ツムギアルバム

趣味は同人誌の編集発行 テーマは「記憶の断片を紡ぐこと」 7つの小部屋でそっと語ります…

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趣味は同人誌の編集発行 テーマは「記憶の断片を紡ぐこと」 7つの小部屋でそっと語ります #創作室(投稿作品) #まなびや(先生と私) #追憶の部屋(両親と私) #隠し部屋(同人誌収録エッセイ) #別の扉(企画する私) #保健室(がんと私) #子供部屋(母の私)

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最近の記事

光のしずく

詩の一節がずっと頭の片隅に残っていることはありませんか? 「わたしが死んだら黒姫山に骨をまいてほしい…」たしかそんなふうなことばだった…黒姫にゆかりのある作家か画家か…。あれはどこで読んだのだったろう。 黒姫高原に足繁く通っていた頃に、となりを歩く親友にふと呟いたことがある。 「もし私が死んだら、私の魂はきっと、このあたりをふうわり飛んでいるだろうから、私に会いたくなったらここに会いに来てね」と。 「骨はお墓にあるだろうけどね」と付け加えるのも忘れなかったから、私たち夫婦

    • 芦原妃名子様 16年前のファンレター

      昨年末から、断片的に流れてくる、ドラマ『セクシー田中さん』のショート動画をおもしろく観ていましたが、原作者が芦原妃名子さんと知ったときは少なからず驚きました。『砂時計』の作風と違ってしまった気がして…。 漫画『セクシー田中さん』を7巻大人買いして読んでみたら、繊細な心の機微や人生の移ろいが丁寧に描かれていてとても魅力を感じました。原作の持つパワーをひしひしと感じ、ぜひ完結まで読みたい!と切実に思いました。これまで読んでなかった作品も、これから始まる作品も読んでみたいと楽しみ

      • 【月のしじま】

        漉工房SUKIKOUBOU  (手漉きパルプ&和紙の造形制作) 高山しげこさんのすてきな作品を我が家にお迎えできました。 月のしじま見れば見るほど美しい和紙の灯りです。 片面は、海に浮かぶ十三夜と光跡(月の道)のきらめき。 しじまの中にあって、心は密やかに満ちていくようです。 もう片面は、雪景色の森の天空はこぼれるような満点の星々。 あ、流れ星・・・!  祈りの声が聴こえるようです。 静寂のむこうに、 孤独の向こうに、 何かの気配が沸々と湧いてくるような、そんなパワー

        • DVD完成しました!

          DVD完成のご報告 なんでも、やらないよりやってみるものですね。 乳がんが再発し、主治医から余命1年くらいか…と教えてもらった今年の1月。私は妙に肝がすわり終活モード全開になりました。切羽詰まって、というよりは、昂揚感に近いような不思議な感覚が続いています。実際には新しい治療の効果もあり、私の猶予期間は意外に伸びるかもしれませんが…。 そのような中にあって、このDVDの完成は、まるで1冊の自費出版本を編んだかのような大きな達成感・充足感を私に与えてくれました。タイムカプ

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        • 隠し部屋(同人誌収録エッセイ)
          20本
        • 追憶の部屋(両親と私)
          15本
        • 保健室(がんと私)
          12本
        • 別の扉(企画する私)
          17本
        • 創作室(投稿作品)
          14本
        • #子供部屋
          9本

        記事

          『イケコの笑劇場』〜舞台袖から見た風景〜

          2023年7月11日(火) <ノユーク・チャイpresents vol.6> 「イケコの笑劇場 たまにはお茶でも飲みながら」を開催させていただきました。  [プログラム] 1部  パントマイム・創作一人語り・ウクレレトーク・腹話術etc 休憩  マルシェやフリードリンクでおくつろぎください 2部  パントマイム劇「ブナの木の下で」 終演後 オープンスタイムにて歓談 大盛況のパフォーマンスライブでした。まさに「笑う劇場」。ライブの臨場感。醍醐味。パフォーマーとお客様との双

          『イケコの笑劇場』〜舞台袖から見た風景〜

          『もうすぐ あえるね』

          〈三五年前、お産のため初めて二歳十一ヶ月の長女と離れて過ごすことになった私は、娘が心配でいてもたってもいられず、絵本を作り始めました。 見様見真似で糸綴じをして、色鉛筆で絵を描きました。ぬいぐるみのきりんさんたちと冒険しながら、娘がその小さな体で元気いっぱい自立していくお話です。 去年、長女は第三子を出産しました。そして『カラペハリエ』という貼り絵のワークショップを主催して、子育て仲間と共に一年の時間をかけて、一冊の美しく瑞々しい絵本を完成させました。 「子どもの為に、自分

          『もうすぐ あえるね』

          花豆を煮る

          しっとり雨の月曜日。 「お豆さんが朝子さんのところへ行きたがったから」 と菅平の美恵子から届いた尊い自家栽培の花豆。 紫花豆のフサの中にごく稀に見つかる白い豆を選り分けているのだそうな。 皮が破れないよう、グラグラさせない弱い火力で丁寧に優しく豆を煮る。 ふた晩かけてお豆さんの声を聞きながら。 薄い琥珀色の大きく美しい煮豆。 和菓子の練り切りのような極上のひと粒を口に含む。 「砂糖で甘くしちゃうのはもったいなくて、ポトフやサラダに美味しいお豆さん」と友がいうとおり、砂糖

          おわりはつもの

          (2017年5月8日の記) 友ちゃんがわざわざ仕事をお休みして、都内からお泊まり整体にきてくれる日、苺を1パック買いました。 小粒で完熟した埼玉産のとちおとめ。 きっとこれが今季の食べ納めだなぁと思ったとき、ふと「おわりはつもの」という父の声が耳によみがえりました。両親のイメージとともにある、大切なことばです。 「終わり初物」 意味は、時季の末に成熟し、初物と同じように珍重される野菜や果物というものです。 私の実家は苺農家でした。 12月から約半年間の出荷を終えると、

          おわりはつもの

          記憶の宮殿

          (2010年7月6日記) 五七の桐 4月19日、父が帰ってきました、献体先から遺骨となって。 実家が無人なのでしばらく私の家で預からせてもらうことになりました。私にとってそれはとても嬉しいことでした。父は元気なとき一度も私の家に泊まってくれたことがなかったし、病気になったときも引き取ることは叶わなかったから。 実際には引越しの準備が始まったので、我が家に「泊まってくれた」のは10日ほどのことでしたが、どんなかたちであれ夢がひとつ叶いました。 東京女子医大からの使者を

          『ナルニア国ものがたり』再読

          『ナルニア国ものがたり全7巻』を読み終えました。 『さいごの戦い』は前半、ナルニアに悪が極まり、主人公たちは失意と怒りの連続でどんより重苦しいエピソードが続きます。しかもナルニアの非常事態だと言うのに、アスランは沈黙して全然姿をあらわしてくれないし。 気が滅入ってしまって、私の読むペースもガクンと落ちました。 しかし後半は一気に加速。 残りのページが減っていくのが惜しいのに、閉じることができなくて。早く完結を知りたいのにそうしたくないような。こんなのまったくたまりません

          『ナルニア国ものがたり』再読

          暗闇のなかの一本のろうそく

          (2012年5月 親友への手紙) 里枝ちゃん。 今日ね、六本木の国立新美術館のセザンヌ展とエルミタージュ展を鑑賞してきたんですけど。そこで、里枝ちゃんそっくりの男の子を見つけましたよ!! 左側にお父さんらしき人が右手にトンカチ、左手にノミを持ち、板を削っています。その手元を、一本のろうそくで照らしている少年が右側に描かれています。年は7歳くらいでしょうか。ゆったりした赤い衣を着て、ろうそくを持った左手を伸ばして、右手は机に自然な形で置いて体をあずけています。 全体的に暗

          暗闇のなかの一本のろうそく

          STRAWBERRY FIELDS

          『砂時計』芦原妃名子様 拝啓  初めてお便りいたします。 『砂時計』先日、高校一年の娘に借りて何気なく読み始めましたら、閉じることができなくなりました。一気に終章まで読みきったら、夜が明けて、布団からでた本を持つ手は冷え切っているのに、胸の中は熱い涙でいっぱいで、どうやっていつもの朝に戻ったらいいのか戸惑うくらい『砂時計』の世界に浸っていました。 後日9巻、10巻へ進み、今度は10巻から1巻へと逆に読み、繰り返して何度も読まずにはいられませんでした。 シンクロナイズする

          ゴクヤスミ

          夏といえば昼寝 真夏の昼下がり。田んぼの畦道、深い木立ち。戸を開け放って昼寝する人たち。降りそそぐセミの声・・・に重なるドンパン節の替え歌。 蚊とりマットの今年のCMが流れると笑ってしまう。幼い頃の、夏の記憶そのままの光景だから。ドンパン節のかわりに、父と母の盛大で規則正しい寝息と裏の宮川の牛蝉の「モゥオー」の大合唱ではあるけれど。 何はさて置き、夏といえば昼寝です。 夏といえば冷や汁 昼ごはんはうどん(ほしめんこ)に冷や汁が定番。 煎りたてのたっぷりの白ゴマをすりば

          やまいを養う

          ハルの避妊手術 「ハル、おかあさんだよ、迎えに来たよ。」と声をかけても、ハルは腰を低く尻込みして私に近寄るのをためらっている。そっとなでながらいたわりのことばをかけてあげるとやっといつものように、私の顔をペロペロと舐め始めた。 毛を剃られたお腹が寒そうで、12センチほどの長さの傷跡が痛々しい。傷口をそろそろと舐めている。ごはんの時間がきても吠えない。尻尾がたれて意気消沈、途方に暮れたような顔をして、すごすごと自分の巣箱にもぐりこみ体を丸めている。 ハルと暮らして7ヶ月だが

          やまいを養う

          ツバキ文具店 雨宮鳩子様

          カサブランカ空港へ向かう機上で しっとりとやわらかい風が、田んぼの早苗をさわさわと撫でていく季節になりました。 鳩子さん、そしてご近所のみなさまは、その後お変わりなくお過ごしでしょうか。  どなたともお会いしていないのにまるで、旧知の間柄のように親しく懐かしく想われるのが不思議でなりません。鶴岡八幡宮の横の静かな路地、藪椿の陰からQPちゃんがぴょこんと顔をだす様子がまざまざと目に浮かびます。 先日のことですが、私は飛行機のなかで、鳩子さんとバーバラ婦人とのこんな会話を

          ツバキ文具店 雨宮鳩子様

          三面鏡

          彼女は三面鏡を見る。化粧のためでなく観察するために。まるで鏡の中に、だれも気づかないけれど見過ごしにしてはならない何かが潜んでいないかと探るように。 右の目の下に泣きぼくろがあるせいか、右半面は少し悲しそうだ。左半面はやや険があり意地悪そうに見える。低くてやや上を向いた丸く不器量な鼻は母から、泣き腫らしたようにふくらんだまぶたは父から、ぼさぼさの濃い眉毛は母方の祖父から、それぞれ受け継いだ。額の横じわが10代のころから中年のような印象を与えていた。 高校生のころ、彼女は密