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巻き込み力の正体

社内の関係者に協力をお願いしても「手伝える状況ではない」と断られる。お客様への提案が「言いたいことはわかるんだけど、なんか違う」と却下される。一度は進んだプロジェクトが突然鶴の一声で中止になる。

このような悲しい事態を避けるために必要とされるのが「巻き込み力」。
今回は、複数のステークホルダー間で納得解を作る必要のある共創プロジェクトなどの経験から得られた僕の知見を元に、巻き込み力とは何なのかを具体化します。

巻き込み力に関連したスキル、調整力をテーマにしたnoteもあります。こちらも合わせてご覧ください。


伝えるべき3つの要素と必要なスキル

巻き込み力を「他者に喜んで協力してもらう力」と定義したうえで考えると、必要なスキルや伝えるべきことなどは以下の図の通りにまとめられます。

巻き込み力の図解

内容を一つずつ見ていきましょう。

伝えるべきこと1:定量的な効果

「いくら儲かるか」です。これはピンと来る人も多いと思うのでさらっと説明します。
どれだけ他者が善人でも、ビジネスである以上双方に得がなければ協力は得られません。そのため、相手がいくら儲けられるのかを示すのがわかりやすいです。お金以外にも、相手の持つノルマやKPIなどへの貢献も有効です。

必要なスキル:論理的思考
定量的な効果を理解してもらうためには、いくら儲かるのか、なぜ儲かると言えるのかをロジカルに説明する必要があります。
論理的思考は色々な場面で語られることが多いので詳細は割愛しますが、新規事業のピッチ資料などはその典型です。背景情報や課題、ソリューション、ビジネスモデルなどを一切の破綻なく説明するイメージです。


伝えるべきこと2:感情的な報酬

意外と見落とされがちなのが感情的な報酬です。要するに楽しいかどうかです。
他者は論理だけでは動いてくれません。「言ってることはわかるけど、なんかピンと来ない」と言われてしまう場合、感情的な働きかけが足りていない可能性が高いです。手を貸したらワクワクする体験が待っている、楽しい思い出ができるという期待を持たせましょう。

必要なスキル:感情を動かすストーリーテリング
他者の感情を動かすには、「なぜやるのか(WHY)」を社会的な大義とともに説明する必要があります。
「この仕事を通して社会をより良くできる」「こんな困っている人たちを助けられる」といった物語を、相手が具体的にイメージできる形で伝えましょう。
他にも、相手が応援したくなるような自分の個人的なエピソードを話したり、逆に相手の個人的な関心に刺さるストーリーラインを組み立てたりする方法もあります。


伝えるべきこと3:安全性

「必要なところに話を通しているのか」です。これは特に組織内や組織間でのやり取りでかなり重要です。相手のステークホルダーに話を通しておかないと途中でちゃぶ台返しされたり、最悪の場合「何を勝手なことをやってるんだ」と相手の立場が危うくなるリスクもあります。
そのため、協力を仰ぐ前にケアできるリスクは事前にケアする必要があります。

必要なスキル:相手の立場から関係者を考える想像力
ステークホルダーは相手の上司やプロジェクトラインにいる人物だけとは限りません。社内の組織力学や先輩後輩といった個人的関係性に至るまで、組織内には見えない関係性がたくさんあります。
一見すると何も関係なさそうな人が場合によっては重要なキーパーソンになる可能性もあるので、組織図や相手の経歴なども参考に関係性を想像し、ステークホルダーマップや人物相関図を作成します。もちろん相手へのヒアリングを通して確度を高めることも忘れずにしましょう。

※あまりにもガチガチに事前合意を取ってから相手に話を持っていくと、「もう私の意見は関係ないのでは」と強制力を感じられる場合もあります。なので、事前調整は非公式の場で軽く当てて感触を得るに留まるなど工夫が必要です。

一番大事なことは、相手の価値観を正確に理解すること

巻き込み力の図解(再掲)

上記3つの重要度は人によって違いますし、気にする点も様々です。しっかりと相手に刺さる内容にするには、相手の価値観を正確に理解することが前提です。
(価値観という言葉もデザイン上頻出しますが、ここでは「判断や決断の軸になる思考の方向性」と定義します)

相手の価値観を知るには、相手がこれまでの人生で何を経験し、どう感じ、何が心に残ったのかを知る必要があります。
そこまで相手に話してもらうには、相手に信頼してもらい、こちらも自分の全てをさらけ出さないといけません。場合によっては相手の心の傷に触れることもある以上、その痛みも引き受ける覚悟も必要です。価値観を知るには時間がかかりますし、丁寧なコミュニケーションが必要です。

一度プロジェクトがはじまるとそのようなコミュニケーションを取る時間もなくなるし、別の形で関係性が構築されると結びなおすのも大変です。なので、なるべくプロジェクトの最初にコミュニケーションできるよう設計しておくと安心です。

巻き込み力と同じくらい、巻き込まれ力も大事

実のところ、僕は巻き込むより巻き込まれることの方が多いです。これも、一緒に働く同僚や友人に対し、ことあるたびに自分の価値観を伝えているからだと思います。
そうすれば相手も「この人はこの話に興味を持ちそうだ」と当たりを付けられ、声をかけやすくなり、結果面白いことに巻き込まれやすくなります。

プロジェクトを推進するための巻き込み力も大事ですが、日々の生活の中で楽しい時間を増やす意味では、巻き込まれ力も見過せないなと思います。

価値観を聞かせてもらうには技術が必要かもしれないですが、価値観を伝えるのはちょっとのオープンマインドがあれば十分です。
これからも互いに巻き込んだり巻き込まれたりしながら面白い時間を過ごせて行けたらと思っているので、どうぞよろしくお願いします。

最後までお読みいただきありがとうございました!



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