見出し画像

三本足

三本足 北村の民話
 昔、狐森という盛があった。そこに源蔵という畑をしつつ、猟を楽しみとする男が住んでいた。
 ある年の事、罠に狐の左足が一本かかっていた。血の跡を追ったが、巧妙に隠されており、捕らえる事はできなかった。こんなこと今までなかったので源蔵は度胸で頭のいい狐なのだと考えた。
 それから罠が壊されることがあり、狩りもままならぬようになった。
 その苛立ちがあったのか、他の狐にあたることもあった。
 
 源蔵は年老いてきて、畑のこともできず、孫娘の雪が訪れては、世話をしていた。そんな孫は行方知れずになり、川で溺死することになった。
 源蔵はすっかり気力を無くしていた。
 ある夜、源蔵は三本足の狐を夢に見た。
「なあ、身内が死ぬはつらいものだろ」
 それから源蔵は猟をやめた。

 いつのころから三本足は源蔵の家の周りに現れるようになった。
 源蔵も年をとった三本足に手を出さず、餌をやるようになった。
 そんなある日、狐森のあたりが洪水になった。
 それを知らせて誰もしらない手の悪い老人が家を回ったという。
 数年がして、三本足の死体を見つけた源蔵は祠を作った。

 しかし、時が流れ、祠も、源蔵の家も、狐森も、今ではどこにあるかわからない。

 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?