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カフェバーを開く。

いつかカフェバーを開くときのために、食品衛生責任者の資格が欲しい。
そう思ってから、もう随分経つ。

いつかカフェを開くときのための準備は、少しずつ進んでいる。
手始めに買った「カフェをつくりたい人の本」には、「食品衛生責任者の資格は、所定の研修を受ければ認定される」と書いてあった。
私のような忙しい社会人がスキルアップするのにうってつけの資格である。

「路地裏であまり流行らない道楽カフェを経営し、昼間は好きな音楽を流して客と雑談しながら冷めてもやや美味しい珈琲を淹れ、夜はライブバーとしてお酒も出したりしながら友人とライブをする」のが人生最大にして最後の目標である。

そして、そのための第一歩が「食品衛生責任者」の資格なのだ、と勝手に位置付けている。
この資格さえあれば、自分の店で食品を扱えるんだから、大したもんだ。
鬼に金棒、悟空に如意棒、生田にIHクッキングヒーターである。

先ほど述べた通り、店のイメージは固まっている。
この先は実際の経営に目を向けよう。
ありがたいことに、安定した収入が得られる職に就いているので、資金面は問題ない。

だがしかし、ここで問題が発生する。

私は料理が苦手だ。しかも、お店の経営なんてよくわからない。

様々なジャンルの音楽を聴くため、音楽の趣味は悪くないと思うが、一番好きな「アイドルの曲」が流れるカフェは、秋葉原かサンシャイン栄あたりにあるもので十分だろう。深川麻衣が店員として雇われたりしていない限り、聖地にもなり得ない。
経営戦略としてアイドルを推していくのは、得策ではなさそうだ。

ここは、共同経営者を探すしかない。

幸い、「カフェバーを経営してみたいかどうかはわからないけど、料理も得意で珈琲も好き、人脈もあり、音楽の趣味もよく、自分でもライブでベースを弾き、シムシティのようなシュミレーションゲームが好き」という、うってつけの人物を知っている。

経営の主体は彼に任せよう。

私はCEOとして、気が向いたときに手伝って、好きな音楽をリクエストし、カウンターの中で挽きたての珈琲に慣れた手つきでお湯を注ぐ友人と談笑する。

ここまで妄想して、ふと気づく。

私は、客の方が向いている。


そういう無責任な考えがどうしても最終コーナーでよぎってしまうので、いつも「最後の一歩」が踏み出せないのだ。

こうして、「カフェをつくりたい人の本」は、今日もまた少し埃をかぶる。
いつかその時が来るまで、もう少し待っていてくれ。


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