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大企業からスタートアップへ転職する場合のリスクについて

ちょっと前にTwitterになんの気なしに書いたら軽く反響を呼んだのですが、ベンチャーがいいのか大企業がいいのかみたいな議論はずっとあります。私がここで言いたかったことは主にメンタリティについてで、まさにつぶやきだったんですが、意外と反響あったし、引用RTとか見てると全然伝わらないんだなぁという気持ちもあったのでnoteでちゃんとこのあたり書いてみようと思います。

スタートアップにリスクはあるのか

採用の面接だったり転職の相談だったりを受けているとみんなこれを言います。

「リスクがある」

おそらくここで言っている「リスク」は「会社がうまくいくかどうかわからない」ということについてです。これを言われるとスタートアップの運営側からすると「何当たり前のこと言ってんの??」という感じで全く話が噛み合いません。(だってうまくいくかどうかなんておれも知らねえし)

強く言いたいのは、あなたが感じている「会社がうまくいくかどうかわからないというリスク」を軽減させるのはあなた自身の働きです。スタートアップの醍醐味は自分の働きがダイレクトに会社の業績に反映できるダイナミックさ。自分が失敗すれば会社が傾く可能性があるし、自分が企画立案した一手で会社が上場までたどり着ける可能性だってあります。

つまり、リスクだなんだと言って、会社の運命を人に託そうとしているようなメンタリティの人は必要なくて、何が何でも伸ばせるやつが採用したいというのがスタートアップの採用側の本音です。

会社がうまくいくかどうかを「リスク」と表現するのであればスタートアップにリスクはあります。あたりまえです。誰でもうまくいくならそんなのみんなやるわ。

キャリア観点でリスクはあるのか

大企業から転職するにあたって、いまの立場を捨てることについてのリスクについても良く聞かれます。はっきりいいますが、そんなものないです。あくまで従業員としてという話で考えると、大企業をやめてどこで何しようがキャリア観点でリスクは無いです。

大企業の人あるあるですが、必要以上に自分がいる環境を「いいもの」として刷り込まれすぎて本気でそう信じているケースが非常に多いのです。一度スタートアップに移ってしまったら、同じ企業に戻ることは難しいかもしれませんが(出戻りできるところも沢山ある)似たような大企業に入れる可能性は全く減少するものではありません。また、仕事さえできれば更に別のスタートアップに転職するのもそんなに難しくありません。

「色々な企業の内情を知っている」ということと図らずもスタートアップで身につけた「なんでも出来る(やらなきゃいけなかった)スキル」はどこの企業でも求めているものです。会社が潰れたとしても、あなたの将来も一緒に潰れるわけではないのです。

むしろ企業1社経験しかない場合のほうが、出来ることがその企業に特化しすぎていて会社が潰れた場合には就職先探しが危ない可能性はあります。

お金の面でのリスク

正直、採用する側からすると、大企業で経験が浅く、何もできない人を大企業と同じ給与で採用するのは理屈に合っていません。特に10年近く大企業1社経験で1,000万を超えている場合なんかはその給与をスタートアップが出すかというと一般的にはなかなか厳しいものがあります。

一方で経験が十分にある人の場合、その経験をフックに将来的にバリューを発揮してくれればいいわけです。このあたりを勘案しつつ、給与をどうするのかというところは決まっていきます。(これはほんとにその人と受け入れ側の会社次第)

多くのフェーズの浅いスタートアップの場合、大企業からの転職では給与は下がるが、インセンティブとしてのSOを用意している場合があります。これはフェーズが早ければ早いほど成功時のリターンは大きいです。SOについては当社でも準備していて、これについて土屋が近々発表したいと言ってましたのでお楽しみに。

なぜ私が電通からGunosyに転職したのか

私自身、社会人としての最初のキャリアは電通からスタートしています。いわゆる大企業です。電通ではテレビ局という部署でテレビ番組のCM枠の買付を担当していました。在籍はちょうど3年間で、その後退職してGunosyに転職しました。

電通は広告代理店ですが、利益の源泉はCMの枠の買付による手数料をクライアントから取ることです。広告代理店の仕事のイメージはクリエイティブな企画を考えたり、イケてる営業をしたりという華やかなイメージがあるかもしれませんが、利益の源泉はかなり泥臭いものです。泥臭いとはいえ、仕組みは完全にできあがっており、「バカでもできる」くらいに業務でやることは決まっています。

自分としては華やかなイメージを期待して入社したのに、することが決まりきっていておもしろくない、もっと頭を使って仕事がしたいという理由で辞めました。

もっと残って他の仕事をみておいてもよかったのかなぁというのはたまに考えますが、タラレバの話をしても仕方ないのでまぁいいかなと思っています。

退職した理由の一つの「お金」

給与についても退職の大きな理由でした。あるとき大学の同期と食事に行った際給料の話になり、彼は外資系コンサルティングファームで私の倍の給与をもらっていました。大学時代からとても優秀な人でしたが職業選択によってこんなに変わるんだというのは私にとっては衝撃でした。

当時の電通は完全年功序列で給与差分は同じ入社年次では全くありません。残業の有無で給与は変わりますが、倍なんてことはないです。また、年功序列は先輩の給与のほうが高いのがほとんどです。まぁこういう制度が気に入らないならそんな会社入るんじゃねえっていう話ではあるんですが、当時の私にはなんだか納得がいかず、もっと「実力主義」(これも不思議な言葉ではあるけど)の環境を求めてGunosyに転職しました。

大企業からスタートアップに移ってよかったか?

これは私の結果論でしかなく、こんなnote書くくらいなのでよかったと思ってるわけですが、転職は私にとっては非常によかったと思っています。たまたま経験がいかせて、結果が出せたというところもあるので、この辺りは転職なんかやめときゃよかったという人の話も聞いてみたいです。

大企業にいた経験はスタートアップで生きるのか

冒頭のわたしのTweetで誤解される部分が多かったものの一つに、「大企業の経験なんか意味がない」という理解がありました。結論から言うと「大企業での経験はスタートアップで生かせるものは大いにある」と私は思います。あくまで例えばというところでマネジメントの罠組織構造の理解の優位性をあげておきます。

マネジメントの罠

スタートアップにおいて内部で一番最初につまづくのはマネジメントではないでしょうか。スタートアップはうまくいくと急拡大してしまうため人手が慢性的に不足し、ガンガン採用します。採用には一応のルールはあるもののカルチャーもあまりできていない会社に異分子がどんどん送りこまれることによりほぼ確実に不和が起きます。

マネージャーはこれを上手に解決する必要がありますが、マネージャーや部長、本部長、取締役などは多くの場合、ただ創業期に関わっただけということがけっこうあります。彼らはマネージャーですが肝心のマネジメントを受けたことがありません。学生起業の場合社長もそうです。

これをスタートアップにおけるマネジメントの罠と私は考えていますが、マネジメントなんか受けたこともないのにマネジメントレイヤーに気づいたらなっている。そしてやったことがないので組織が崩壊する。。。どこかで聞いた話かもしれませんが本当に多くの組織で起きていることです。

この点、大企業出身者はマネジメントを受けた経験は確実にあります。しかもかなりしっかりと会社文化も確立された組織においてです。これは意外と大きい経験です。また10年もいればマネジメントも経験している可能性があります。自分が採用したわけではなく、自分がつくったわけではない仕事を部下とうまく回していくという経験は未熟なスタートアップにおいてはうまく使えば大きな武器となります。

組織構造の理解の優位性

スタートアップはヒト、モノ、カネのビジネスで重要な3要素すべてが不足しています。スタートアップの成長の一つのパターンに大企業とアライアンスを組んで事業を垂直立ち上げしていくというものがあるかと思います。

ここにはかなり難しい問題もあります。一番はスピード感でしょうか。少人数ですぐに(例えば会議中ですら)意思決定ができるスタートアップと何人もの承認をとらなくてはならない大企業では確実にスピード感に乖離が生まれます。お互いにここの理解がないと、スキーム上はいい提携であったとしても流れてしまうことはよくあります。

大企業において承認作業は何人もの前を通るうちにどんどん内容が変わってしまうというのもよくあります。大企業で働いたことがあればこれはカンタンに想像がつくのではないでしょうか。

一方で、大企業の組織構造をきちんと理解していれば、誰を押さえれば話はスムーズに進むのかということがわかります。決裁権者が誰で現場はどこを押さえればいいのかという勘所があるかないかで提携自体の成否は90%以上決定します。この組織構造の体感としての理解はずっとスタートアップにいる人にはなかなかできないもののようです。

大企業からスタートアップに移って驚いたこと

当時のGunosyは社員20名のうち7割近くが東大出身という異常な環境だったこともありますが、社員が本当に優秀で驚きました。また、スタートアップのような何も足りているものがない環境に放り込まれたときの自分の仕事のできなさにも驚きました。

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仕事ができなさすぎて転職していちばん最初の仕事はドラの組み立て。「なんでドラが会社に届くん??アホなんかこいつら」という気持ちでドラを組み立て。

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ガラガラのオフィスにバカでかいドラ。このガラガラのオフィスも人員増ですぐに移転。1年弱しかいなかったかも。

「仕事はつくるもの」電通でそう言われていましたが、実際仕事は3年目なんかではあまりつくることは出来ず、用意された仕事をこなすだけです。しかしGunosyに入ったら担当以外の仕事もどんどん任されますし、それを進めるうちにやらなくてはならないことがでてきても誰もそれはやってくれないので自分でやるしかありません。

これも超あるあるかもしれませんが、大企業出身者は契約書を交わした経験がないことがあります。実務は担当していたが、契約詳細は丸投げで法務がやってくれてたとか、そもそも契約書自体あることもよくわからんというのはけっこうあります。スタートアップだと契約書の内容次第では会社の存続にかかわる可能性もあるのでちゃんと実務に照らした内容になっているか等々確認しないといけなかったりするけど、大企業だとほぼ必要かったり、一方的に不利な条件を相手に押し付けても大企業であるが故にそれが通ってしまうという力関係があったりするかもしれません。いずれにせよ、契約書が読めない、巻けない大企業出身者はけっこういます。

私は電通の在籍3年間では法務チェックをきちんと経るような契約書を交わした経験はありませんでした。

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Gunosyの送別会の写真。24番目の社員として入ったGunosyは退職時には250名程度の規模に。この日のことは飲みすぎて一つも覚えてない。

組織が全くできていないことにも驚きました。組織もなければ制度も文化もなにもない。完全なるカオス状態でした。逆に言うとここを楽しめないとスタートアップには向かないかもしれません。

大企業、スタートアップ結局どっちがいいの?

「自分で決めろ」としか言いようはないですが、メリット・デメリット両方あるのは間違いありません。「リスク」についてどう自分が考えるのかという点が一番重要なところなのかもしれません。

一時的にでも目の前の給与が下がるリスクが気になるなら絶対に大企業に残ったほうがいいでしょう。しかし、仕事の楽しさや組織、カルチャーを作るというのはスタートアップの醍醐味でもあります。金銭的なリターンを求めるのであれば、早期のタイミングのスタートアップに入って生株やSOをガッツリ持ってIPOを目指すのは大いにありだと思います。うまくいけば安定した会社員では何年かけても得られないようなキャッシュイン狙える可能性は大いにあります。そしてこの可能性をつくるのはあなた自身です。

個人的には気になるならトライしてみるというのはありなのでは?と思います。正直私が相談を受けるレベルでは相談者が「リスク」と捉えていることは大したリスクではない場合がほとんどです。

なんかもし転職を決めたらローン組んだほうがいいとかそういう話も書こうと思っていましたが思った以上に長くなってしまったのでこのへんで。

そんなスタートアップのノインでは積極採用中

ぶっちゃけ組織、文化、制度どれも頑張ってますがまだまだ整っていません。ここに文句言うならやめたほうがいいですw 一方でこれを一緒に作りましょう!というのが我々のいまのスタンスです。文句があるなら自分で気に入ったものを作っちゃってください。

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ノインにも千葉が個人でドラを購入。Gunosyよりやや大きいサイズです。いいことがあるとドラを鳴らせます。これは社員に第一子が生まれたとき。

採用ポジション等々の詳細はこちら

追記

ドラが欲しいとちょこちょこ言われましたが、でかいドラはけっこう値段がします(ノインに置いてあるので20万くらい)。これは初心者にはハードルが高い可能性があるのでとりあえず小さいものからトライしてみるのはありかもです。


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