認知症介護日記58 「これぞお盆休みの過ごし方」

8月16日朝9時すぎ、我が家にお坊さんがお盆参りに来られた。
事前に郵便で16日に我が家が属す地区の家を巡ることを知らされ、15日に電話で午前9時に我が家にくると連絡があり、10時前に無事お盆参りが終わった。

お盆参りといえば、昨年はひどいものだった。
昨年のお盆参りも今年と一緒で父が休みの日に行われたのだが、僕たち3人はお盆参りを危うくドタキャンするところだった。

その当時のことを詳しく書くと、僕たち3人は、昨夏の高校野球山口県代表だった高川学園の試合をリビングのテレビで見ていた。するとチャイムがなり、玄関ドアを開けるとそこにはお坊さんがいたのだ。

お坊さんの話を聞くと、事前に我が家に電話をしたとのこと。その電話を対応したのは祖母だった。当時の祖母は要介護1の認定が降りてすぐであり、デイサービスは週3日(月、水、金)だけの利用だった。ドタバタの原因である祖母は「電話なんか知らん!」の一点ばりで、祖母への信頼が一気に落ちた出来事だったことを覚えている。

話は2023年8月16日の出来事に戻る。お盆参りを終えた後、父が祖母をデイサービスに連れて行った。そしていつものように17時ぐらいに帰宅したあと、今度は祖父や先祖が眠るお墓へ参ることにしたのだが、そこで僕と父にとってかなりショックな出来事があった。

僕たち一族の墓は、我が家と同じ学区内にある。
狭く入り組んだ路地を車で抜け、いつも墓参りの時に利用するスペースに車を駐車した後、祖母が我が先に車を降りる。ここまではいつもの祖母だった。

しかし祖母が車を降りて数秒後、僕の脳内に嫌な直感が過ぎった
いつもなら車を降りて一目散に一族が眠る墓に向かうはずなのに、今回は周りを見渡すだけで一向に向かう気配がない。そしてなぜか僕と父がまだ居座っている車の方角を見ている。

あれ、ついに墓の場所も忘れた…?

この時はまだ疑惑であり、確信が持てなかった。
もしかしたら、一向に車から出ない僕と父の様子を見ているだけかもしれない。
しかし、ここで僕が先に墓に歩いて向かうと意味がないので、僕はある質問をして様子をみることにした。

「ばあちゃん、俺と父さんは荷物があるから先にお墓に行ってて」

祖母のプライドを傷つけずに、祖母の現状を理解するにはこの言葉しかなかった。
僕のお願いに対し、祖母は何も言わずにいた。祖母が黙っている間に僕は携帯のカメラを作動させ、一連の行動を動画として残すことにした。

祖母の様子を撮影し始め1分程度経過した後、祖母は奇跡的に我が一族の墓方面に向かい歩き始めた。祖母が愛する夫が眠る墓の場所を忘れるわけないよな、と安心したのは束の間、我が家の墓の1ブロック手前にある見知らぬ一族の墓の敷地に両手を突き、すごい至近距離で墓を直視し始めたのだ。

この行為で流石に僕の我慢の限界は超えた。
それまで数分間祖母の行動を観察してきたが、このままだと見知らぬ一族の墓の敷地内に侵入する恐れがあったのだ。

「ばあちゃん、墓の場所がわからなくなっちゃった?」

ついに僕はこの言葉を祖母に向けて放った。

「わからん」

と、言いつつ、祖母は墓とは全く関係ない方向を指で示していた。
この言葉で祖母が墓の場所を忘れたことがわかったので、父と僕が先にお墓に向かった。

その後、3人で墓掃除を終わらせた後、1番の目的であるお祈りをした。
3人が同じタイミングで拝み始めたが、僕だけ2人が拝み終わった後も3分程度拝み続けた。いつものように、心の中で祈ると祖父に届かないかもしれないので、声を出してこうお願いをした。

「じいちゃん、ばあちゃんは10月を目処に施設に入居する予定だよ。正直ばあちゃんのお世話は辛いけど、もう少しの辛抱だから頑張るよ。天国から見守っててね。」



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