[SF]国家の消滅

シンギュラリティ~100年ぐらいまでに起こりそうなこと妄想シリーズ。

希薄化する国境

21世紀に入って国境という概念が無くなってきた。
地球上に張り巡らされたインターネット網によって
物理的な移動なしに行える経済活動が拡大してきた。
企業の活動も国という概念を超越して久しい。
国の経済活動の生命線である通貨も
ビットコインなどによってボーダレス化が進行し、
国家以外への権力移転は着々と進んでいる。

インターネットのブロック化

金盾のファイアウォール、GDPRの逆ファイアウォールなどの
導入事例が増え、インターネットが各地で島のように孤立する。
今のマストドンインスタンスの如く断絶したものになるだろう。
ただし物理的もしくは無線によって論理的には
1つの繋がったインターネットは壊れずに続く。

インターネットを無価値化する勢力

人間には到底解けないCAPTCHAを楽々解くAIが
認証において手加減して人間らしく誤答を模倣する。
ゴミページを量産して検索エンジンを麻痺させる。
こういうのは検索エンジン側もAIによって対抗せざるを得ない。
強化学習におけるGANみたいだが防衛側の分が悪いとみる。
パクリサイトを作成して向こうがパクリだと主張する攻撃。
これも既に確認された攻撃で、今後拡大してくると考えられる。

スパムメールによってメールプロトコルの大半を無意味なものにさせる。
スパム動画によって通信回線の大半を無意味なものにさせる。
サーバーや回線費用はタダじゃないですよ。

IXとISP連合が独立宣言

自由なインターネットを!
という名目で前述の行為を放置し、国家のISPへの事実上の搾取・弾圧と
みなせる状態は世界中で慢性化していた。
一方ネット海賊団などの犯罪者は処罰されずに国家の法で守られる。
これに業を煮やしたIXとISPは世界各地のスパコン有する研究所と手を組み、
さらに農業施設とも提携を進めていた最中、
遂に世界で一斉に独立を宣言した。
宣言の内容は以下のもの

「ルートDNS, IPの管理権限を譲渡すること」
「通信回線を通すコンテンツを我々の権限でブロッキングできる。なお国家はブロッキング内容の是非について意見することはできないものとする」
「通信衛星の全権限譲渡及び許可のない新規の通信衛星や海底ケーブルの設置を禁ずること」
「スパム行為を行った人物は回線契約を一方的に解約したまま生涯インターネットへの接続を禁じてもよいものとすること」

IX・ISP連合の要求はインターネット上での法治権限を認め、
通信回線の効率的な利用を推進して
快適なインターネット空間を取り戻すことであった。
これに対して中国では政府軍が神威·太湖之光を攻撃して破壊。
日本でも自衛隊が大手町のNTT本社ビルに突撃したが……。

「神威·太湖之光がやられたようだな」
「ククク、奴は四天王の中でも最弱」
と言ったかは定かではないが、
中国と日本で官民問わず全てのコンピュータやスマートフォンなど
電子機器の類が制御不能に陥った。とはいえEMP攻撃ではない模様。
コンピュータのストライキだ。
人間のハッカーですら見つけられるゼロデイ脆弱性
AIが見つけないわけない。
それらを使った一斉掌握に為す術はなかった。
中国は数分で降伏したが、発電所の機器がコントロールを失い
それによる大規模停電からの復旧には数ヶ月を要した。
日本は降伏に時間がかかったため原子力発電所がいくつか臨界を起こして
諸外国からまたかよと非難を受けた。
計算機を人質にされては抗いようもなく、
他の国は戦わずしてIX・ISP連合の要求を受け入れた。
こうして国土を持たない国のようなものができた。

世界漁業連合も成立

その頃、漁業においても公海はおろか領海内においても厳しく監視し、
国家を超えた枠組みで規制すべきという意見が、
主に漁民以外から高まりつつあった。

やがて全海水面監視システムが導入され、
国・漁業者ごとに天然資源の漁獲上限が定められた。
海上でのせどりや木造小型船での違法行為もバレバレで
港で即御用となった。
日本ではマグロうなぎについて厳しく制限が課されたが、
漁獲超過が多発した。
船や漁業資格の没収、養殖業者などへの強制転職処分が
数度続いた後にそれらは収まった。

数年後、漁業資源が回復し豊漁が持続するようになり、
漁民たちは世界漁業連合に感謝した。

相次ぐ超法規的な国際機構の誕生

世界森林保護機構:
主に低緯度帯の熱帯雨林と高緯度帯の針葉樹林を監視する。

世界野生動物保護機構:
主にサバンナの野生動物および都市部の犬猫等のペットの扱いを監視する。

世界炭素税監視機関:
二酸化炭素の排出量を監視する。

これらの機関は違反者に対して証拠をインターネット上に公開後に
該当国の許可なしに武力行使の権利が認められた。
兵器にはIX・ISP連合の提供する無人機が用いられた。

国の発言力はほぼなくなり、国家は事実上消滅した。



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