何度フラれても、きっと私は。(後編)
彼のことは思い出さなくなってきたけど、恋愛となるとなんでも彼と比べてしまった。おかげで1ミリも彼氏ができる気配はなかった。
かといって彼の元へ戻れるかと言われると否。完全に思い出の中の人になっていた。
春のせいかな
急に暖かくなってきた2月の末。
寒いのがセクハラおじさんより嫌いな私は、春の陽気に気分上々、夜道をスキップして帰っていた。
そしたら急に彼に会いたくなった。(前言撤回するの早すぎる)
彼と会う時もこれくらい気分が良かったからかな?明確な理由はないのだけれど。
あれだけ「会わない!」「連絡しない!」と決めていたのに、なんと決意の緩いこと。まあかなりの時間が経っていたし彼に未練なんてない気がして、自分に甘くなってしまった。
とにかく今まで非表示にしていたトーク履歴を開き、メッセージを打ち込む。私とご飯行ってください、なんて、過去の無礼を詫びたような何事もなかったかのような、アンバランスなメッセージ。
その前に送った「お世話になりました!」にはまだ既読がついていなかった。
時間をかけて送ったのに案外すぐに返事が来た。
「どうした、なんかあった?」
どこまで優しいのか。いや、優しいわけじゃないかもしれないけど。
自分から連絡したくせに、地獄の入り口を開かれたような気がした。返事が来てしまった、救いようのないこの状況に、どこかで喜びながら絶望している私がいた。
結局彼と会うことになった。
彼女はできたのかな、新しいセフレを見つけたかな、他の女からアプローチされているかな。
私が別れを告げた時に向こうからはなんの連絡もなかった。この意味はなんとなくわかる。彼は私がいなくても平気ってこと。
だから向こうが今どんな状況だろうと、今日も彼が受け身な態度だったら、会うのは最後にしようと思っていた。
これで最後
会ってすぐ、急に会いたくなった理由を聞かれた。
理由はないよ、ただ思い出しただけ。そう答えた。ほぼ事実だし。
今度は急に絶交宣言した理由。
理由はないよ。そう答えたかったけど、嘘が下手な私はなにも言えなかった。
彼がしつこく聞いてきて、耳にオクトパスだったので正直にTinderで見つけたことを伝えた。
「彼氏でもできたのかと思った」
そう言われた。それができてたら今ここにはいないよ。わかってないね、私のこと。
やっぱりこれが最後だと思った。だから彼の家に行って、彼のベッドに入った。彼の腕の中でキスをした。
前に、締まりが緩いと言われたことがあった。
「まだガバガバかもよ」と笑ったら「そんなに遊んでるの?」と彼。
「どうだろうね。ヒミツ。」
彼の常套手段。先手を打った。暗くて彼の顔はよくわからなかったけど、最後だもん。別に本当のこと言う義理はないから。
私「最近した?」
彼「うーん、年末かな」
私「楽しかった?」
彼「別に」
彼が具体的に答えたのは正直意外だったけど、誰とやったとかそんなのどうでもいい。だってもう会わないもん。これが最後だもん。
最後、これが最後。
気づいたら涙が溢れていた。暗い部屋だから彼にはまだバレていなかった。
だけど、彼の抱き方が懐かしくて、もう離れたくなくて、悔しくて苦しくて情けなくて、この7ヶ月抑えてた感情が涙に変わっていった。
涙って抑えると余計溢れるよね。不思議。
彼が私の頬にキスをした時、泣いているのにやっと気づいた。お前のせいだよ。バカ。
「ごめん。そっちが遊んでるみたいだったから、見栄張った。年末遊んだっていうのはウソ。」
なんだその見当違いなフォロー。
そんなことで泣いてるんじゃないよ私。今更そんなこと気にしてないもん。
泣いてる理由も知らないなんて、やっぱり私のこと全然わかってないね。
「私、遊んでなんかないよ。あれから一回も。」
「…ずっと好きでいてくれたんだね」
あなたって、そんなに優しい言葉を言える人だったんだね。ここまでずるい人だと思わなかった。
私こそ、あなたのこと全然わかってないや。
おかえり、バカな女
事後、「正直に言って」と言われた。
以前告白したのは私が酩酊状態だったことによりノーカンになっているらしい。
正直に言ったら変われるのかな?
「好きだよ」
彼の返事は前と変わらなかった。
バカだよね。
変わるなら、絶交しようとした時点でとっくに変わってるよ。
わかっているのにまだ期待してしまう自分がいる。
彼の言葉は全部が全部辛いものなわけじゃなかった。
私が離れていってショックだったこと、当時私のことを大事に思っていてくれたこと、今誰とも仲良くしていないこと。
泣きすぎて記憶が曖昧だけど、
「待っていてくれるなら嬉しい」なんて言われた気もする。
騙されているのかもしれないけど私にとっては嬉しい言葉。
おかえり、バカな私。見る目のない私。都合のいい私。
色鮮やかで、でも乾ききった日々がまた始まる。
洗面所の台の奥のピンクの歯ブラシ。私はいつまで見えないフリして笑えるのかな。
終わりに
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この恋は、おそらく叶いません。
それはさすがに私でもわかってきました。
それでもやっぱり彼の近くにいられるうちは、何度フラれてもきっと彼のことを待ち続けると思います。
まだ彼が振り向いてくれると期待しているのか、いやもう意地になってるだけなのかも。
次に彼の話をするときはどんなドラマが待っているんでしょうか。
せめて私も彼も、笑って終われたらいいな。
こんなに愛されてること、少しは感謝してくれてもいいのにね!!!!
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