センター試験の総括と大学入学共通テストへの提言~K倶楽部事前課題のまとめ

 2020年3/15(日)に実施予定だった第4回K倶楽部ですが、残念ながら中止となってしまいました。しかしながら、メンバーの皆様から頂戴していた事前課題については「世に問う」に値する非常に素晴らしいものばかりでしたので、以下にまとめてみました。簡略的なものにはなりますが、よろしくご参照ください。 
 ※なお、皆様から頂戴したご意見、ご提言については、すべて匿名で掲載させていただいております。また、共通する、あるいは類似する内容に関しては、一つに集約いたしました。

①センター試験についての総括
〈良い点〉
・学力のミニマムを問う試験としては機能していた。
・難問、奇問を排除した良質な問題の確保が役割として挙げられているが、その機能を果たせていると評価しているし、有用な試験と考えている。
・50万人を超える受験生が受験し、毎年問題も受験者も変わるのに平均点がぶれない。そういう意味では、選抜テストとしてはよく出来た試験であると考えられる。
・2000年代前半の現代文(小説)の質が高い。伏線の回収など見事なつくりである。
・細部の読解力と全体の読解力(論の展開等)の双方をしっかりと試すものとしてよく出来ている。
・古文/漢文は知識重視で、学問としての面白さを伝えきれていない内容だが、基礎力を問うというコンセプトに沿っているとめみることができる。
・2020年度の古文はシンプルで癖のない標準的な問題が出題されていて、文脈を考えさせる問題が多くよく出来ていた。
・小説については、象徴や比喩の解釈などを問いかける良問がわりと多い。
・過去問をたくさん解いて、特徴的な問題に何度も触れていくことで、得点力の向上が図れる。

〈悪い点〉
・分量の多さは問題である。80分→90~100分が適切ではないか?
・通読しなくても正解できてしまう問題が多い(現代文だけではない。古文・漢文も然り)。読解力そのものを測るものでない設問が目立つ。
・勉強しないけれども現代文は取れる…という受験生が一定数存在してしまう。
・かつての共通一次のような「口語文法」の問題を出してもよかったのではないか。
・選択肢1問の配点が高いので、本来の実力(良くも悪くも)がそのまま得点に反映されないことがある。
・漢文の扱いが疎かになっている。現・古で判定する私立大学も多い。
・予備校が解法・テクニックを指導するのに抵抗した結果、選択肢が長くなったのではないかとにらんでいる。
・選択肢に悪文が多い。無理に選択肢を長くしていることが原因と考えられる。150字程度のものもあり、係り受けがおかしいものも散見される。受験生たちの表現力涵養を阻害することにもなりかねない。

②大学入学共通テストへの提言
・実用文、資料(図表・グラフなど)、複数テキストの読み取りの出題が予想され、それがセンター試験との大きな違いである。センターと変更するという「実績」が必要なため、これらが実際の共通テストに盛り込まれる可能性が高い。
・高校生が「文学国語」「論理国語」の選択になることを受けて、純粋な小説文の読解問題が失われる可能性もある。これにより、高校生たちが小説に接する機会が奪われる可能性をも孕んでいる。
・複数テキストから共通点等を抽象化する試みは面白いが、逆にいえば解釈の多様性が生じてしまう結果、作問者の恣意性が強まる危険性がある。複数テキストが効果的なのは小論文ではないか。無限に答えが考えられるものにこそ、合っているのではないか。
・複数テキストを出題すると、個々の文章の文字数は抑えねばならない。すると、「論の展開」を追うような設問、巨視的に読解する作業をさせにくくなってしまうのではないか。したがって、複数テキストを出題するのであれば、オーソドックスで論の展開がある一定分量の評論文にちょっとした図表を組み合わせるなどしたらどうだろうか。
・漢文は注釈学という側面がある。本体となる文章はごく一部であり、後世の教養人(英雄や文人)が多様な解釈を付けてきた。それはどれだけ短い文章であっても一意に受け取れるものではなく、微細な解釈の違いが生じるということ。受験者自身の解釈を問うのではなく、何人もの学者達の注釈まで読解させることで、文学の奥深さを味わいつつ知識や内容把握,さらには細部の文章解釈も問うことが可能であろうと思われる。おそらく共通テストの理念にも多く合致すると思うので、そのような「学問の入口」であり「面白さを喚起する」作問をしていただきたい。
・共通テスト国語の記述出題が頓挫したいま、もう一度モデル問題を公開すべきである。
・韻文の出題には表面的な知識、技術で対応できるものではなく、読み考えることの設問を多く盛り込むことを望む。
・現古の融合問題の出題を考えともよいのではないか。現代文と古文の線引きをさせないという試みも面白いかもしれない。
・2020年度のセンターの漢文、たとえば、漢詩の情景をイラストで選ばせるものなど作問者の意地が感じられた……共通テストはこういうものを踏襲すべき。
・現状は、センター試験以上に思考力を問う問題を作成できているのか疑問に思われる。また、思考力は設問自体で問うもので、条件の指示は受験生を迷わせるものであってはいけない。設問に添えられる条件はむしろ生徒の手助けをするものと認識しているので、条件の書き方には細心の配慮を施してほしい。

 以上になります。
 今回はやむなく中止という判断となりましたが、K倶楽部はこれからも、〈現場から国語を考える〉ことを基軸に据え、活動を続けて参ります。今後とも、何卒、よろしくお願い申し上げます。
                
K倶楽部発起人一同

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