見出し画像

違和感の種が、大輪の花を咲かせる。

人との会話の中で、違和感を感じることがある。会話の内容や間の取り方、目線、表情の節々、動作などにそれは現れる。

ほんの些細なことだから、もしかしたら気にしなくてもいいのかもしれない。その違和感は見過ごすことが小さなことだから。

「ENBUゼミナール」のワークショップ「シネマプロジェクト」の第7弾として製作された作品。

知らない人にとっては、何もピンとこないこの一文。

画像1

SNSで人気に火がつき、いま話題の映画「カメラを止めるな!」を鑑賞した。上映館数が少なく、すぐに満席になってしまうため、なかなか見ることが出来なかった。しかし、すこし経って上映館数が増え、以前に比べて席がとりやすくなったので、私も最近やっと見ることができた。でも、これから見ようという方には早めの席の確保をオススメする。

どうしてこの映画が話題になっているかについては、多くの人に語られているとは思う。でも、私も私のことばで表現してみたい。

「37分ワンカットで作られたホラー映画」
この映画はホラー映画だ。1人の映画監督が多額の借金をして、ホラー映画の自主製作をする。怪しげな噂がささやかれる廃墟で、女優とゾンビとなってしまった俳優のやり取りの撮影シーンから映画は始まる。監督は、女優の演技に納得がいかず、ひどい暴言を吐き捨てる。そのとき、42テイクにまで達していた。女優の疲労はピーク。撮影を中断し、休憩を挟む。そんな中、廃墟の怪しげな噂が語られる。と、同時に、実際にゾンビとなってしまった、1人の撮影クルーのがあらわれる。「カメラを止めるな!」と監督は叫び、大喜びで撮影を続けるが、撮影クルーたちは次々と本物のゾンビと化してしまう。

この映画は、それだけでは終わらない。
それ以降こそが、話題となっている理由だ。

映像は切り替わり、「どうして、この作品をつくることになったのか?」についての物語が始まる。業界で知ってる人は知っているレベルのそこそこの映画監督の家族話であり、映画をつくり上げるために奮闘する物語だ。

この映画は、ホラー映画だけではない。ホラー映画の中で感じた“些細な違和感”を、底知れず見事なまでにこたえ
合わせをしてくれるのだ。その違和感は、見過ごしてもいいほど小さなもので、とても巧妙なこたえ合わせだ。それは爽快感さえ感じてしまうほど面白い。腹の底から笑ってしまうものばかりだ。

残念ながら、この世界は天才だけがつくっている世界ではない。どちらかといえば、多くの凡人でつくられた世界かもしれない。

凡人の立場は弱く、本音は語れない。
軽い調子で上から難題が指令される。
反発することも、面倒な状況から逃げ出すこともできない。

あらゆる手段を使って乗り切っていくしかないのだ。

私もれっきとした凡人のアラサー女だ。どこにでもいるような存在だし、残念ながら変えもきく。

華々しい経歴があるわけでもなく、
自慢出来るような特技もなく、
絶世の美女でもない。

広告の制作会社で働いていたときにプロデューサーによく言われた言葉を思い出した。

変わった経歴や華々しい経歴、ひととは違う特技を求められる職場で、「なんの特徴もなく、どこにでもいる普通のお前はどう思う?」と。

天才じゃないから、共感が出来る。
天才じゃないから、必死でかっこ悪い。
天才じゃないから、たくさん笑える。

ハートをがっしりと、掴まれてしまう。

全米は、きっと泣かない。
いま最も旬な人気の女優や俳優が主演でもない。

アカデミー賞の最有力候補でもないし、
大ベストセラーや人気コミックの待望の映画化でもない。

無名の俳優陣でつくられた、予算300万円の素晴らし過ぎる映画だ。わたしとしては、言い過ぎと思われるかもしれないけど、今乗ってる満員電車の乗客全員に見てもらいたい。(通勤途中)

この映画を見る前に、ネタバレも予告編も何も見ずに映画を見ることをオススメする。

また、この映画をエンドロールまでしっかり見ることをオススメする。秀麗な部分を、さらに感じとることになるから。

#カメ止め  #エッセイ #上田慎一郎

この記事が参加している募集

お気軽にご支援お待ちしております♡