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第8話 ヤンキーデビューの話

首吊り自殺(未遂)以降、母は少し丸くなったようだった。
夕飯を一緒に囲むようになり、初のお小遣い制度も導入された。
しかし人はそう簡単に大きくは変わらない。
母がそうだったように、私もそうだった。
虐待という経験は、明確な謝罪をもって初めて消化へと向かうのかもしれない。
何事もなかったかのように変貌した母の姿は、私からの不信感をより強くさせる要因になった。
はじめはそれでも大丈夫だったのだ。
私も母の優しい態度に緩み、気を許した。
しかしほんの少しでもそうでなくなった瞬間、私の警戒心や危機感は一気に振り出しへと戻された。
そして自殺を経験した私にとって、死そのものは恐怖対象ではなくなった。
死に恐怖を抱かなくなった事で、何かと踏み出しやすくなった。
例えば、イジメっ子に対して反抗するようになったし、学校をサボる事など小さな事だと思うようになったし、家出という選択に何の不安も抱かなかった。
人はそう簡単に死なない、死は怖くない、死の先に天国や三途の川などない、これは事後の私にとって大きな教材となる。

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