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12/9 billboard classics 小室哲哉 兵庫・西宮公演 ライブ・レポート 後編

2022年12月9日(金) billboard classics 小室哲哉 Premium Symphonic Concert 2022 -HISTORIA- 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

出典:上・小室哲哉公式インスタグラム、下・ビルボード・クラシックス公式インインスタグラムより   

 後半の1曲目は、戦国時代を背景に上杉謙信と武田信玄の対決を描いた、角川春樹監督の映画「天と地と」のサウンドトラックより「炎」(1990年に劇場公開)からスタート。これぞオーケストラの醍醐味ともいうべき管楽器とストリングスの響き、ハープの彩りと打楽器のインパクトに圧倒される。戦乱の世の激しさ、張り詰めた空気感が伝わる様な重厚さと物語の壮大なスケールが感じられ、一気にその世界観の中に没入していく。

続いて同映画のイメージソングであった「天と地と~HEAVEN AND EARTH~」の旋律を奏でる小室さん。情感たっぷりの歌唱がはじまる。途中、カノンのメロディが漂い、フルートが導いていく。映画で見た情景が脳裏によみがえり、その切なく、儚い雰囲気を纏ったまま音楽が続いていった。

 3曲目は「DEPERTURES」。言わずと知れたglobeの名曲であり、1996年の第38回日本レコード大賞受賞曲。オリコン歴代シングルランキングでは不動の15位、約230万枚の売り上げを誇る、現時点でのglobe最大のヒット曲。JR SKISKIのTVCMソングでもあり、J-POPの冬の代表曲といっても過言ではない。幾度となく演奏されてきたこの名曲も今回は特別感が倍増していた。小室さんの弾くMoogの音色と、オーケストラならではの重なりがとても新鮮に感じられる。そこにフルートの凛とした、かわいらしい音色が花を添えていた。

 そしていよいよ、ゲストボーカルのBeverlyさんが登場。ステージ下手(しもて)にたたずみ、時折、小室さんや指揮者の藤原さんとアイコンタクトを交わしている様子がうかがえる。
 静かにglobeの「FACES PLACES」。ハープの音色が聴こえる。Beverlyさんの歌は序盤ではあえて静かに抑えた印象ではじまり、高音部のサビはオーケストラに決して負けない、まっすぐな力強さへと切り替わる。その強弱の対比が素晴らしい。そして小室さんのピアノと絡み合うオーケストラとのハーモニーが美しく、そこにBeverlyさんの澄んだハイトーンボイスが小室哲哉楽曲の世界をよりビビッドに明確に縁取っていく。奥行きを感じさせる演奏に会場の雰囲気も一層の盛り上がりを見せていた。

出典:ビルボード・クラシックス公式インスタグラムより

 小室さんがBeverlyさんを紹介し、続いて「GooD LucK」。1995年発売の篠原涼子with t.komuroの楽曲であり、アニメ映画「ストリートファイターⅡ MOVIE」のエンディングとなった作品。同映画のメインテーマでありダブル・ミリオンのヒット曲として名高い「恋しさと せつなさと 心強さと」のシングルCDのカップリングに収録されている。実は、当初「GooD LucK」を同映画のメインテーマとして作成していたという逸話があり、歌詞もメロディも心に残る隠れた名曲。「ラーラーラー」ではじまる冒頭、そして勇気づけられるフレーズをひときわのびやかに歌い上げるBeverlyさん。

 小室さんの楽曲、そして歌詞は、時代を感じさせず古びないことが今回のこのオーケストラでのコンサートでもまた立証されている。
芸術とは、作品の創作と鑑賞によって精神の充実体験を追及する文化活動と定義されている。音楽もそのひとつとして芸術の一分野に包括されているのは言うまでもない。広くアートとしての基準や価値の概念は、一例を挙げれば、近年のデジタル・アートの登場など、世の中の新しい潮流によって変わっていく部分もある。しかし、普遍的なものは作り手の揺るぎない個性だ。

 オリジナリティが確固たるかたちを表している小室さんの作品は、その膨大な蓄積と多くの人から支持された実績からAIの研究対象となるほどに年々その価値を増し、音楽史の年表に今後も記されていく。
 これから近い未来、例えば仮想空間でのライブが定着していっても、根幹にあるものの輝きやクオリティの高さがコンテンツの鍵になることは変わらない。そして、今回の小室さんの楽曲とクラシックとの融合のように、そこにきらめくような有益な化学変化が起きることも大いにあり得る。

 小室さんがAIやメタバースについてのプロジェクトに積極的に関わりつつ、クラシック音楽との再構築にも挑戦していくという姿勢は、対極にあるものをとり合わせているようで不思議な面もある。しかし、TVのインタビューでご自身が語られているように、これまで長年培われてきたものに加え、得意分野の方向性と現在の新たな取り組みとの部分的な共通項は合致している。当たり前といえばそうだが、その共通項とはもちろん「音楽」。国境をも越えられる、冠たるものを持つ小室さんだからこそ、真逆とも言えるジャンルの高い垣根を悠々自在に飛び越えられるのだ。

 続いて、お待ちかね、西宮公演のみのゲスト・キーボードプレーヤーの登場。小室さんの愛弟子である浅倉大介さんが紹介され、盛大な拍手とともに迎えられる。
小室さんと浅倉さんは「PANDORA」として音楽ユニットを結成しており、ご存知の通り、代表曲の「Be The One」は「仮面ライダービルド」の主題歌として大ヒットを遂げている。今回は久々に浅倉さん、そしてBeverlyさんというオリジナルメンバーでの演奏となった。「この3人で瞬間、『PANDORA』というユニットをやっていまして。」と紹介する小室さん。とても貴重な再集結の機会であることを実感する場面だった。

浅倉さんは小室さんのブースに入り、小室さんはなんとショルキー(Tetsuya’s mind control)を装着。オーケストラにショルキー!小室さんといえばショルキー!その姿が観られるのはファン冥利に尽きるといっても大袈裟ではない。東京公演ではなかった演出。曲の途中で浅倉さんが客席に手拍子を促すと、それに応えるオーディエンス。ステージとの一体感が増し、会場がさらに興奮の渦に包まれた。

出典:ビルボード・クラシックス公式インスタグラムより

 浅倉さんとBeverlyさんがステージから離れたあとは「I’m proud」。華原朋美さんの名曲。元の楽曲もハリウッド仕込みのオーケストレーションの響きが素晴らしい曲であり、今回のアレンジも期待を裏切らない。壮大で切ない、めくるめく展開に心が揺さぶられる。楽曲のよさを改めて実感すると同時に、まるで歌詞をも聴こえてくるかのような印象を持つ。

 そして安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」。弦楽器が水平線を描くようにはじまり、フルート、トランペットが重なっていく。そして、クラシカルなアレンジに小室さんのアナログ・シンセのカテドラルの澄んだ音色が心地よい。この曲もヨーロッパの古城か大聖堂の中で聴いている気分になり、しばしの間、身も心も瞬間移動し、架空のきらびやかなステンドグラスやゴシックの建造物とリアルなオーケストラの音色に包まれ、至福なひとときだった。
 
 ここで本編が終了し、共演者を紹介する小室さん。続いてアンコールとなり、浅倉さんが再登場。12月という季節に合わせて、ソロ曲の「Christmas Chorus」。ショルキーをたずさえ、スタンドマイクの前に立つ小室さん。ベルの音が響く前奏のアレンジにワクワク感が増す場内。どこからともなく手拍子がはじまり、浅倉さんも笑顔でシンセを奏でていて、とても楽しそう。小室さんの歌唱もとてものびやかに、心に残る素敵な締めくくりの曲となった。

出典:ビルボード・クラシックス公式インスタグラムより


さらにショルキーで上手(かみて)から下手(しもて)に「おでかけ」する小室さん。「もろびとこぞりて」が間奏にちりばめられ、ラストはオーケストラでの豪華で美しい「きよしこの夜」。会場は一気にクリスマスムードに染まり、得も言われぬ高揚感に包まれる。
コンサートの前にTwitterで小室さんが「クリスマス・ソング、大ちゃんとやれたらキラキラですね!」と投稿されていたが、文字通り、予告通り、会場中がキラキラと光り輝く空間だった。西宮公演ならではのこの特別であたたかな演出に、いつまでも盛大な拍手が鳴りやまなかった。

出典:ビルボード・クラシックス公式インスタグラムより

追記:その1
オーチャードホールでの東京公演同様、西宮公演でもファニコンのTETSUYA KOMURO STUDIO会員には小室さんのスペシャル・ポストカードのプレゼントがありました。コンサート来場者への素敵な記念となっていました!!

追記:その2
この日は金曜日。公演直後にファニコンでの「TK Friday」の生配信がありました。コンサートの疲れも見せず、小室さん、浅倉さん、Beverlyさんのお三方が登場して下さり、楽しい雰囲気(お肉を待ちながら…)のアフタートークが繰り広げられたことを記しておきます。

<TK's Costume>
 今回の小室さんのお衣装は11月27日のBunkamura オーチャードホールでの公演と同様に、ベビー・ピンクのフロック・コート風ジャケットとワイドパンツ、そして胸元・袖にフリルが贅沢にあしらわれたかわいらしいブラウスというコーディネートでした。おそらくオーダーかと思われます。小室さんは今までにも時折ピンクのジャケットをお召しになっていることがありますが、とてもよくお似合いですね。
そしてゲストボーカルのBeverlyさんは小室さんと相対するように目の覚めるようなブルーのパンツスーツ、白のフリルのブラウス。浅倉さんは黒のオリエンタルなセットアップ。ボレロ風のジャケットにはゴールドの縁取りがされており、浅倉さんらしくかつシックな装いでした。

by てっち衣装部

出典:ビルボード・クラシックス公式Twitterより

と、ここまでレポートを書いていたら、ビルボードライブ公演とクラシックス再演のお知らせが!!

billboard classics 小室哲哉 Premium Symphonic Concert 2023 –HISTORIA Encore– 開催決定!

ゲストボーカルはBeverlyさん。
浅倉大介さんも登場予定でPANDORA再集結!!
指揮・編曲は藤原いくろうさん。ゲスト・ラテンパーカッションに小野かほりさん。管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団の予定とのことです。

日時:2023年4月23日(日)開演16:00 開場17:00
場所:東京文化会館 大ホール
チケット:12,000円

先行発売 受付中!
現在、billboard classics 小室哲哉 Premium Symphonic Concert 2023 –HISTORIA Encore–
最速の先行抽選は1/31(火)23:59申し込み締切です!


◆小室哲哉オフィシャルFC
「TETSUYA KOMURO STUDIO」GOLD & STANDARD会員先行(抽選)
受付期間:1月25日(水)15:00~1月31日(火)23:59 
当落確認・入金期間:2月3日(金)〜2月7日(火)23:00

ビルボードライブ会員「Club BBL」先行(抽選)
エントリー対象となるClub BBL会員は2023年1月24日(火)23:59までにご入会が完了された方となります。
受付期間:1月26日(木)15:00~1月31日(火)23:59
当落確認・入金期間:2月3日(金)〜2月7日(火)23:00

ローソンチケット独占先行 (抽選)
受付期間:1月26日(木)15:00~1月31日(火)23:59
当落確認・入金期間:2月3日(金)~2月7日(火)23:00

◆プレイガイド先行(抽選)
受付期間:1月30日(月)10:00~

◆一般発売
2月18日(土) 10:00~
・ローソンチケット
・チケットぴあ
・イープラス

そして ビルボードライブツアーも開催!
【Tetsuya Komuro 「HIT FACTORY #2」 guest Beverly】


2023年2月24日(金)ビルボードライブ横浜
1stステージ 開場16:30 開演17:30
2ndステージ 開場19:30 開演20:30
https://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13963&shop=4

2023年3月1日(水)ビルボードライブ大阪
1stステージ 開場16:30 開演17:30
2ndステージ 開場19:30 開演20:30
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13965&shop=2

2023年3月9日(木)ビルボードライブ東京
1stステージ 開場16:30 開演17:30
2ndステージ 開場19:30 開演20:30

2023年3月10日(金)ビルボードライブ東京
1stステージ 開場16:30 開演17:30
2ndステージ 開場19:30 開演20:30
http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13966&shop=1

いずれもFC先行抽選申し込みはは終了しています。 
Club BBL会員・法人会員: 2/1(Wed)12:00 受付開始
一般発売: 2/8(Wed)12:00 受付開始

Text:Tomoko Morita

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