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創作室(投稿作品)

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創作の部屋です。
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記事一覧

『イケコの笑劇場』〜舞台袖から見た風景〜

2023年7月11日(火) <ノユーク・チャイpresents vol.6> 「イケコの笑劇場 たまにはお茶でも飲みながら」を開催させていただきました。  [プログラム] 1部  パントマイム・創作一人語り・ウクレレトーク・腹話術etc 休憩  マルシェやフリードリンクでおくつろぎください 2部  パントマイム劇「ブナの木の下で」 終演後 オープンスタイムにて歓談 大盛況のパフォーマンスライブでした。まさに「笑う劇場」。ライブの臨場感。醍醐味。パフォーマーとお客様との双

『もうすぐ あえるね』

〈三五年前、お産のため初めて二歳十一ヶ月の長女と離れて過ごすことになった私は、娘が心配でいてもたってもいられず、絵本を作り始めました。 見様見真似で糸綴じをして、色鉛筆で絵を描きました。ぬいぐるみのきりんさんたちと冒険しながら、娘がその小さな体で元気いっぱい自立していくお話です。 去年、長女は第三子を出産しました。そして『カラペハリエ』という貼り絵のワークショップを主催して、子育て仲間と共に一年の時間をかけて、一冊の美しく瑞々しい絵本を完成させました。 「子どもの為に、自分

同じ月を見上げている

同じ月を見上げている皆既月食の夜に 赤茶色に翳った月が明るく輝き始めるのを見上げていたら、 子どもたちの無心なつぶやきをふたつ、思い出しました。 まるで無垢な自由律俳句のようなことば…。 一つは、 「お月さまー そこから海が見えるかー!」 これは、親友の広沢里枝子さんが、幼い子どもさんたちとの会話を綴った会話集 『あきと まさきの おはなしの アルバム '90(第四集)』の表題です。 元々は、「月に聞く」という題の、 まさき「あっ、おつきさま。われた おつきさまだ。オ

生きづらさを感じていない同性婚カップル

生きづらさを感じていない同性婚カップル # 結婚の自由をすべての人に 2021年3月17日に北海道地裁は、同性婚を認めないのは「法の下の平等」を規定した憲法14条に反するとした画期的な判決を下した。 夕方のニュースを見ていた時、二女が弾んだ声で電話をくれた。彼女は、自身のSNSでもレインボーフラッグが旗めく写真と共に、こう書いている。 「私達にとって特別な日です。クラウドファンディングを通じて応援していた同性結婚の裁判でよい判決が出ました。大好きな人と安心して老いて

地球をおんぶする

黒姫ヒーリング紀行⑥地球をおんぶする 早いもので、森林セラピー的森歩きのリピーターになってから8年になります。いったい、どんなところに、こんなにも惹かれているのだろう。私の場合、答えは意外に単純なところにあったようです。 「自然の中でねころぶ気持ち良さを味わいたくて」 一言で言えばこれです。 季節によって、場所によって、隣でねころぶ人によって、感覚は微妙に変化します。その時自分が抱えている荷物(悩み)の重さによっても感じ方は大きく変わります。そんな気づきがさらに興味深い

大海へと旅立った白杖

黒姫ヒーリング紀行⑤ 大海へと旅立った白杖 [滝浴(たきよく)とヨガと森林浴の1日] 黒姫高原から日本の滝百選の地震滝(ないのたき)別名、苗名滝(なえなたき)まで歩く約7㎞のロングコースは、信州信濃町癒しの森®が提案する森林散策モデルのなかのひとつ。森林浴と滝浴の両方を味わい森と一体になれる1日コースだそうです。 地震滝(ないのたき)で滝浴 2017年9月4日、晴れ渡った空に初秋の黒姫山が美しい早朝。 私たち「極上の旅」の仲間7人は、滝をめざして出発しました。   トレ

謎のマシュマロサンド

黒姫ヒーリング紀行 ④謎のマシュマロサンド  坂木司の『夜の光』(新潮社刊)という小説に、あるお菓子が登場します。  枝にさしたマシュマロを焦がさないように遠火であぶる。表面がきつね色になり、中がとろりと溶けたらクラッカーになすりつけ、そのうえに板チョコをのせ、さらにクラッカーでサンド。熱々をすかさず食す。 物語の主役は、天文部の高校生男女4人。それぞれに内面の葛藤を抱える彼らですが、天体観測会のときだけは伸びやかに解放されて、明暗のコントラストを醸し出しています。  食材

野尻湖人・あらわる?

  黒姫ヒーリング紀行 ③野尻湖人・あらわる? 信濃町の新月プロジェクトの皆様から、この冬もクリスマスカードが届きました。 「いま癒しの森は、白い妖精たちが舞い降り冬の訪れを知らせます。穏やかな春を迎えるまで、植物たちは蕾にそれぞれユニークなコートをはおり、つややかな緑の葉で冬を超す木々は、雪の布団に覆われる日を待ちます。凛として静寂な森に、湧き水の清らかな流れの音が優しく響きます…」 詩情あふれるお便りから、厳かな真冬の森の気配が伝わってきて、いますぐにも黒姫の森へ行

森のサウンドシェルター

黒姫ヒーリング紀行 ②森のサウンドシェルター3年前の2016年10月、私は、1泊2日の森林セラピーツアーに参加しました。 「森林メディカルトレーナーと過ごす2日間 森を感じる休日 アファンの森と癒しの森」主催は、信濃町森林療法研究会「ひとときの会」新月プロジェクトです。 宿泊先のペンションもぐに集まったのは、女性5人。森林メディカルトレーナーのリエちゃんとおとうちゃんが笑顔で私達を迎えてくれました。  ツアーでは、お互いに親しみを込めて、森のキャンプネームで呼ぶそ

てのひら集音器

黒姫ヒーリング紀行 ①てのひら集音器 「川のせせらぎを聴いてみてください…」 森林メディカルトレーナーのうさぎさんは遊歩道で足を止めると、言いました。 「てのひらを耳に付けたり離したりすると、せせらぎの音の違いを感じていただけます」 うたどりさんと私が、てのひらをやんわりと丸めて、左右の耳のうしろに添えてみると…。不思議! 川がまるで、自分の足元に瞬間移動したかのように、水音が迫ってきます。てのひらは集音器になるのですね。 信州信濃町の森林セラピープログラムを初

ボクのひみつきち

ボクのひみつきち童話の雑誌 くろひめ 第30号掲載(2021.9) #創作室 「おかえりー!」 ボクが赤いランドセルをゆらしながらしごとべやにはしっていくと 「ただいまー。学校、たのしかった?」 おかあさんはおかしそうにわらってくれる。 おねえちゃんもおにいちゃんもまだ学校。 雨だから、ともだちんちにもあそびにいけない。 つまんないな。 そんなときボクは、おかあさんのつくえの下にもぐる。 おかあさんは足がつめたい。 ホットカーペットをつけて、もうふにぐるぐるまきになっ

「熱気球ソラと火の神様」

「熱気球ソラと火の神様」#創作室 日の出時刻の4時半。渡良瀬遊水地(わたらせゆうすいち)は、青白い薄明かりにひっそりと静まりかえっていた。 土手の上では、熱気球チームのスタッフが黒い風船を空に飛ばす。風のチェックだ。風船は5分ほどかけて銀色の空に消えていった。 熱気球パイロットの辰之助さんは、ゲストを振り返ると、風速3メートル以下なので予定通り飛ばせることを力強く告げた。 「今日は予約がおひとりだったので、ソロ気球です。思いきり楽しんでください」 熱気球フリーフライト体験

「かわたれの灯り」

「うさぎのうしろ姿が、お祖母ちゃんと、お母さんに見えたの。 なんだか、ふたりとも、ほんわかたのしそうにしてるなぁ、って思ったら嬉しくて…」 結婚したばかりのきいちゃんが、ニコニコしながら朝子さんに贈ってくれたのは、つりがね型のガラスのランプでした。 起伏の穏やかな雪原に、大きなけやきが立っています。 長い吹雪がやっとやんだので、うさぎの家族が巣穴からでてきました。 2羽の白いうさぎが仲睦まじくよりそって、夜明けの空を眺めています。 三日月と星々のまにまに、銀色の雲がたなびい

「虹の滝」

うたはその名の通り、歌うことが好きだった。信濃の里山に嫁いでもうすぐ40年になる。目は見えないが、晩秋の森のような明るさの中でいつも朗らかに暮らしていた。 ところが、大切なひとと死別してからというもの、声を失ってしまった。かけがえのないひとだった。ある夜、とぎれとぎれの眠りの中で、自分を呼ぶふしぎな声を聞く。 「ウタ ウタ ココヘオイデ」 たえまない雷鳴のような滝のとどろき。そこから聞こえてくる呼び声には、会えるはずのないひとの気配があった。うたはおそれおののいた。でも