若松英輔さん「言葉のちから」偶然と運命について〜九鬼周造の思索/日本経済新聞2023.12.2
日本経済新聞土曜の若松英輔さんのエッセイ「言葉の力」を毎週楽しみに読んでいます。
12.2は「偶然と運命について」
「運命」について、若松さんは「人生の創造の可能性」を説きます。
まずリルケの書簡に触れ、「生きるとは運命を開花させることである」とし、「抗えない運命」というよりも「それぞれの人生に託された神聖なる義務のようなもの」と捉えます。
続いて、「命」という言葉について。
宿命について定義し、「使命とはおそらく、天命を自覚し、おのれの宿命を受け容れたところに生ずる人生の確信のようなものではあるまいか。」とします。
最後に、九鬼周造さんのラジオ講演「偶然と運命」から下記を引用し、運命を受け容れ、人生を創造する姿勢について述べられます。
天災、戦争のような大きな事象でなくても、身近な人生における出来事(学校生活や受験、仕事、人との出会い、別れ、結婚、出産、病気、死など)が、何かに誘導されているように感じることがあります。
人生の流れの中で何度か訪れる、つらく、逃げ出したくなる時期への考え方として、逃げの姿勢ではなく、受け容れた上で、自らの人生を創造していく姿勢は、漸近線のようですが、理想的です。
自分の人生を考えた時、「受け容れる」ことを「渋々」ではなく、「前向きに」が重要だったのだろうと振り返ることがあります。
ただ、その時には気づけませんでした。
渋々受け容れるぐらいなら、いっそモームの「月と6ペンス」のストリックランドのように「勇気を持って道を変える」という意思決定も一つの選択肢だったのかな?と感じる時もあります。
人生で迷った時、いつも本のある空間で考えるようにしてきました。
読書が「本の中に散らばるドラゴンボールを集めるようなもの」だと感じながら、集めた言葉や考え方を自分のものとして咀嚼し、考え、与えられた課題を一つ一つ解決していくのは楽しい作業です。
必要な言葉や考え方を集め続ければ神龍があらわれるのかどうかはわかりませんが、
「運命を受け容れ、自分のものとして創造する」
間違いなく、集めるに値する、印象的な良い言葉でした。
P.S.
若松さんが文章のクオリティを落とさず、毎週継続して連載しておられることに驚きます。
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