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【疲労困憊】自分と戦い続けたラオス発30時間夜行バスの旅

ある日、東京から大阪まで高速バスに乗った時に、ふとこう感じる自分がいる🚌

「あれ、8時間で着くんだ?結構早いな…👀

8時間って決して短い方では無い。いやむしろ、新幹線なら2~4時間で着くので結構遅い。ラオスに行くと、この時間の感覚をバグらせる強烈な30時間地獄のバス旅が体験できるので、ご紹介します。

乗車前:何の疑いも無く申し込んだバス移動

みんな大好き微笑みの国・タイの隣にあるラオス。フランス文化の影響を受け、めっちゃ田舎で田んぼ街なのに結構おいしいパン・オ・ショコラが屋台で売ってたりするギャップがあって好きな場所だった。

タイからボートで入国した私は、自然溢れるルアンパバーンという小さな町でしばらく過ごし、次にベトナムに移動するための交通手段を探していた。

ゲストハウスのオーナーに聞くと「安く行くにはバスが楽で良いよ、寝てるだけで着くよ」と教えてくれた。当然、貧乏旅行なんでバス一択。土地勘の無い場所で乗り換えとかするより、寝てるだけで良いなんて最高じゃん。

何の心配もせずにバスのチケットを買って、夕方に集合場所でバスの看板を見て度肝を抜かれた。

【Luang Prabang to Hanoi  26-30 hours

さ、ささ30うぅ?
(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)

ベトナム・ハノイまで何と30時間。1日中寝て過ごしてもお釣りが来る。未体験の乗車時間だけど、まぁ…結構体力あるし何とかなるだろう、だって寝てればいいんだから。と自分に言い聞かせ覚悟を決めてバスに向かう。

まだ出発まで15分前、パッと見40人程乗れる観光バスサイズで乗客の荷物を積んでいる最中だった。自分のバックパックを預けるのはかなり不安だったが、車内は荷物を載せるスペースが無いから全員預かると言われしぶしぶ渡す。

45ℓのバックパックを渡した裸足のドライバーが、軽やかな足取りで…バスの屋根の上へ。

…(;゚д゚)!!

日本の高速バスでよくある、大型荷物スペースに入れるのかなと勝手に想像していた。既に染みついた習慣や記憶は役に立たない。私の生活必需品が全て詰まった荷物は、バスの上(屋外)に心もとないロープでキュッと結びつけられただけだ。

「ちょっとおおお!そこだと落ちるから!!これで結んで!!!」

日本から持ってきた盗難防止用の鉄ワイヤーを渡して補強してもらおうと思ったが、返ってきた返事はこれ。

「We don't need that, ノープロブレム👍」

この押し問答が1分くらい続いたが、出発時間になってしまいそのまま乗車することに。大丈夫かよ…

この人達チケット買ってる…!?予想外の乗客

バスの中はこう。ベトナムに向かう働き盛りの男たちがもう座って待っていた。お分かりいただけただろうか…寝台バスなので、最初から座席は仰向けの姿勢で乗客がセットされる。

一シートにつき人間一人分しか空間が無い。バックパックを置くスペースと騒ぎ出した数分前の自分を猛省した。

このバスは1列二段上下で20人×3列=60人程が1台で移動できる、何ともコスパの良いバスだった。さらにご注目は床に寝ている男性たち。ここも立派な座席のようで、途中の停車地点で隙間なく床に人間が敷き詰められていく。

そして裸足率も鬼高い。バスという密室で、数十人が一度に履きつぶれた靴と共に洗ってない足を解放するのはある種のテロだと認定されてもいい気がする…速攻で持っていたマスクを5重にした。

私が将来ラオスでバス会社を立ち上げる時は、全員足を洗ってから乗車するルールを徹底することをここに誓います。

ラオス出発🚌寝てりゃ着くっしょ!と思った自分がバカだった

とりあえず、バスは無事私たちを乗せてルアンパバーンを出発。ベトナムのハノイに向かって800km程南下していく。東京~福岡まで直線で900kmくらいなので、かなりの長旅だということは伝わるはず。

日本の高速バスのように、何とか自分の態勢と折り合いをつけて寝られるスポットを探す手間は無いが、ラオスの道はキレイに舗装されてるとは言えず…ガッタンガッタンとバスが揺れまくるので全く寝る気にならなかった。

それでも目を瞑って眠気を待った。だって日中動いて体を疲れさせて、すぐ眠れるようにしたんだから。30時間のうち半分くらいは寝て過ごさないと乗り切れない。目を閉じていれば眠くなるはず…

寝れん!(;゚д゚)

この体の浮遊感は何?と目を開けてハッキリ分かった。ペーパードライバーでも分かる、バスがエグいほどカッ飛ばしている。後で聞いた話だと、ベトナムに着いてもラオスにまたすぐ引き返して次の乗客を乗せるため、一刻も早く目的地に向かうとのこと。

車道に明かりは無く、周りは真っ暗。フロントライトのみで照らされた田舎の山道を猛スピードで突き進む大型バス。対向車が通れる程、道は広くないのが救い。

屋根に付いてる自分の荷物吹っ飛んでるかも…?それより、このスピードでどこかに突っ込んだら死ぬ…と心配になる体感速度だった。

しかし、ベトナムに向かうにはこの方法しかない、耐えてみせる。死んだら来世ではラオスに来るのは辞めよう…。

出発から8時間後

乗り心地は別として、何だかんだ体は疲れていたので8時間くらいは寝ていた。それでもまだ残り22時間、到着は程遠い。

揺れる車内で数時間体もシェイクされ続けたからか、猛烈に吐き気がして完全に目が覚めた。乗り物酔いかもしれないし、出発前に食べた何かが当たったのかもしれないし、車内に充満する香ばしいニオイに私の鼻が限界突破してしまったのかもしれない。

とりあえずめっちゃ気持ち悪い。

寝返りを打つスペースは無いが、上を向く態勢をキープしてひたすら耐える。まだ朝の2時くらいで、車内は消灯を落としていてよく見えない。他の乗客もみんな寝ていた。

ガタン!とまた大きくバスが揺れて、その衝動で持っていた水のペットボトルを下に落としてしまった。私の席は二段ベッドの上段、降りないと届かない。

ベトナムに着くまでの命の水、手元に持っておきたい…とおそるおそる段差を降りて足を伸ばした。

フニャッ 「ウッ…」

あっ…( д)

柔らかいものが足先に触れた…目を凝らしてよく見ると人間だ。いつの間にか床に所狭し並んで寝るおじさんの大海原が広がっていて、自分のベッドの下で寝ているおじさんのお腹を踏んづけてしまっていた。

すぐ謝って、おじさんのお腹に落ちたペットボトルを受け取って、自分のシートへ戻る。うかつに下へも降りられないことがよく分かった。

出発から12時間後

窓の外と車内が明るくなってきた。朝の5時くらいだったと思う。相変わらず吐き気が続き、wifiも無いのでネットも繋げず、車内が揺れるので本なんか読む気にならなかった。

ひたすら妄想・瞑想を繰り返す。吐くとしたら空のペットボトルの中かな…とか、ベトナムに着いてからのめくるめく毎日、日本に帰国してからどうすべきか、それよりこのバスの道中に死なないだろうか…など、自分と向き合う時間があまりにも多くて、これはこれで疲れていた。

ラオス・ベトナムの国境に到着。ここで乗客は全員降りて出・入国手続きと荷物検査を行う。山間にあるので、濃霧…よくこんな天気の中、バス飛ばせたな。

それでも、外の空気がようやく吸えた!持ってたジップロックに詰めて、車内の吸入用に持ち帰りたいくらいだ。

それにしても朝早すぎて、入国管理センターが開いていないらしい。これでは出国も入国も出来ないので、数時間ここに待機となった。ここは山の上、何か食べ物を売っているようなお店は無く、あっても開いていない。

あるのは綺麗とは言えない公衆トイレ、以上。

文句は無い。12時間耐えた車内のニオイから一時解放され、手足を伸ばせるだけでも満足だった。

少しずつキリが晴れてきて、周りの景色が見えるようになってきた。若干元気を取り戻しで周囲を散策、遠目にバスの屋根に括りつけてある自分の荷物を確認。ホッ、良かった…まだ飛ばされてなかった。

入国拒否…ベトナム国境で思わぬVISAトラブル

管理センターが空き、順調に手続きと荷物検査をしていく乗客たち。この日、バスに乗っている外国人は私だけだった。

事前にベトナム大使館でVISAを取ってきてたし、日本のパスポートだし、余裕でしょ!と他の人と同じようにすぐ終わるものの思っていたら…

「このVISAでは入国できません」

( д)!!

何と、日本で取ったVISAの失効日は…昨日の日付だった。山道を突っ走るバスの中ですでに、ベトナム入国する資格もない、日本から来たただの外国人になっていた。

いや、でもどうしよう…ルアンパバーンにまた12時間かけて戻ってVISAを取って引き返す?それとも今から飛行機のチケットを取った方がいいかも…?待ってたら何か別な方法があるのかな?

それより、バスの乗客全員の入国VISAと手荷物検査が終わらないと、バス自体出発出来ない…!

「本部に確認します。本日解決できなければ、ここに1泊してまた明日対応手続きを取る可能性もあります」

( д) ゜ ゜

ちょちょちょ、えええぇーーっ!

1泊って…ここ駐車場とトイレしかないけど。あと24時間この山の中で待機…?無理…告げられた瞬間、色んな考えが頭を巡った。

失効日を確認していなかった自分がもちろん悪い、でも日本人はベトナムでアライバルVISAが取れるから言い訳くらいさせてくれるかも…!12時間かけて引き返すのはマジで無理、それならここで1泊するか…とりあえず出来る主張は全部しよう!

「英語が話せる責任者と繋げてください!!」

責任者出せなんて日本でも言ったことないが、この状況を何とかしなければ。

すでにバスの乗客の入国手続きが始まって30分くらい経っている。私が最後の一人だ。出発時間が遅いので、何だ何だと乗客のおじさん達が集まってきてしまった。
対応したスタッフは面倒くさそうだったが、どうしても1晩ここで野宿するわけにはいかない。

管理センターのエライ人に電話をかけてもらい、現状を報告して反応を待った。山の中で電波が悪く、相手の声も途切れ途切れだった。

【45分後】

事前に大使館でVISAをきちんと発行していたこともあって、無事アライバルVISAとして手続きし、入国許可が下りた。

+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+

良かったあああ…ギャラリーのおじさん達とハイタッチして入国を喜んだ。お待たせしてごめんなさい!ベトナムに向けて出発だ!!

出発から20時間後

国境でのトラブルをきっかけに、急激に車内でおじさんの友達が増えた。

私も友好の証として日本から持ってきたハッピーターンを配り、日本食品の布教活動をしたり、ネットを持っていない私にラオス語のドラマを見せてくれる人もいて、数時間は潰すことができた。

そしてようやく昼食とトイレ休憩へ。ベトナムの道はラオスより舗装されていて、揺れも少なく、吐き気は収まってきて食欲も復活していた。

水とハッピーターンだけで20時間過ごしたので、お腹に溜まる食事が胃に染みた。

ここから10時間、もうトイレ休憩が無い。日本だと8時間のバス移動で2回は行くのに、30時間で2回はドライバーもキツそうだ。(複数人で仮眠を取りつつ交代して運転)

もう車内でもやることがいよいよ無くなった…相変らず仰向けの姿勢だし、自分の人生の反省もしたし、持ってきたものはみんな食べたし、トイレが無いから水分も出来るだけ摂らないようにしていた。

散々妄想もしたし、眠くもないし、ネットも無いし、バッテリー充電も終わったし、窓も開かないから新鮮な空気も入ってこない。同じ姿勢で体も痛いし、1ヶ所から動けないって体力的にも結構つらい…

とりあえず心のスイッチをOFFにして省エネモードへ。景色を眺めたり、窓の汚れを数えたりして気を紛らわすこと10時間…スティーブ・ジョブスなら、この時間で新しいビジネスアイデアを5つくらい考え出せるかも、と思った。

ヒマな時間って最初の10時間くらいまでなら、何とか楽しく過ごせそうだけど、今度から30時間用のヒマ対策が必要だ。いや、もう二度と乗りたくないけど。

出発から30時間後、ベトナム・ハノイに到着

ようやく寝たきりの姿勢から、二足歩行が出来るスペースに降り立つ。

もう車内のニオイにも慣れてしまい、最初に付けていたマスクは全部外していた。バイク天国ベトナムの新鮮な空気…とまではいかないが、吸える酸素は確実に多い。

もう夜の19時を回っていたし、お腹も空いていたので、車内で仲良くなったおじさん達とその辺の屋台で無事に30時間耐えた自分たちを祝った。

食後はそれぞれ帰る場所があるので解散。私も予約していた宿に向かった。もう疲れ果てて体力も気力も残っていない。寝てるだけで楽だって言ったの誰だよ…しかし、貴重な体験が出来るので冒険したい人はお試しを。

おススメは…しません。笑

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