「ITパスポート」の価値に悩んだら。
Twitter(x)で語ってきた「ITパスポート」の価値についてまとめてみました。
名称が長いので、以降は「iパス」と表現します。
先にお伝えしたいこととして、私はiパスを過大評価も過小評価もしません。
IPAの公式情報を基にした適正な価値をお伝えしたいです。
きっかけは、以下を目の当たりにしたことです。
強い言葉で過小評価する人(「役に立たない」など)
それを受けてITが苦手になる人
その一方で、以下のような動きも目にしました。
強い言葉で過大に評価する人(「iパスでDX!」など)
それを受けてiパスの時点で過大に勉強し、結果としてITが苦手になる人
この部分だけ聞くと、違和感ありますよね‥。
「‥それってあなたの感想では?」と思うかもしれません。
参考に、大手資格サイトの情報をご覧ください。
A社、B社ともに「iパス」を初心者向けと説明したうえで、以下の学習時間を例示しています。
「基本情報」と比較できるよう、不等号を入れました。
A社の場合、IT経験者ならiパスの方が基本情報技術者試験より難しいと言っています。
B社は、無条件にiパスの方が難しいと言っているようにしか見えません。
作為的に選んだわけではないですよ。
どこもこんな感じです。
iパスと基本情報って、どれくらい違うかご存じでしょうか。
IPAの発表しているITスキル標準では‥
基本情報技術者試験は、レベル2
ITパスポートは、レベル1ですらありません。
私は、上の図をもってiパスの価値が低いと言いたいわけではありません。「過大評価」や「過小評価」を適正化したいと考えています。
すべての材料がそろわないと誤解を生みかねないため、理由は後述します。
さて、なぜiパスにこだわるのかといえば、一つ目の理由は受験者数が多いから。
2022年度の実績ですが、25万人を突破したとのことです。
とある大手家具メーカーでは、社員の8割が取得することを目標として掲げています。
二つ目の理由は、「ITに苦手意識を持つ人を増やしたくないから」です。
意外に思いますよね‥
ITに苦手意識を持つ人を減らしたいなら、iパスの受験者を増やすように「価値があります!」と発信すれば良いのでは‥そう思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、2年ほどiパスについて真剣に考えるうち、「過大評価」が「ITに苦手意識を持つ人を増やしている」と考えるようになりました。
ようやく、本題の説明材料が揃いました。
イメージはこんな感じです。色分けごとに説明します。
赤い部分が、過大評価の動きです。
受験者数が増加する一方、試験のネームバリューが高くなるため、先ほどの事例のように「講座」は難化し、参考書が分厚く難しくなります。
青い部分が、過小評価の動きです。
難化した参考書を読破し、合格してステップアップする方も居る一方、社会的評価はレベル1に満たないため、「取得しても無駄だった」などと吐き捨てる方が出てきます。
黒い部分が、冒頭で私が見た光景です。
IT初学者の方がぶ厚すぎる参考書に悪戦苦闘しながらも不合格となり、加えて「無駄」などの言葉を受け取って自信を喪失します。
さて、iパスの価値はどれくらいが適正でしょうか。
実は、IPA公式資料に答えは出ています。
ITパスポート試験以外の全ての区分には、「技能」の文字があります。
ITパスポート試験は、「共通的知識」に留まっています。
また対象者像としても、真ん中部分は「情報処理技術者」、ITをある程度専門的に扱う方を指しています。
左上の情報セキュリティマネジメント試験も、対象者を限定しています。
ITパスポート試験は、「すべての社会人」です。
「すべての社会人」が持つべき
「共通的知識」を伝える試験です。
すべての社会人は、「2進数」の存在は知るべきだとしても「浮動小数点のまるめ誤差」みたいなことまで理解する必要は無いのです。
ITパスポートは、知ることが重要な試験です。
技能は問われていません。
興味を持ってより深く学びたいなら、基本情報技術者以降の「情報処理技術者」試験の中で目指せばよいのです。
分厚い参考書にかじりついて、頭からじっくり読むような試験ではありません。
解らないところは「言葉だけなんとなく覚えて」読み飛ばし、周回しながら少しずつ記憶に定着させていく。
興味があったり、頭に入りやすいものは無理のない範囲で吸収する。逃げ道や裏技ではなく、そもそもそういう試験です。
iパス受験者には自覚が無いと思いますが、iパスにはITストラテジストなどの高度区分に登場する概念も含まれています。
iパスの時点でこれらを理解できてしまったら、高度区分を含めたすべての試験が不要になってしまいます。
iパスが難しすぎたり、価値に疑問を持っている方がいらっしゃる場合、これらを念頭に考えてみていただけるとよいかもしれません。
以下の書籍で、もう少し細かく説明しています。
ほとんど同じような内容ですが、iパス以外の話もありますので、ご興味があればどうぞ。
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