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おわりはつもの

(2017年5月8日の記)

友ちゃんがわざわざ仕事をお休みして、都内からお泊まり整体にきてくれる日、苺を1パック買いました。
小粒で完熟した埼玉産のとちおとめ。

きっとこれが今季の食べ納めだなぁと思ったとき、ふと「おわりはつもの」という父の声が耳によみがえりました。両親のイメージとともにある、大切なことばです。

「終わり初物」
意味は、時季の末に成熟し、初物と同じように珍重される野菜や果物というものです。

私の実家は苺農家でした。
12月から約半年間の出荷を終えると、5月の連休にはハウスの苺をかっきって(刈り取って)田植えの準備が始まるのです。毎年そのころにお呼びがかかります。

「こどもら連れていちごとりに来(き)ないね。おわりはつものっていうからな。今の苺は特別んまいよ。」

待ちに待った招待に、私は嬉々として実家に帰ります。こどもたちもその時だけは苺畑を走り回ることを許されて、木箱にいっぱい、真っ赤に熟れた苺を摘んで帰って、ジャムにしたりジュースにしたり思う存分食べきったものでした。

父が「ぶどう」と呼んでいた、初物の絹さやも木箱に摘み取りました。おわりのものと、はつものは、どちらも比類ないおいしさでした。

母と姉が作ってくれる、てぶちうどんや天ぷら、饅頭などの美味しかったことも、忘れられません。

「んまいから。だまされたと思って、食ってみない」
(アクセントは「な」)

「まあ、食べてみやっせ」

という母独特のいいまわしも、同時に甦ります。

美味しいものをたらふく食べるのはもちろん嬉しいのですが、それ以上に、両親や姉たちの笑顔が嬉しかったんだなあ、と今は思います。

苺は貴重な収入源ですが、長期間休みなしのたいへんな重労働でした。だから、それを家族総出で無事にやり終えた安堵感がみんなの顔をいつになく明るくほころばせていたような気がします。

苺ハウスの前で。
母57歳。長女1歳。



そんなことを思い出しながら、友人を迎える献立を考えていました。

ちょうど、「野菜の店くりちゃん」のトマトをいただいたばかり。まるで真夏に、もぎたてを食べるような、おひさまの匂いのするトマト。これは、ぜひとも丸かじりしてもらわねば。

無人販売所の新玉ねぎがたくさんあったから、ごぼうと新玉のポタージュ作って・・。

新じゃがは、圧力鍋で蒸かして発酵バターをのせて熱々を出そう・・・。

あとはネギぬたとおひたしと・・・。

野菜丸かじり的献立のアイディアがどんどん湧いてきた!

友人は、私のために、朝、パンとケーキを焼いてきてくれました。

友ちゃん手作りケーキとパン



りんごといものしっとりケーキ。
バタークーヘン。
ブリオッシュ。

どれも厳選素材で丁寧に作られていて、本当に美味しかった~!!

先天盲の彼女は、お菓子づくりが趣味でプロ並みなのです。
ラッピングやラベルにもこだわっています。

そんなわけで、お互いに食の話題でおおいに盛り上がりつつ、お泊り整体の夜は更けていったのでありました。

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