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21世紀のカリキュラム

我々の世代は、昭和の時代に小学校、中学校、高校を卒業し、大学に行き、平成に代わってすぐに社会人となりました。

筆者も、もう結構長い間、社会人として暮らしを営み、会社員などとして色んな仕事をして、それなりにやってきています。
そのために、本を読んだり、講演を聞いたり、知識の習得やアップデートにも取り組んできました。


仕事を一人前にちゃんと、できれば人並よりも上手く、遂行していくためには、いろんな知識やスキル、また「知識やスキル」では表現しにくい様々な能力、「人間力」みたいなものも必要ですよね。

ところで、「学校」で教わったことってどうでしょうか?仕事の役にたってますか?また、十分だったでしょうか?

もちろん、基本的な読み書き・漢字、四則演算、英語など、役に立っているものも多いですね。
一方で、今にして振り返ってみると、いわゆる「学校」でもっとこういうことを身につけておきたかったな~、と思うことがたくさんあります。


本稿では、これまでの仕事・ビジネスでの経験を踏まえて、またAIやデジタル、VUCAの時代であることも考えて、次世代がフルに活躍していくための「21世紀のカリキュラム」はこういうのがいいのではないか、こういう学校がいいのではないか、などと妄想してみたいと思います。

こんな科目があったらいいな

科目については、小学校の国語・算数・理科・社会に始まり(体育や図画工作もありますが)、中学校で算数が数学に代わり英語が加わりますが(英語は小学校でもやるようですが)、高校になっても、大学受験でも、基本的には同じような枠組みで高校まで過ごします。
大学になると、学部や学科によって、もうちょっと変わってきますね。

これら国数理社英に「代わる」というと、ちょっとニュアンスが違いますが、昭和から変わらない科目体系に目を向けて、こんなことを身につけておきたい、という目線で新しい「科目」を考えてみます。
(科目を跨って一部重複する内容も出てきます)

コミュニケーション科
国語や英語のように、「語学」を中心におくのでなく、生活するため、ビジネスするためのコミュニケーションを学びます。

・情報の集め方
ネット利用、論文参照、フェイク注意、反対意見の取り込みなど
・情報整理・アウトプット
図解の仕方、グラフィック表現(グラフィックレコーディングなど)、文章の書き方(「一言で表現」等)、プレゼンテーションなど
・コミュニケーションスキル
対話、アクティブ・リスニング、伝わる・伝える発声方法、本の読み方、自己紹介、ネットワーキングなど

なお、英語については、「子音」の聞き取りと発音に重点を置いたトレーニングを、もっと提供するようにしたいと思います。

マインドトレーニング科
自分のメンタル、他者のメンタルの取り扱いは、快適な人生を送るにあたって大切な要素ですね。「人間力」にもつながります。

・メンタルヘルス
・マインドフルネス、メディテーション
・自己内省(自分を知る)
・自己肯定感の持ち方
・アンガーマネジメント
・レジリエンス
・ポジティブシンキング
・他者との関わり(レスペクト・共感)

ビジネスシンキング科
仕事・ビジネスにおける思考力、構想力、頭の使い方など、もっと早くから知っておきたかった、と思います。

・アイディア・創造力
・イシュードリブン
・デザイン思考
・クリティカルシンキング
・意思決定
・行動経済学
・課題提示型の考え方
・ストーリー・物語構築
・失敗学
・正解のない問いを考える

ビジネススキル科
ビジネスシンキング科より、もうちょっと「スキル」に寄った内容を想定します。コミュニケーション科とは一部重なる部分が出てきます。

・コラボレーション・チームワーク・チーム運営
・リーダーシップ
・コーチング
・1on1ミーティング
・オープンイノベーションの進め方
・プレゼンテーション(大勢向け、少人数向け)
・ファシリテーション(会議運営など)
・ディスカッション・ディベート
・ネゴシエーション
・グラフィックレコーディング
・統計学・データ分析(相関性と因果関係の違い、とか)

ベターライフ科
仕事・ビジネスに使う知識・スキルのみでなく、社会生活における知識・スキルでも、もうちょっと早く学校で習っておきたかった、という事柄もたくさんありますね。
中でも、健康・身体性はとても重要ですね。自分の身体が、自分のためにどれだけ懸命に働いているか、知っておきたいものです。

・お金・金融・財産管理
・行動経済学
・バックワードでの歴史学(地政学など現在の世の中から逆にたどる)
・遊び心の大切さ
・人生の構想(仕事選び、学校選び、科目選び、住む場所選び など)
・健康の維持・向上、五感と身体性を大事にする、身体コンシャス
・掃除・料理・DIY・歯磨き(既に一部は授業にありますが)

体験を広げてみよう科
子供・学生にとっては、学校の中、あるいは地域の同い年くらいの友人が唯一の世界であって、それ以外の世界に触れる機会は一般に限定的だと思われます。もう少し、広い世界、多様性に触れるような機会を設けていきたいものです。

・海外や外国人コミュニティ
・高齢者施設
・保育園・幼稚園
・他都道府県の学校
・社会人・大人
・社会活動・ボランティア
・職業体験(小売店舗、農林水産業、伝統工芸など)

ICT科
もちろん、既に検討されている部分もありますが、デジタル社会で生き抜く知識・スキルの重要性は高まっていて、今後も更に重要になることからすれば、この分野の強化は欠かせないでしょう。

・プログラミング
・AI
・コンピュータの仕組み
・ネットワークの仕組み(インターネットなど)
・デジタルリテラシー(セキュリティ、情報管理、暗号化など)


カリキュラムのつくり方

ここまで、学校で学んでおきたいこと、また、それらをまとめた新しい「科目」について書いてきましたが、では、これらの科目も含めて、カリキュラムとして組み立てるときに、どのように考えたらいいでしょうか。

ゴールからの逆算で考える
新しい「科目」として列挙した「学びたい内容」ですが、実は、小学校でもできること学ぶべきこと、小学生ではちょっと早すぎて大学生くらいで学ぶべきこと、など、あまり区別せずに並べて書いてきました。
では、小学校・中学校・高校・大学(または高専、専門学校など)のそれぞれにおいて、年齢に応じて、各「科目」の中にどんな内容を盛り込めば良いのでしょうか。

一つのやり方は、
・仕事・ビジネスで必要な、あるいは大人として習得しておきたいレベル・内容・事柄を想定して、
・それをゴールにして、ある「科目」の大学で学ぶレベルを設定し、
・そこからバックワード・逆算的に、その「科目」で、高校で習得するレベル・内容、中学で習得するレベル・内容、小学校で習得するレベル・内容を考案する、
というものです。
内容によっては、「高校から」など途中から登場してくるものもあるでしょう。

カテゴリーで考える
「科目」を束ねる「カテゴリー」、網羅したい「領域」を考えてみることで、逆に、こういう科目もあったらいいのでは?こういう科目が足りないのでは?などと構想することができるのではないでしょうか。

例えば、
①アート、サイエンス、ヒューマン
②論理・理性、直感・創造、技術・スキル、人間
③思考、作業、感覚

学び方で考える
どのように教えるか、学ぶか、も重要な要素です。

大きくは、レクチャー形式か、ディスカッション形式か、ということでしょうか。

加えて、体験・作業、ケーススタディ、ワークショップ(オープンスペーステクノロジー、レゴなど)、ピッチ大会など、様々なやり方がありますね。
科目内容や年齢などに応じて、適切な学び方を考案できますね。

変化・進化への対応
デジタルなど技術の進化、社会環境やビジネス環境の変化に応じて、今後も学びたい・学ぶべき内容は時々刻々と変化していきます。

変化の激しい時代なので、これまでは何十年か同じようなカリキュラムでよかったとしても、今後は数年単位、あるいは毎年、変更を意識すべきでしょう。

このためには、毎年見直すなど、変化・深化を取り入れていく、カリキュラム内容を変えていく、自律的な取り組みが必要となります。改訂に時間のかかる教科書制度など、スピード感に合わない制度も変えていくことも検討課題となるでしょう。

また、そもそも「一生勉強」という観点からは、如何にして「teachable」で居続けるのか、みたいなことも基本として押さえておきたいところです

学校の在り方について

ここまで、習得したいこと・学びたいことに始まり、そのための科目やカリキュラムのつくり方について考案・妄想を進めてきましたが、このような「学び」を実現するためのインフラたる「学校」はどのようにあるべきなのでしょうか。

学校の個性
小学校・中学校・高校において、既存のレガシー的な科目に加えて、列挙してきた新しい「習得したいこと」を、各学校で、全て完璧に提供することは難しいかもしれません。

そこで、「この部活に強い学校」があるのと同様に、どの科目に力を入れるか、どの領域に優秀な教師陣がいるか、学校の個性を出していくことが一つの選択肢になります。
大学や修士でも、この領域に強い、とか、あるいはデザイン系や美術系、ビジネス系など色々分かれていますね。

制度・科目選択 ~オンライン・対面、データ活用~
デジタル技術やネットワークを活用し、オンラインでの学習、動画や学習あアプリ・MOOC、VR・ARをフルに活かして授業を組み立てていくようになるでしょう。

オンラインの良いところ、対面の良いところをそれぞれ意識して、狙いを明確にして集合・対面での授業と、オンライン学習を組み合わせることが重要です。

また、提携する大学の間では、どの大学でも(オンラインでも、リアルなキャンパスでも)、そこで取得した単位を相互にカウントできるようにして、科目単位・ゼミ単位で好きな教授・講師を選べるようにできるようになるでしょう。
学校の個性を踏まえて、自分が取りたい授業を選んでいく、という観点からは、学校を跨ぐ受講を、高校くらいまで広げてもいいかもしれません。

また、飛び級も普通のこととして考えると、一定の前提条件を満たせば、高校生でも大学のクラスを受講できる、ということもあり得ます。

学習した内容や到達度合いなどをデータとして記録し、活用することも重要です。何を学んできたのか、理解度・スキルはどうか、といった記録のほか、個人個人に応じた科目・クラスを提案することができます。
また、学校を跨ぐ受講、オンライン・対面、小学校・中学校も含めて転校する場合など、スムーズに進むでしょう。

地域・ロケーション
上記の制度とも関係しますが、「場所」は一つの大事な要素です。オンラインでのリモート学習が普及することと矛盾するようですが、対面には対面の良さ・必要性があります。
クラスという社会のなかで、メンバーとして生活することによって得るものを大きいと思います。

ミネルバ大学のように、ロケーションを移動していくような取組みも既に出てきています。期間限定での合宿型や、ホームステイ型、またイマージョンプログラムとして短期間に他の文化圏に旅行するようなタイプも進化していくでしょう。

「個性」の一部として、その学校の所在地を活かした授業内容、地元の文化や産業を活かした科目なども工夫したいところです。


なお、このように、学校の個性、授業選択、地域・ロケーションなど多様性が増してくると、学校や科目の選び方、違う言い方をすると「自分の学びたい内容、学び方、ロケーションなど」と「学校の提供すること」との「マッチング」が重要となってきますね。
<参考>
マッチングで世の中はだいたい決まる。上手く行く!<ケースごとの考察>

教える人
これらの新しい「科目」を教える人としては、かならずしも、大学の教育学部を卒業して、既存の教員免許を持っている人が相応しいとは限らないでしょう。

教員免許の有無に関係なく、その科目を教えるのに相応しい知識・スキル・経験(教えるスキルを含む)を持っているのであれば積極的に活用すべきです。そうしないと、その科目・授業のレベルが下がるでしょうし、教える人が足りなくなるのではないでしょうか。

逆に、教員免許の必要条件を変えたり、時代に合わせて新しい科目を教える知識・スキルを身につける制度にしたり(飛行機のパイロットでは、機種ごとに免許が必要なように)、ということもあり得るでしょう。


本稿では、社会人経験、仕事・ビジネス経験を振り返り、学校で学びたかった内容をスタート地点として、学校・教育の在り方、時代に応じた変化・進化について妄想してみました。

将来を展望すると、次世代育成はとても大事ですね。こうしたことに興味のある人で集まって「21世紀のカリキュラムを考える会」をやってもいいかもしれませんね。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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