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コロナのワクチンについての細かいことを調べてみた

※数年前(コロナワクチン1回目が日本で始まった時)に書いたものなので、古い情報と思います。

 ワクチンを打ってきたので、ワクチンについて疑問に思っていたことを少し調べてみようと思い立って、細かいことをいくつか調べてみました。主に分子生物学に関連することなので、けっこう専門的で細かいです。
 全身倦怠感や高熱がなぜ出るのかについても、自分なりに腑に落ちる理由が見つかって良かった。


各社のワクチン

ファイザー(BioNTech)

mRNAワクチン、スパイクタンパク質、メチルシュードウリジン修飾あり(RNAが分解されにくい修飾。これが無いとRNAは体内ですぐに分解されて意味がなくなる)、CAPあり(RNAの末端を保護するもの)、脂質キャリアあり、全長4,284塩基(5'と3' UTR, シグナルペプチド、polyAなど含め)。2塩基の変異あり(抗体が産生しやすくなる変異、MARSの研究から分かっていたもの。変異の箇所も公開されてる)。まれに軽微な心筋炎になる。

モデルナ

mRNA-1273 という名前で検索すると便利。
特徴はファイザー製とほぼおなじ、スパイクタンパクの全長(3,822塩基くらい)、付加配列の有無など調べてない。2塩基の変異もファイザー製と同じ。

アストラゼネカ

アデノウイルスベクター(チンパンジー)、スパイクタンパク質の全長(GenBank Acc. No.: YP_009724390.1)とtissue plasminogen activator (tPA) leader sequenceを発現、アデノウイルスのパーティクルを打つ、ウイルスベクター自体はヒト体内で複製できない、変異株への有効性が少し低い、まれに血栓ができるが今は対処方法が確立している。

米ジョンソン・エンド・ジョンソン

ウイルスベクター、1回の接種で済むらしい、血栓がまれにできるのはアストラゼネカ製と似てる、まれにギランバレー症候群が出るらしい。

その他のワクチン

いろいろある。中国製の不活性化ワクチンとか、ロシアのやつ(効果が長いと主張してる)とか、日本製(作成中)とか。そのほかもたくさん。みんながんばってるんだな。

ワクチンの副作用

インフルのワクチンとかと比べ、mRNAワクチンの副作用が強い理由について、いくつか考えられるので列挙してみた。

1.単に免疫反応が強く出ている

 タンパク性や不活化ウイルスなどと比べ、感染防御の効果が高いみたいだし、2回目のほうが副作用が強いし。

2.脂質キャリアに使ってるPEGにアレルギーがでる

これは間違いなく出る人がいるし、アナフェラキシーはPEGがほぼ原因らしい。が、全身倦怠感や高熱がこれほど起こるんだろうか。

3.二本鎖RNAによるインターフェロン・レスポンス

mRNAの転写の際に、末端にループ構造を持つ⼆本鎖RNA (loop-back dsRNA) ができ、これが⾃然免疫系によって認識され、炎症性サイトカインの産⽣を誘導してしまうため。これは素人ながら、かなりアリそうかなと思う。ウイルス自体に感染したような全身倦怠感や高熱が出る理由も納得できる。なおワクチン製造の過程では、このdsRNAを精製で取り除いたり、これが起こらないようなRNAポリメラーゼを進化工学的に作ってそれを使って逆転写をしたり、というのをやってるけど、わずかに残るのかも?

もし副作用の高熱がインターフェロン・レスポンスならば、これは本来欲しい免疫反応とは違うはずなので、解熱剤とかをバンバン使っても問題ないと思う。もしウイルス自体に感染したなら、高熱はウイルスの増殖を抑制する反応の1つなので、解熱剤を使いすぎることに懸念があるけど(ウイルスをやっつけにくくなるので)、ワクチンの副作用であればこの懸念はないので、どんどん解熱鎮痛剤を使って良いと個人的には思った。

その他のこと

血栓は、2種類のウイルスベクター・ワクチンの両方で起こるみたいなので、共通した機構があるんだと思う。その原因解明に本格的に取り組む研究が開始された、という記事も見た。あと、血栓ができても対処法が確立していて、いまはイギリスでもワクチン副作用の血栓による死者はゼロらしい。良かった。
心筋炎は、mRNAワクチンに共通してるので、これも何かメカニズムがあるんだろう。

参考

記事やニュースなどは数多くあるが、RNA関連の細かい話題や経緯などは、日本RNA学会の会報(第43号)が参考になった。メチルシュードウリジンの修飾の効果や経緯、CAP付加の方法、mRNAを作るための転写酵素の選抜、多くの科学技術の進展によって達成されていること、など、どれもメチャクチャ興味深い。
https://www.rnaj.org/newsletters/itemlist/category/129-vol-43
 
病理関連のことは、以前からずっと、山中先生のサイトが素晴らしく良い。「専門家・識者・書籍から学ぶ」のリンク先も、とても勉強になった。
https://www.covid19-yamanaka.com/

感想

 mRNAの配列について、スパイクのどの部分を使ってるのか知らなかったので、調べてみて全長だと分かってよかった。RNAのサイズが意外と長くてビックリ。
 逆転写の酵素(RNA polymerase)もちゃんと実験室内進化によって選抜してて、その変異も公開されてるのもビックリ。
 副作用についても納得できる理由が見つかったよかった。

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