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2022入試 問題研究⑩ 岩手大学の現代文

こんにちは。先週の大阪大学(文学部以外)から本シリーズも再開しました。

過去問演習の季節も始まるので、何らかの参考になればよいな、と思っています。

◇最初に

〇岩手大学の現代文について

岩手大学は旧センター試験の改革案の進行段階から入試問題を改変し、大問4にデータ読み取り型の問題を出題しました。

当初の予定とは大学入学共通テストが違った形で実施されていますが、今後の改革で資料読み取りの出題も示唆されているので、結果として進取の精神があった、といえる展開になりそうです。

〇告知

そんな岩手大学の大問4対策の講座を東進ハイスクール・東進衛星予備校の「仕上げ特訓講座」にて作成いたしました

岩手大学志望者は是非ともお問い合わせを。(講座のリリースはもう少し先です)

よって今回は「大問1」の解説を行います。岩手大学は解答例も出しているので、その点との比較も行います。

◇出典情報

『科学と非科学 その正体を探る』 中屋敷均

頻出と言える出典ですね。
2019東京大学を筆頭に、2020北海道大学、2020立命館大学など。

◇設問の解説

〇問1 難易度★★

<タケガワ解答>
科学的な発見は批判に耐えながら有用性や再現性があることで現実に対する適応度の高い仮説として後世に残り、さらに修正を受けることでその内容が更新され続けていくということ。(85字)

<大学公表解答>
現実をよく説明する「適応度の高い仮説」が長い時間の中で批判に耐えて後世に残り、その仮説の適応度をさらに上げる修正仮説が提出されるサイクルが繰り返されるということ。(81字)

<解答へのアプローチ>

■設問分析
【答えるもの】
 
「科学が変化を生み出し、生き残り、成長・進化していく」ことの換言

【根拠】
基本的には傍線部直前の②段落をまとめる。それぞれをまとめると以下のようになる。

「科学の変化」 = 修正を繰り返すこと
「生き残り」 = 後世に残る
「成長・進化」= 現実への適応度が増す

これの内容を軸に②段落の表現を用いて書けば良いだろう。

■模範解答分析

個人的には「適応度の高い仮説」は「」表現であり、言い換えた方がいいと思うのだが、岩手大の模範解答を見る限り、ある程度そのまま使ってしまっても問題なさそうである。
つまり、文章表現はある程度そのまま使ってもいいという認識で問題ない。

〇問2 難易度★★★

<タケガワ解答>
科学的知見は非専門家に理解できるデータがすべて公開されておらず、またその情報の確度を単純な画一的な視点でとらえていいかもわからない不安なものなので、人々は権威の高さと情報の確度を同一視することにすがることでその不安から逃れたいと考えるから。(120字)

<大学公表解答>
科学的知見の確度が判定できず、拠りどころのない「分からない」という不安定な状態でいるよりは、権威にすがりつき、権威の高さと情報の確度を同一視して判断することでその不安から逃れ安心してしまいたいという指向性が、人の心に潜んでいるから。(116字)

<解答へのアプローチ>

■設問分析
【答えるもの】
科学的知見の確度の判定に「権威主義」が忍び寄る理由説明

【根拠】
⑴ 科学的知見の確度判定について

⑤段落の内容を踏まえると、「非専門家には難しい」のが「科学的知見の確度(たしからしさ)の判定」である。そしてこれに対して⑪段落では「わからないという不安定な状態」とあるので、ここも利用する。

⑴のまとめ
科学的知見の確度の判定は非専門家には難しく、人々は確度の分からない不安定な状態に置かれる

⑵ 権威主義が忍び寄る理由
⑴を踏まえた上で⑪段落を見ると、「不安から逃れる指向性」のために「権威のあるものを信じたい、それによって安心したい」ということになる。さらに傍線部直後の「権威の高さと情報の確度を同一視して判断する」という部分も利用する。

⑵ のまとめ
⑴で感じた不安から逃れたいために権威の高さと情報の確度を同一視して判断することで安心を得ようとするから。

以上をまとめる。

■模範解答分析

基本は⑨段落の直後と⑪段落を使っている。やはり、本文表現をある程度そのまま使っていいと考えている一方、「心に潜む」などの換言もしているので、「本文表現に縛られすぎる必要もない」ことも意識しておこう。

〇問3 難易度★

<タケガワ解答>
科学的な知見に対して、先入観を無くし、出来るだけ信頼に足る情報を集めた上で、自分の頭で理性的に考えようとすること。(57字)

<大学公表解答>
信頼に足る情報を集め、物事を先入観なくあるがままに見て、個々人が自らの理性でその意味や仕組みを真摯に考えること。(56字)

■設問分析
【答えるもの】
「科学的に生きること」にとって重要なことの換言

【根拠】
⑮・⑯段落のまとめになる。
傍線部直後の⑯《信頼に足る情報を集め、真摯に考える》が軸。

これに⑮段落の「理性的」「先入観なく」などを組み合わせる問題。

■模範解答分析
これは完全に本文そのまま使う系である。

問4 漢字
(1) 茶飯事 (2) 臨床 (3) 深刻 (4) 倒錯(5) 逸脱 (6) 崩壊
(7) 遺伝子

基本的な作業が確認できる良問ですね。

それではまた来週。



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