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6月に読みたい、わたしの本棚

6月に入って30度近い日が続いていますね。暑さにめっぽう弱いわたしはすでに瀕死の状態なのですが、本格的な夏が来る前に「梅雨がある」と思うと、まだほんの少しだけ生き残れそうな気がしています。

気圧の変化にやられがちではあるのですが、雨の気配だったりとか、音とか、匂いとか。とてもすきです。特にすきなのは雨の日にお散歩すること。傘のなかの閉じられた世界で、雨音だけを聞きながらぼーーっと歩いてると、あたまのなかがいろいろと捗る気がするのです。

毎年、6月に入ると新海誠監督の『言の葉の庭』を観るのが恒例になっています。すきな映画はBGMにしながら観がちなのですが、この作品は逆に音なしで観るのもいいですよね。

観るたびに新宿御苑のお散歩に行きたいなあって思ってしまいます。ますますひきこもりが捗りそうな夏なので、今月新宿あたりに用事があるようなら行ってみたいと思います。

6月といえば梅雨。雨。のことばかり考えてしまうので、今月読みたい本もやっぱりそれに関するものを。

『号泣する準備はできていた』江國香織

わたしが知っている作家さんのなかで江國さんほど、雨が似合うひとっていない気がします。

直接的に雨が出るかどうかではなく、雨の降る夜につらつらと浸るのがほんとうに心地よい作品が多いんです。ちょっとお酒もあるとなおかつ最高。独特の言い回しで世界観にぐっと引き込んでくれることや、全体的にしっとりとした雰囲気が漂っているからなのかもしれません。

江國さんはエッセイもだいすきだけど、雨のときはとことん世界に浸りたいから断然小説がおすすめです。なかでもわたしがいちばん雨の日に手に取るのは『号泣する準備はできていた』。

12編からなる短編集は、どのはなしも「かなしさ」がベースにあるようなものばかり。でもあからさまじゃないんです。さりげないの。それが良い。

特にいいなと思うのが「熱帯夜」のワンシーン。

「言ってごらんなさい。何が不満なの?」
片方の肘をカウンターにつき、その手を頭で支えている。とてもほんとうとは思えないくらい、特別できれいだ。
「何も」
私は微笑んでこたえて、
「あるいは、何もかも」
と言い換える。
「だって、私たち行き止まりにいるのよ」

この閉鎖感のなかにあるつまらさなと諦めと幸福が入り混じっている感じにね、どっぷりと浸るのが江國さんの小説の楽しみかたなんじゃないかなと思っています。

ぜひ、しとしと雨の夜に。

『雨やどりはすべり台の下で』岡田淳

小学生のときから読んでいる一冊。岡田淳さんは小学生が不思議な世界をのぞいてしまう物語をたくさん描かれているのですが、どれもほんとうに素晴らしくてわくわくさせてくれて、とてつもなくだいすきな作家さんです。

この物語は、同じマンションに住む小学生たちが主人公。

ある日、みんなで遊んでいると同じマンションの住人である雨森さんが通りかかり、晴れているのに突然傘をさすのを見かけます。その瞬間、どしゃぶりの雨。

いそいで大きなすべり台の下に潜り込んで、雨やどりをしているうちに、雨森さんがもしかしたら「魔法使い」なんじゃないかともりあがり、それぞれが雨森さんに関するふしぎな話をし始めるのです。

雨森さんから渡された鍵でマンションの部屋を開けると海になっていた話や、そこで出会った女の子の話、チョークを口にくわえた鳩が空に真っ白い飛行機雲を描いた話……。

雨森さんが直接関わっているかはわからないけど、人に話したら「変な子」って言われそうで黙っていたちょっとふしぎな話がどんどん出てきて、そのたびに、少しずつみんなの心の距離が近づいていくような気がしてほっこりします。

最初は冷たくてこわい人だと思っていた雨森さんのいろいろな一面が見えてくるのも、嬉しい。

とっても優しくてあたたかなお話。わたしにもこんな素敵な雨の日が訪れたらいいのに、と思います。

***

朝からしとしと雨の日はお仕事はほどほどにしてゆっくり本が読みたいし、夕方から土砂降りの日はここぞとばかりに買ってある雨靴でぴしゃぴしゃと歩きに出かけたい。

雨の月も楽しみながら過ごせたらいいなと思います。

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雨の日をたのしく

もっともっと新しい世界を知るために本を買いたいなあと思ってます。