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第24話 シンナーの話〜後編〜

それが幻覚だと気付くまでにどれくらいの時間を要したのだろう。
真っ白い空間、シンナーを吸う浜崎あゆみ、空に浮かぶ自分の生い立ちの光景...。
それを見た瞬間は、心の底から救われたと感じた、自分はこの楽曲の一部なんだと信じた。

A Song for ×× (フェリーコーステンチルドミックス) 4:32 浜崎あゆみ
Cyber TRANCE presents ayu trance J-Pop 0

しかし体感的には一瞬の事だった。
シンナーを吸う浜崎あゆみが目の前にいるなど、幻覚以外の何モノでもないのだ。
これは幻覚だ!と頭を全力で左右に振り、現実に戻った。
シンナーで初めての幻覚、そこは祖父母の家の居間だった。

浜崎あゆみのトランスが、重低音を響かせて祖父母の家に鳴り響く。
CDやカセットテープも聴くことのできる高価そうなレコードプレイヤーは、高さ80cm幅50cm奥行き40cmはある大きな機材だった。
そのサイズに見劣らない音質の良さが、当時の私を上等な幻覚に誘ってくれたのかもしれない。
シンナーの効き目を感じつつも正気に戻った私は、ゆっくりと停止ボタンを押した。

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