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忘れ物を忘れました

小学生の時は、よくいろんなところにいろんなものを置いてきて、親に怒られてばかりだった。


こないだ好きな人との別れ際、「AirPods Pro持った?」と聞かれた。
念願のAirPods。もらった経緯が面白かったこともあって散々自慢していた。

あ、置いていけばよかった
急にそんな考えが浮かんだ。

かれこれ10回以上会っているけど、一度も彼の家に何か置いてきたことはない。なんならゴミまで持ち帰る時もある。
小学生の私が見たらひっくり返るな。

彼の家に何か置いてくれば、毎回「これが最後かもしれない」「もう会えないかもしれない」なんて考えることはなくなるのに、私の中で“忘れ物”はタブーになっているからできない。


仮に私がなにか忘れ物をしたとする。
きっと好きな人は気づいて、LINEをくれる。

「今度来た時、持って帰りな」

「日曜日に取りにいっていい?」

どっちからどう提案するかはわからない。だけど確実に会うことになる。次に会う確信ができて、私は余命が5年延びるくらい安心できる。

じゃあなんで忘れ物をしてこないのか。


まず、この再会に価値はあるのだろうかと思ってしまう。

向こうから誘ってきたとしても、それは忘れ物を返すため。私と会うのはついでにすぎない。

優しさだけの誘いはいらない。
理由がある約束もいらない。
もう、「ただ会いたい」の感情で会うことしか受け入れられない、わがままな女になってしまった。


そしてこれは良心というか、完全に自己満足なのだけれど。

「わざと忘れ物をする」という行為自体が、ダサく感じる

たとえ「あわよくば」とか「もしかしたら」という淡い期待だったとしても、確信犯だったとしても特に変わらない。

好きな人と会いたければ、「会いたい」と言えばいい。

確かに、追われる女はわざとあざといことをするのかもしれない。追われる女になるには、それくらいやって当然なのかも。
けど私のことを私がダサいと思ってしまったら終わりなのでは??回りくどいことをするのはキャラじゃないと、プライドが邪魔をする。

好きな人に好かれるより私が私を認めることの方がよっぽど大事だ。好きな人はいなくなるだろうけど私はいなくならない。

私がダサいことやって、好きな人が離れて行った時、誰が私を慰めるの?

好きな人によく見られたくて嘘をつくことは認める、けど好きな人を騙すのは認められない。


「もちろん!新品のAirPods忘れるバカがいるかよ」
と笑ったら
「なーんだ、売ろうと思ったのに」
と君が笑った

それでいい。

今日も忘れ物するのを忘れた。

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