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偶然

ほんの些細な偶然の引き寄せ方を学べなかった人々。 不器用だとか近寄りがたいとか何を考えているのかわからないと評されてしまうような、そんな人々。 それは例えば、デパートのポイント3倍デーだと気が付かずに、混雑に巻き込まれ自分の時間を失う人。 雨が降る前日は寝つきが悪い、というパターンを読み切れずに寝不足を繰り返す人。 声の大きさと周波数が絶望的に噛み合っていないせいで、いつも別の誰かの意見が優先されてしまう人。 茶が似合うはずなのにいつも金に髪を染めている人。 センス、なん

    • 感想:「コインロッカー・ベイビーズ」

      はじめに 読了後の感想です。 新品を買うのはオススメしない。 借りて読むか安い中古で済ませるが良いと思います。 才能 いつも、作品に感情移入して感想を述べている人を見ると、妙な劣等感に近しい感覚を覚える。 作り物の登場人物に、作り物の出来事。 作り物の空に、作り物の街。 それらをさも知人からの又聞きかのような質感でもって心に染み込ませ、隣町で起きた事案のごとく緊張させたのち、その題名の烙印でもって封をする。 その作業工程のどこに楽しみを見出せばよいかわからなくて、それが

      • 凡庸な汎用性

        凝り固まっていた筋肉をほぐして、血の流れを良くするように。 今までの自分の愚かさを正していく。 そうして健康という名の、凡庸な汎用性を手に入れることを誰もが望んでいる。 人は考える必要などなくなって、時間の流れは生死の概念と切り離されて。 最大の恐怖から、人々の心と世界とを遠ざける人類総出の先延ばしを継続するための営みに、流れる血と汗。 人が人らしく生きられるのって、そういうことに気が付くまでなんだ。 大人になったとか現実をちゃんと見ているとか、そんな言葉で自己暗示をかけて

        • 現実の更新

          心の中の言葉を、どこまで形にしてよいのかわからない。 これは悩みとか問題とかそういうカテゴリに属する感覚ではなくて、単に人間という生き物が持ちうる本能的な、正体不明のものに対する恐怖というやつではないかと感じている。 しかもたちが悪いのは、その恐怖が受動的なものではなくて能動的なものであるということなのだ。 かんたんに説明すると、幽霊が出るとささやかれているトンネルへ丑三つ時に侵入する、というのは受動的な恐怖である。 この恐怖を生存本能にしたがって軽減するために我々は、そ

          ふざけたオセロ

          (1) ときどき、人類がつけてきた足跡の長さに絶望する。 たとえば。 音楽の世界にはコード進行という要素がある。 どういう順番で音を鳴らしていけば、音の並びを曲たらしめられるかという音楽理論のひとつ。 それに基づけばすべてのコード進行はもうやりつくされているという。 どんなに複雑だろうが、意味不明だろうが、分析していけばどこかで既存のものと一致するのだと。 これって商業音楽で売れたい人にとってすさまじい絶望なのではないかと思う。 すでに誰かが通ってきた道を歩いているだけだ

          ふざけたオセロ

          ケモノ

          (1) 人が人になる瞬間というものを覚えているだろうか。 物心がつく、という言葉で解釈してもらってもかまわないし、一皮剥けるなんてのは言い得て妙すぎて寒気がするくらいだから、かなり直感的だ。 過去をさかのぼって、感情をともなう強い記憶をさがしてみよう。たいていの人は3~5歳までで、思い出せる出来事自体が打ち止めになるのではないかと思う。 それはまだあなたが獣だったから。 言葉を扱えるようになってくると、ようやく周りはあなたに人としての教育をはじめとしたコミュニケーション

          いま

          生命が消えた朝に 吸い込むにおいはきれいで 差し込む光はやわらかくてあたたかくて わたしを守ってくれてるの?? 風を感じたくて 温度を知りたくて けれど靴下とローファーが わたしを守るかのように 冷たい海へむかう魚になって わたしはきっと強くなるの 泳ぐことにつかれるまでわすれるまで ここに餌はないよね?? きっと涙は目立たないから 恥ずかしくないよね けれど閉じられないこの瞳は すべてを見届けるのだろう 昨日と明日が手を組んで マーブル模様に混ざったわたしを すくい

          空気がない。 風がない。 音がない。 聞くためのものがない。 暗闇に漂う僅かな声、振動、その発信源。 糸のように細いそれは動いていないから、辛うじて、わたしが落下していないことの証明。 しかし。しかしだ。 それが消えても、風がない。空気がない。 だから、落ちてはいない。落ちてはならない。 はるか遠くの空を見上げたいのに。 美しく誰のものでもないあの空にかかる雲。 蜘蛛の張り巡らせた糸のよう。 留まる人々とともに、目を開くごと増えていく。 それはわたしが落下していることの証

          ころばないころばないと気を遣っては話ころんでころがらざるに [Repost]

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          人間が詠む必要はないのだろう?やってみせなよ詠安いならば [Repost]

          人間が詠む必要はないのだろう?やってみせなよ詠安いならば [Repost]

          「小説版 すずめの戸締まり」感想

          -まえがきストーリーについては映画本編をご覧いただくか、もし時間があるならばこの記事を読んだうえで、小説版に触れることもご検討いただきたい。 内容としては読了後に受けた印象についてが主となる。 -絵のない「絵コンテ」 新海誠監督といえば。 私の中ではまず、「君の名は。」「天気の子」というヒット作を立て続けに打ち出していて、ぼんやりとではあるがブランディングの人、という印象だ。 彼の作品をひとつも視聴したことのない私でさえ、その両作品のテーマ曲をサビ程度なら歌えてしまうであ

          「小説版 すずめの戸締まり」感想

          あなたにも見てもらいたいんだけどと思う心がその目を塞ぐ [Repost]

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          井の中の滝壺

          はるか遠くで、景色は流れてゆく。 世界は動いてゆく。 それは流れ落ちてゆく滝のように、太陽の光を反射してきらめいて、時には月の満ち欠けを知らせるように響いていて。 激流が到達した、終わりの一つたる池のなかで、同じように太陽と月をつるつるの体に映す小石。 成り行きに研磨されてきたいびつな体は、澄み切った水の中にすこしだけ不釣り合いに濁りを落とす白色。 それが私。 新たな流れへとつながる水路が遠くに見えている。 滝壺が作り出す波紋をわずかにその身で感じながら、じっと、そっと、ず

          井の中の滝壺

          短歌はじめて三か月目の感想。

          いやタイトル57577に寄せないんかい短歌とは、日本に古くから伝わる文学のひとつである。 いつから5と7のいびつにも思えるリズムが体に染みこむのかは知らないが、少なくともこの芸術性に惹かれ、あるいは惚れられてきた人々の存在は奈良時代から途切れることなく、令和まで続きこれを文化として受け継いでいる。 私にとって俳句といえば松尾芭蕉。短歌といえば百人一首。 すらりと言葉は出てくるものの、義務教育を潜り抜ける道中で目にしてきた句はほんの僅かで、テストに出るゆえ記憶せよ、と言われた

          短歌はじめて三か月目の感想。

          ジャンプスタート2022 パック内容

          検索妨害。 聞くところによれば、今回46のテーマに120種類ものリストでパックが存在するらしいが、製品の品質に野次を飛ばすばかりか企業体制に写真付きで物申すばかりの投稿に埋もれていて、どうもパック単位の情報がなさすぎる(あったところでどうというものでもないが…。)のでほんの少しの購入内容をまずは自ずから発信してみようというささやかな自己満足的奉仕活動のつもりである。 ゴミの中でゴミを拾っている人とでも呼びたまえ。 白:明滅R 修復する天使  消失師、プレストン [New]

          ジャンプスタート2022 パック内容

          箱のなか、さらに文字数絞るかとマトリョーシカに笑われている

          箱のなか、さらに文字数絞るかとマトリョーシカに笑われている