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なぜロボットは動物を追い越せないのでしょうか? サイモンフレーザー大学

人間は何十年も巨額の研究費を投じ、動物のように歩いたり走ったりできるロボットの開発を試みてきました。しかし、現存のロボットは、多くの動物が達成しているような離れ業には到底及びません。

サイモンフレーザー大学のマックス・ドネラン教授(生体医用工学・運動科学)はこう言います。「ヌーは荒れた地形を数千キロも移動し、アイベックスは垂直に近い崖を登り、どこに足場があるのかさえわからないようなところを掴んでよじ登ります。ゴキブリは脚を失っても動きを止めません。このような持久力、敏捷性、頑丈さを備えたロボットはまだ存在しません。」

では、なぜロボットは動物に遅れをとっているのでしょうか? そしてその差はどのくらいあるのでしょうか? 研究者とエンジニアのチームは、ロボットの走行能力の様々な側面について詳細な調査を行い、動物と比較しました。その結果がScience Robotics誌に掲載されています。

興味深いのは、エンジニアが用いる基準で比較すると、動物の生体部品は人工部品に比べてパフォーマンスが劣っていたことです。動物が優れているのは、これらの部品を統合し、制御する能力にあります。

ドネラン教授に加え、研究チームはワシントン大学電気・コンピュータ工学部のサム・バーデン准教授、SRI Internationalのトム・リビー上級研究員、コロラド大学ボールダー校機械工学部のカウシーク・ジャヤラム助教授、ジョージア工科大学のサイモン・スポンバーグ物理・生物科学部教授が参加しました。

各研究者は、ロボットの走行に必要な5つのサブシステム(動力、フレーム、駆動装置、センサー、制御)の一つを調べ、動物のそれと比較しました。以前は、動物がロボットに勝るのは生体部品の優位性によるものと考えられていました。

「わずかな例外を除いて、エンジニアリングされたサブシステムは生体部品を凌駕しています。場合によっては圧倒的に優れています。」とリビー氏は述べています。「しかし、動物とロボットを全体的な運動能力で比較すると、動物は驚くべき能力を発揮します。ロボットはまだ追いつけていません。」

しかし、ロボット工学の未来は必ずしも暗くはありません。ロボット工学が技術を開発してきている期間は、何百万年にもわたって進化してきた動物に比べればごくわずかです。

「進化は無指向性なので、より速く進むことができます。」とバーデン氏は言います。「ロボットは設計を修正し、1体のロボットで学んだことを他のロボットにダウンロードすることができます。生物にはそのような選択肢はありません。つまり、ロボットを工学的に進化させることは、自然淘汰よりもはるかに速く進められるのです - ただ、進化には膨大な時間がかかっているというアドバンテージがあります。」

効果的な走行ロボットは、単なるエンジニアリング上の課題以上の可能性を秘めています。人間のために設計された世界は車輪付きロボットにとっては移動しづらいことが多く、ラストワンマイル配送などの課題を解決したり、危険な環境での捜索や有害物質の取扱いに役立つなど、この技術には多くの潜在的な用途が考えられます。

研究者たちは、この研究が今後のロボット工学の発展を方向付けることを望んでおり、より良いハードウェアを作るのではなく、既存のハードウェアをより良く統合し制御する方法を理解することに重点を置いています。ドネラン教授はこう締めくくっています。「工学が生物学から統合の原理を学ぶことで、走行ロボットは、その生体カウンターパートと同じように効率的、敏捷性、そして頑丈さを備えるようになるでしょう。」

詳細内容は、サイモンフレーザー大学が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7

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