足を止めるな

前評判を気にする人よ、劇場への足を止めるな!(カメラを止めるな感想)

※この記事にはネタバレを一切含みません。

好きな人の手料理を食べたことがあるだろうか

いや、ないならごめん。マジごめん。
別にリア充自慢したかったわけじゃなくて
この映画を見終わった後に感じる想いは
好きな人の手料理を食べた気持ちと同じで
馴染みのない味なんだけど、美味しい、好き
みたいな、そんな感じだった。

今風じゃない言葉なんだが
努力とか、情熱とか、愛とか、
そういうものが調味料になることがある。
高校野球のファンはとても多いし、
バンドのアルバムは1作目が好きだ。
昔の自分が、夏休みに部活に勤しんでいた
今の自分に関係ない、あの時間が
愛おしくてたまらなくなる日がある。
この映画の魅力は、そこにある。

はっきり言って、皆ハードルをあげすぎなんだ。
絶対見たほうがいいとか、ネタバレ厳禁とか。
映画史に残る傑作だとかとかとか
間違ってはいないんだけど、その証明は難しい。
僕自身、この映画のことは大好きだ。
しかし、これ以外にもいい映画はもちろんある。
それを差し置いて、「大傑作」だ。
といってしまうのは、あまりに暴論すぎる。

いろんな前評判が、憶測を生む。
見ていない人にとっては
「どれほどの高級料理がフルコースで出てくるんだろう」と
一流のシェフが、最高の素材を惜しみなく使う
そんな料理が出てくるんだろうと、妄想するだろう。

いや違うんだ、ちょっとまってくれ!

出てくるのは家庭料理だ。
でも、店長の想いが溢れる味わいが愛おしい。
材料は不揃いだ。
でも、一つ一つが自分に食べられようと向かってくる。
店内は狭くて、入りにくい。
でも、店員さんは常に自分を気にかけてくれている。

それがこの料理を、いや映画を、傑作にしているのだ。

現代において「食べログ」は
本来の味さえも塗り替えしてしまうような
そんな力を持っているとさえ思う

あなたは「食べログ」の答え合わせをする人だろうか。
それとも「料理本来の味」を愉しめる人だろうか。

これは私のエゴだが、出来ることなら
料理を素直に「美味しい」といえる人でいてほしい。
本当に、人間の真心の詰まった美味しい料理なのだから。

さて、映画的な話をするとすれば、
この映画の魅力はまさに「人力」で作られているところにある。
サインを貰う際に、俳優の諏訪ただゆきさんが何気なく
「この映画は、本当に人で作っているようなもんスからねぇ」
と言っていたことが、心の中に響いた。
なにか、モノを作ったことのある人ならわかる。

この映画を作ろうと言ったやつは相当やばい。

そして、作り上げた奴らは、もっとやばい。

その賞賛によって、多くの賞を受け取っているのだろう。
当たり前だ。と思うくらい人の力があふれる作品だ。

そして、マーケティング的な話をするならば、
この映画の魅力である「情熱と愛」を最大限に活用している。
とてもパッションの溢れる映画だ、
誰しもが見た後に「なにかしたい!」と感じるだろう。
制作意欲が高まる。モチベーションになる。
しかし、そんな想いを昇華させる「モノ」がない。
そんな時、何をするのか。
人はTweetをしてしまうのだ。

更に、映画を見た後に畳み掛けるように出演者の挨拶が入る。
如何にこの映画を愛しているかが、ビンビンに伝わる。
そこまで愛を伝えられてしまっては、こちらも感化されるものだ。
自分も、愛をもってこの映画に向き合おうと思う。
スクリーンから、目の前に出てくる人が
観客ひとりひとりの目を見て「ありがとう」というのだ。
愛だよ、愛。
「神対応」をするアイドルが、売れっ子に躍り出るように
この映画に対しても「好き」という感情に
そして「応援してあげたい!」という感情に
自分のマインドが、移ろうのであった。

最後に「ネタバレ厳禁」という言葉だ。
ちなみに、一つ言ってしまうと
ネタバレされたとしても、全然楽しめる。
どんでん返しのような部分以外の良さに溢れている。
しかし、そこで、「ネタバレ厳禁」なのだ。
今までの話の流れで「情熱」に感化され
「応援したい!」と感じる自分にとって
Tweetするのは当たり前だ。しかし
「ネタバレ」だけはしてはいけないのだ。つまり
情熱と、好意に溢れた、謎のTweetが
TL上に溢れる。これはおかしい。
見たことないし、話したこともない、その人。
しかし、どうやら皆が好きになっているのだ。
そしたら、どうする?
会ってみるしか無いだろう。
自分がこの目で、確かめるしか無いだろう。

と、いいつつ、だ。
そこまで計算され尽くしていないと思う。
ただ、ただ、作品を愛するがあまり
舞台挨拶に行きたいという出演者がいて、
内容は話してほしくないな~というスタッフがいて
ただ、それだけなんじゃないかな。と思う。
だからこそ、強いのだ。
再三再四の話になってしまうが
この映画は「造り手側の努力と、情熱と、愛」の結晶だ。
同じプロジェクト内にいたとしても、
これほどまでにモチベーティブなチームは無いだろう。
作り手の愛があふれると、これほどまでに
奇跡的な化学反応が起きて、ムーブメントになる。
ただ、それだけの話しなのだ。

さて、この料理はチェーン展開されるらしい。
少々味が薄くなってしまうかもしれない、
その恐れは感じてしまうものだ。しかし、
だからこそ、今、前評判を取っ払ってほしい。
耳をふさげ、目を瞑れ、劇場までの足を止めるな!
あなたが、その舌でこの料理を堪能出来ることを
心から願っております。

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