「好き」の記憶

一人の人間の嗜好というのはある程度決まっているものだと思う。
好きな音楽、芸能人、スポーツ、食べ物、漫画などなど。

学生時代などは時間もあるしまだ頭も柔らかいから、それでも好みの外の世界も探索する意気や余裕もあるが、社会人になると自分の好きな分野以外に裾野を広げようとはあまり思わなくなる。

でも例外が一つあって、好きな人の好きなものはやっぱりいくつになっても知りたい。
好きな人の好きな音楽とか、普段なら触れないのに少し触れてみてその人を知った気になって、恋愛効果も相まってかなんだか作品ごと好きになる。
そして結局その人を好きじゃなくなってもその作品だけ覚えてたりして、自分の好みからは少し外れた歪なプレイリストが出来上がったりする。

気持ち自体は案外すぐ忘れてしまうもので、モノの方に記憶が付随しているのは皮肉な現象にも思えるけど、誰かを好きになることのエネルギー値の高さに改めて驚かされもする、秋の夜。

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