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不信のとき 1968 大映東京製作

かつての有名作家有吉佐和子の原作を巨匠今井正が監督した作品で、人工授精という当時最先端の話題をテーマにしたものだ。たしかに賞味期限切れの話題だが、田宮二郎主演で岡田茉莉子(正妻役)と若尾文子(愛人役)が共演し、男と女の深い溝が見えてくる面白い映画だ。
上映時間119分のカラー映画。

ストーリー

浅井はある会社の広告部員だが、羽振りが良くて銀座のホステス、マチ子とつきあっている。正妻との間に結婚して10年間子どもが出来なかったが、突然マチ子が妊娠したと言い出す。彼女は娘を生み、浅井はマチ子の枕許へ駆けつけ子どもを抱いて感激した。
自宅に帰ってきた浅井に、妻道子は「赤ちゃんができたの、4ヶ月よ」と言う。浅井は、またまた感激する。
ところが、道子と愛人マチ子が病院で鉢合わせしてしまう。愛人のことがバレた浅井は妻に謝るが、妻は妙なことを言う。
「マチ子の娘はあなたの子供ではない」。
問い質すと「あなたは先天性無精子症だったから、私も人工授精したの」。浅井は驚く、女たちに騙されていたのは俺だったのか。
浅井は、愛人マチ子に「君には僕の子を産めるわけがない」と言うと、マチ子は逆上して怪文書を会社に送り付けて浅井の前から消えてしまう。その文書は会社で話題になる。浅井は、会社でも家庭でも居場所を失ってしまう・・・。

雑感

これで終わりではない。ちゃんとドンデン返しがある。しかも、結末を原作と少し変えている。その終わり方が余韻を残していて好きなのだ。
「にごりえ」「真昼の暗黒」「米」「キクとイサム」等の巨匠今井正監督は、大作人権映画「橋のない川」を撮りたくてTVの監督をやって金策に走っていた。そこへ大映からお声が掛かったので、まあやりたくてやった仕事ではない。しかし、結果的にこの人が撮ってくれて良かった。

田宮二郎
は、本作品の主演でありながら配役(香盤表)で若尾文子、岡田茉莉子というダブルヒロインに次ぐ三番目に名前が挙がっていたのが気に入らず、永田雅一社長に直談判し、自分の名前をトップに出させる。その代わり、デビュー以来在籍してきた大映を退社することになる。年功序列でいくと先輩の二人の名前を先に出すのは、良くあることなのだ。その代わり、第三位の田宮のギャラが高くなるはずなのだが、実より名を取ったのであろうか。
ここで現代劇のエースである田宮が抜けて、翌1969年に時代劇エースの市川雷蔵が癌で急死したために1971年に大映は一旦倒産してしまう。田宮の選択は、間違っていなかったのかもしれない。

この映画は、昼のTVでカット版を一回、深夜TVでノーカット版を二回見たので知らなかったのだが、併映が「指圧の心は母ごころ押せば生命の泉湧く」で有名だった浪越徳治郎主演「愛の三分間指圧」だったw。


スタッフ

監督 : 今井正
製作 : 永田雅一
原作 : 有吉佐和子
脚色 : 井手俊郎
撮影:小林節雄
音楽:冨田勲

配役:


田宮二郎 (浅井義雄)
岡田茉莉子 (妻浅井道子)
若尾文子 (愛人米倉マチ子)
加賀まりこ(小柳の愛人マユミ)
三島雅夫 (取引先小柳幾造)

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