ユリシーズを読む|008.つよめの秘薬|2021.03.17.

こんにちは。
会社員が隙間時間に『ユリシーズ』という小説を読む、というどこかで聞いたことがあるような記事を書いています。

*『ユリシーズ』とは、ジェイムス・ジョイスという作家による20世紀を代表するとんでもない小説です。
*でもまだ、『ユリシーズ』の前に読んでおくべきというギリシア神話『オデュッセイア』とやらに挑んでいるところです…。

きょうの『オデュッセイア』

父、オデュッセウスを探す旅に出ているテレマコスくん。
 今、いるのはスパルテ(スパルタ)です。スパルタ教育とかいうのは、このスパルタの厳格な教育制度がもとになっています。スパルタは古代ギリシア世界では最強の軍をもつポリス(都市国家)としてしられ、のちにはペロポソス戦争でアテナイを破ります。

スパルタで宴に参加しているテレマコスくん。
第四歌に衝撃的な記述があった。
 場面は宴の席。悲しい話を聞いたあとに、食事を再開したところ。

この時、ゼウスの姫ヘレネは、新たに良いことを思いつき、一同の飲む薬に秘薬を混ぜたが、これは悲しみも怒りも消し、あらゆる苦悩を忘れさせる秘薬であった。
ホメロス『オデュッセイア』上、松平千秋訳、岩波文庫、p.95

え、え、え。引用でバンされたりしないですよね?
さらに続きには、

この薬を混酒器に投じ、酒に混ぜて飲む者は、たとえ父母の死に遭おうとも、また面前で兄弟またはわが息子が刃物で殺されて、目の当たりそれを見ようとも、その日のうちは頬を涙で濡らすことが絶えてない。
ホメロス『オデュッセイア』上、松平千秋訳、岩波文庫、p.95

たとえの場面が強烈過ぎます。たしかにそんな場面であれば秘薬すら求めるのかもしれませんが...。

こういう現代人の「共感」とかから遥か遠くのところにある表現を読むことも大事ですよね。ホモソーシャルな価値観に陥らないように。

戦争から帰らない父を探すため、故郷を出て、船に乗り馬に乗り旅してきたテレマコス君。ついに会えた父の旧友から、トロイの木馬での父との共闘やその活躍を聞かされます。それでテレマコス君は、
「そんなことを聞いたら、ますます惜しい気持ちになります。でもそろそろ寝たいのですが。」
みたいなことを口走ります。それでいいのか。これは若さなのか。お前の話はつまらん!なのか。それとも秘薬がダウナー系だったのか。ダウナーなのが眠くなるものなのかどうかは知りませんが。気になる方は、詳しい人に聞いてください。いえ、詳しい人がいたら、場合によってはそっと距離をとりましょう。

そうですね、とりあえず寝て、明日、また考えましょうよ。

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