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【中学受験ネタ】サンタクロース

 息子はサンタの存在を全く信じていない。
「ああいうのを信じる人が詐欺とか新興宗教とかに騙されるんだよ」
 と豪語する。
 そのため妻からは
「サンタさんを信じてない子には、プレゼントはないよね」
 と言われ、ここ数年プレゼントは、なにももらっていない。

 ちなみに私からも、
「サンタクロースがいないというならば、君はその証明をしなければならないね」
 と悪魔の証明を強いられ、なにも言い返せずに、相当悔しかったようだ。

 そんな息子がなにを思ったか、先日唐突に切り出した。
「ボク今年はサンタさんに、プレゼントをお願いしたよ」
「なにをお願いしたの?」
「トナカイ二頭とそり一台。もし、お父さんがプレゼントを買っているんじゃなくて、サンタがプレゼントを持ってきてるんだったら、もらえるはずだよね」
 と挑戦的な顔をして言う。
 つまり、サンタクロースが本当にいるのであれば、息子の望むプレゼントを持ってくるに決まっているというわけだ。トナカイなど普通の人間には準備できないのを見越して、サンタを否定する材料に使おうとしているのはミエミエだった。
 横から妻が息子に訊ねた。
「息子君は、とうとうサンタさんを信じたの?」
 息子はあからさまに侮蔑の表情を浮かべた。
「そんなの信じるわけないじゃん。サンタクロースがいるかどうか試してるだけだよ。もし本当にいれば、ボクの望むプレゼントを持ってくるに違いないよね」
「たしかにそうだけど、あなたサンタさんを信じてないって今言ったよね。サンタさんは信じる人にしかプレゼントを持ってこないよ」
「しまった」
 まさに浅知恵とはこのことかと。


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