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31歳 別れの春とひとりカラオケ


初めてのお別れを迎えた1歳の春と、別れ方にも随分と慣れた31歳の滑稽な春の記録。


3月29日に退職した。

週が明けて、新年度の昨日から次の職場に就いているので異動くらいの感覚だった。

とはいえ出勤初日は何度経験しても帰宅してやっと、どっと気疲れしていることに気づく。

最終出勤日には来た時より綺麗なデスクになるようすっからかんに、ホコリも拭き上げて片付けて来た。
週明けに1人でも、「あの人もうおらんねや」って思い出してくれたら嬉しいなとか、寂しがりやの淡すぎる期待を込めて。

当然のように私のいた痕跡は全く無くなって、その瞬間は自分の方がシュンと寂しくなった。
誰か思い出してくれただろうか…(新年度なんてそれどころじゃない)。


退職日ばかりは息子のお迎えは夫にお願いし、少しの仕事と大量のシュレッダー、ご挨拶を済ませて、いつも通りの夕方早い時間に退勤する。

送別会まで1時間30分の時間が出来た。


だいぶ明るくなった17時30分のオフィスビル街を歩くと、今の自分からは随分遠くなった"アフターファイブを堪能する都会のOL"に一瞬だけ転身したような気分になって、開放感(というか半分はもうどうにでもなるようにしかならないと諦めのような気持ち)から、軽くも重くも感じる変な足取りのままにカラオケを探して入った。

私なりに思いついた、ちょっと自由でちょっと華やかな1時間の使い方がこれ。

4年以上ぶりのカラオケ。

たった4年の間で、さっき3度目の退職をしてきた。

とにかく、今はもう何にも考えずに全身を使って大きな声で歌いたくて、音を外すとか声が裏返るとか自分の音域なんてなんでもいいからと立ったまんまでデンモクを入れ、第一声腹の底から声を出して歌った。

元々低い自分の声は年々通らなくなって、人前で何かを発言することすら自信が無くなっていった。
産後初めて勤めることになったこの職場では、特に。

そんな声が、するすると喉を通って出てくる。
綺麗でもなんでもないシャウトに近い歌声で、ただただ体も心も心地よくて気持ちも震えてきて、なんならちょっと泣いた。(情緒が不安定すぎる)

その後も間髪入れずに歌い続けたらあっという間に1時間なんか過ぎてしまって、最後は荷物を全部下げた状態で出発ギリギリまでドアの前で歌いきり、そのまま送別会シーズンのサラリーマンが行き交う都会の街を全力で走って飲み会に向かった。

お店には1分前に着いた。

31歳がバタバタと何やってるんだ。

いつもパートで遅く来て、やることだけやって、時間ぴったりにいそいそとお迎えの為に帰って、誰と雑談する間もなくたった数ヶ月黙々と過ごした職場の最初で最後の飲み会で、何話すのがいいかな…なんて数日前から考えていたのに、

息を切らしてひゃー!!すみません!!なんて転がり込んで、冷えたビールをぐいっと飲んだらそこからはただただ笑って喋って飲んで、まだ話し足りないと二次会にもホイホイ行って何話そうかなんて考える間もなくあっという間に終電の時間が近づき、また!お元気で!と、あっさりとサヨナラをした。

皆仕事中では知らない顔を持っていた。
黙々と真面目に仕事をこなしていた私も多分そうだろう。
皆のこともっと知りたかったな。

「本当に辞めるの?また子育てが落ち着けばいつでも帰って来て、次の会社でつまづいたらすぐ来てくれてもいいし(笑)」
と、笑う上司。

「子育てっていつ落ち着くんでしょうねぇ」
小さなお子さんを持つ私と同い年の方が、デスクに置いてくれた餞別のお菓子にそんなひとことが添えられていた。

皆分かってる、子育ては勝手に落ち着かないし、
組織という働く環境がたった1人の人間に勝手にフィットしない。

周りから見ても私はふらりと入って来て、何か違うなとふらりと抜けていっただけの人。

身勝手で自由そうに見えたかな。
「この仕事がもっとしたかったけど、ちゃんとやるなら今じゃない」って、社交辞令みたいに聞こえたかな。
十数年後、本当に面接に来たら笑われるかな。


どうしょうもない深刻人間なので、勝手な人だなーって呆れてもいいから笑ってほしい。

一歳息子のピュアな世界のお別れの比べて、なんとも滑稽な31歳の別れの日の日記。


沢山お世話になりました。

箒星の歌詞こんな噛み締めたん初めてや…3回歌った



新しい職場に就いて、出勤初日から育児と仕事との向き合い方について夫と意見がすれ違ったりしたけれど…今も昨日のもやもやを断ち切れないでいる。
不慣れと不安からのストレスは成長痛だと思いたい。

たまにまた、大きな声で歌おうと思う。



あとは余談で、デンモクの履歴見ると「この世は皆同世代なのか?」と毎回思うのなんだろう、J-POP全盛期?
(ミスチルもスキマスイッチも欠かせない私も然りで)


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