しく購入するモノは(値段が高くても)一生モノを買いたい」、「できるだけフェアトレードで作られ 流通したモノを買いたい」、「環境負荷の低いモノを選びたい」と考えるようになっていた。

そんな状態で出会った10YCに惹かれていくのは必然だった。

(自分のミニマル思考の一端はこちらをお読みください。保有している靴は4足、トップスの数はアウター含めて両手で足りるレベルです。)


10YCのことを知った当時、妻と2人で住んでいたのは東京都墨田区横川。まさにそこは、10YC本社が目と鼻の先にあると言ってもいい場所だった。

ほどなくして、10YC本社の「OPENDAY」に足を運んだ。
オンライン通販を主な販売経路とする彼らだが、実際に商品を手に取り、創業メンバーの方々から直接購入することができる「OPENDAY」や「POP UP 」を定期的に開催していた。
その日の自分は、パーカーとTシャツを購入する気満々だった。

妻と店に入った。どの服も極めてシンプルで、自分が保有している数少ない服たちとの相性も抜群に思えた。

しかし「買うのはもう少し待った方がいいのではないか」と直感的に思ってしまった。そう思った自分に、自分自身が驚いていた。
その理由は、自身がその日に着用していたH&Mのグレーのシンプルなパーカーだ。この服こそ、あと1年着用すれば購入してからちょうど10年となる“My 10 Years Clothing”だった。
10YCのパーカーをこの場で購入することも当然できた。とても大切に着たと思う。でもそれによって、今現在自分が大切に着用しているH&Mのパーカーの扱いが雑になってしまったり、処分してしまったりすれば、それこそ10YCの下田さんが過去に感じた「ゴミを作っている感覚」と同じような感情が自分に生まれてしまうのではないかと思った。
9年も着たんだからいいじゃないかと思う人も多いだろうが、ボロボロになる気配すら見せないH&Mのお気に入りパーカーを着倒すことが、何よりも“かっこいいこと”のように感じたのだ。

というわけで、パーカーだけでなくTシャツも買わずに10YC本社を後にした。下田さんたちには売上に貢献できず申し訳ないと思いつつも、自分なりの“かっこいい”とは こういうことかも知れないなぁとその時はじめて思えたのだった。
「今持っているものを大事に最後まで使い切ることが何よりもエシカルでかっこいい」と考えるようになったのは、この日の経験があったからかもしれない。

(写真は撮れなかったけど、自分が行った日もこんな感じだった。)



その日から約3年が経った。(←経ちすぎ)
社会人1年目にH&Mの日本1号店で購入したパーカーは、“一軍”の座を維持したまま、パジャマ兼作業着にポジションチェンジする形で“勇退”した。購入してから12年間、毎年夏以外の時期にヘビロテで着続けているのに、どこにもダメージらしいダメージはない。たとえファストファッションブランドの服でも、持ち主の扱い方次第で服の寿命は伸び続けるということを、服は無言で訴えている。

(12年間“使える一着”であり続けたH&Mのグレーパーカー。改めてお疲れさまでした。これからも 週末の庭いじりの時や、ちょっと肌寒い日の寝巻として 文字通り「ボロボロになるまで」活躍してくれることだろう。)



そして、ついに先日(自分が勝手に)3年も待った10YCのグレーのパーカー、正確には『Pullover Hoodie』を注文し、数日後に手元に届いた。12年間勤務した会社を卒業する自分への“退職祝い”として購入した。


ダンボールにブランドロゴ等の印刷や装飾が一切ない。潔い。

ダンボールの中身も、無駄なものは1つも同梱されておらず、ブランドとして「商品で勝負する」という気迫が伝わってくる。

最高の一着が届いた。肌触りも素晴らしい。
(服って自宅で撮るのむずかしいですね笑)

実は、届いた直後に試着してサイズ感と質感を確かめたっきり、まだちゃんと着ていない。なんかもったいない気がして。貧乏性だ。笑

だが、まったく焦る必要はない。このパーカーは10年どころか、12年、15年と着続けていく一着なのだから。

(こんな重い客、なかなか居ないだろうなぁ  笑)

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