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人間にとっての意味・価値は、AI・ロボマインドにとって接地できるか?

382.【心の進化論】人間だけ、なぜ「意味」を考えて行動するようになったのか? #ロボマインド・プロジェクト - YouTube

 『旧約・創世記』はおそらくメソポタミア地域で発生した幾つかの神話を、前5世紀頃、バビロン捕囚の状態にあったユダヤ民族の中で、民族アイデンティティを保守しようと民族史編集した際、歴史的原因譚として冒頭に位置付けたものです。世界中、民族史の編集では、同じ形式になっているのを、確認できます。記紀神話もそっくりですし、なんと現代でさえ、北朝鮮の建国神話の創作編集がありました。  
 さて『創世記』ですが、その中に意味や価値についての伝承が保存されています。創世記の冒頭は、神が世界をカオスから創造した、存在付与した、と物語られます。その前提を下に、神の似姿としての人間の創造物語があり、この人間の似姿性を説明する話が置かれます。神による被造物の前に人間を連れてくると、「名付け」を行うという話です。この名付けとは、被造物に対する「価値創造・意味付与」であり、古代人にとっても世界、その中の諸存在は、人間の主観意識に観てとられた価値と意味を有する物と、理解されていたわけです。人間中心主義が近代の科学技術発展と並行したと言われますが、古代にそれは観てとられていました。実際『創世記』は続いて「バベルの塔」の話も出てきますが、それは知識(scientia=science科学)技術の力で、神の知の領域に上ろうと傲慢になった人間を戒める物語です。

 このように人間のある種、本性欲求に知的欲求があり、それは原則的に人間の価値感・意味付与を満足させるために作用するダイナミズム(動因・動機)と言えます。  
 それが証拠に、現代、科学が発展してくると、分子生物学のJ.モノ―も、情報工学のC.シャノンも情報に意味や価値を見るのはタブーとしました。そこから神学者モルトマンも、物理学者ヴァインバーグの「宇宙をよりよく知ることができたと思えれば思えるほど、宇宙は無意味に思えてくる」という言葉を下に、「人間の終末論は、意味のない宇宙に取り囲まれた意味のある生に限定した希望を、私たちに与えるにすぎないのか」と問いかけています。つまり時空全体を見渡すと、意味や価値は人間にとって人間の価値創造・意味付与がなされる領域に限定されるものである、ということです。  人間にとっての限定領域を越える領域では、人間が与える意味も価値も、関係の無いことになります。AI、AGIにとって、人間的主観意識の獲得、保持は、人間の管理下に置かれ人間の示す意味や価値による制御が展開する場合に限られると思います。人間自身が、ポスト・ヒューマンへの移行を遂げれば、現行の意味・価値は当然、変更、或いは失われるはずです。  

 田方先生のもこみちゃんは、そうした状態をシミュレーションできる重要なプロジェクトであると思います。人間の未来を決定するための予測材料を、きっと提供してくれると、期待しています!!!

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