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たぬき

楽しいはずの
デートの帰り

彼が
たぬきを轢く

たぬきはこげ茶と黒が入り混じった体毛で
牙はするどく体長70センチくらい

道路の真ん中で横たわるたぬき

たぬきは息をしていないので
ちゃんと死んでいるらしい

たぬきが可哀相だと
わたしが泣くと

彼は無言で
たぬきを車に乗せた

トランクだけど

山の中で
わたしたちが何をしていたのか
それは
ひみつだ

たぬきはあのあと
立派な剥製になって
おじいちゃんのうちに置いてある

彼とはずっと前に
別れてしまったけれど
たぬきはまだまだ
現役だ



初出 現代詩フォーラム 20040412


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