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【雑記】ひみつ基地ミュージアム

昨日「山の中の海軍の町にしき ひみつ基地ミュージアム」に行った。

もともと私は人吉方面にあまり興味がなかったのだが、息子が行きたがっていたのは、かねてから知っていた。

そんなおり、肩の手術で2ヶ月入院し、今年の夏休みは病院生活となった。先日やっと退院したので、どこかに遊びに行こうかという話になったとき、息子が「人吉に行きたい」と言い出した。
聞けば、人吉海軍航空基地に博物館ができたので行きたいと言う。まだ開館して2年目とのこと。
人吉と言えば、SL人吉号が走っていたくらいしか知識がなく、言って見れば、宮崎と近い山あいにある場所。
どうしてそんな山の中に海軍基地があるのか、興味が湧いたので、人吉に向かうことにした。

以前高速で人吉に行ったのだが、山間部を辿るように高速道路が続き、周りは山がそびえ立っていて、なんとなく圧迫感を受けた。
今回は球磨川沿いの国道経由で行ったが、球磨川の川の色はエメラルドグリーンをしていて、とても眺望の良い場所だった。
人吉に行くには高速でないほうが快適だなと思った。

思ったより早くミュージアムに到着したら、係の人が寄ってきて、今すぐガイドツアーがあるので参加するかどうかを聞いてくる。
そんなサービスがあるのかと内心驚きながら、ツアーのコースを選択しながら、ツアー客が待っている場所に急ぐ。

ガイドの方がツアー客を集めて説明をしてくれる。
滑走路跡を説明してもらいながら、なんでこんな場所に基地があるかも教えてくれた。
なんでも、出水、鹿屋、宮崎航空基地が近くにあって、人吉はそのどこにも行けるため、補給基地的な意味合いで作られたそうだ。

息子が言う。「昔は石油がなくて、松根油で飛行機を飛ばしたそうだよ」
それをガイドの方が聞きつけて「こういうのはお好きですか?」と聞いたので、思わず「大好きです」と答えたら、嬉しそうにしていた。

日本初のジェット戦闘機「橘花」は、実際にこの松油で飛んだそうだが、初飛行は8月7日。その数日後に終戦を迎えた。
ちなみに、数十年かけて育った松1本を消費しても、飛行時間はわずか18秒分にしかならないとのこと。
滑走路跡を眺めながら、石油が欲しいなら、なんで南方侵攻ではなく、初めに真珠湾攻撃なんてしたのかという思いと、松油で飛行機を飛ばそうとした段階で、もう勝ち目がないと思わなかったのかという思いが交錯する。

まず初めに行ったのは、地下魚雷調整場。
高さ5m、幅5m程度の入り口で、どう見ても防空壕にしか見えなかった。
実際に現地の人たちは防空壕だと思っていて、こんな場所に基地があるとは思わなかったらしい。
戦後もずっと放置されたままになっていたのだが、終戦後海軍がGHQに提出した資料の中にこの秘密基地があったらしく、米国の公文書が公開され、初めて存在が明らかになったらしい。

岩質は阿蘇からの溶岩が流れ込んだものらしく、つるはしを使って中を掘っていったそうだ。なるほど、ところどころにつるはしの跡があった。
現存する地下遺構の中では最大規模だそうで、内部は鉄筋ではなく木を鉄筋替わりにしたコンクリートの建物(洞窟)。
2か所ある魚雷調整場はあえて一直線ではなく、誤爆が起こっても爆風が来ないような造りになっていた。
ガイドの方が「どうして一直線になっていないのかわかりますか?」と聞いてきたので、そう答えたら、「その通り」とメチャメチャ嬉しそうな顔をしていた。

内部はうっすらと電気がついていたのだが、これで電気がなければ、肝試しにでも使えるような怖い場所。
実際に現地の人もここには近づかなかったそうだ。
つまびらかになったのが最近のことなので、未だに学芸員がこの洞窟で新しい発見をし続けているみたいだ。少し学芸員が羨ましい。

次に行った地下兵舎壕、地下作戦室・無線室はもっとヤバい洞窟で、大きなゲジゲジが出るわ、大量のコウモリが出るわで、洞窟探検のような気分。
息子氏が「ゲジゲジもコウモリも初めて見たよ」と呟く。
この建物が出来たのは終戦の1年前。
昔はこんなひどい場所で、作戦を練らなければいけなかったのかと、暗澹たる気持ちになる。

ダウンフォール作戦のことも日本軍に漏れていたそうで(連合軍がリークした?)、いずれ九州南部は最前線になる予定のため、ここから撤退する準備もしていたのだそうだ。
実際に戦争後期には、宮崎方面から飛んできた攻撃機が近くの民家を攻撃していたそうだ。
ふと、山川方夫の「夏の葬列」が頭に浮かぶ。
当時を生きた人間にとっては、悪夢のような時代だったのかもしれない。

興味深い説明をしてもらった後、資料展示室で、通称「赤とんぼ」と呼ばれる九三式中間練習機を見学する。

九三式中間練習機

終戦間際にはこの九三式中間練習機も特攻機として使用したそうで、ここにいた予科練の若者達も知覧とかに行ったのかなあと思いを馳せる。

「ひみつ基地」というフレーズのお陰か、親子連れが多かったが、きっと思い描いていたのとは違ったのではないかと思った。私は興味深い話を聞けて大満足だったが。
見学を終え、売店にあったソフトクリームを食べて、妻と息子も大満足の様子だった。

こんないい場所があるなんて思いもしなかった。
熊本(宮崎、鹿児島)に立ち寄ったら、是非訪れて欲しい場所だ。

歴史は繰り返す。
私の時代は、「戦争をしたことが悪」というような短絡的な教育しかされなかったが、息子には「(戦争はよくないという前提で)なぜ日本は負けたのか。なぜ日本人はあんなに苦労をしたのか。なにが悪かったのか。どうすればよかったのか」というようなことを深く考えて欲しい。






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