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2022入試 問題研究④ 東京都立大学の現代文

こんにちは。

前回はこちら

今回は東京都立大学の2022年度入試を分析していく。

◇東京都立大学の国語

2020年度入試から大問3の小論文風の問題がなくなり、古文+現代文の形式に。大きな特徴は失った代わりに、受験生にとっては対策しやすい問題になったと言える。

◇2022年の出典について

『日本人と神』/佐藤弘夫

今年、私大入試でも散見された出典の一冊。

◇解説

〇論理展開

本文は24の形式段落からなっているが、「論のまとまり」は3つに分けられる。

⑴ 古代における日本のカミ(神)について(①~⑧段落)
・当初のカミは自然現象/動物といった個別の事象と不可分だった。
・その後、カミは「形象化」→「抽象化」(=不可視化)が進む。
・そして神の「定住化」が進み、寺社参詣の形式が生まれた。

⑵ 中世の日本におけるカミ(⑨~⑭)
・中世においてはカミの存在を外在的なものではなくなる。
・個人の精神の中に聖性を発見し、それの発現によりみずから聖なる高み(=カミ)を目指すようになった。
・とはいえこれはまだ「理念的」なものであり、あくまでも一般人はカミに救済される対象だった。

⑶ 近世以降の日本におけるカミ(⑮~㉔)
・近世以降、まずは「天下人」がカミとなる。そして、「カミ」となる階層はだんだん下降する。
・そして「普通の人間」も「カミ」となり、来世に神仏がいるという発想がなくなる。
・人々は遺族による葬送を経て現世では楽しめなかったことを来世で果たすようになるのである。

〇問一 漢字

ア 輪郭  イ 託宣  ウ 徹底  エ 飛躍  オ 安穏

イ 託宣 は難しい? オ 安穏 はやや難しい?
3問死守かな。

〇問二 言い換え(選択肢)

答え e 

→ 直前の②段落「カミと認識された個別の事象と不可分のもの」が指示語の内容。この言い換えを考える。確実に押さえよう。

〇問三 言い換え(抜き出し)

答え 霊異を引き起こす不可視の存在としてのカミ(20字)

これは④段落から。指示語の対応箇所がやや遠い、とか言わないこと。④~⑥段落がひとまとまりであることを踏まえると④段落も「直前」です。

〇問四 言い換え(記述)

<タケガワ解答>

あらゆる人間の心の中に自分自身をあの世へと救済できる根源神に通ずるものが存在しているということ。

<解答根拠>
やや難。「内在する聖性」を答える問題だが、本文中の根拠がつかみにくい。
しかも問題条件は「問題文に即して」なので「聖性」を「素晴らしいもの」とか「聖なるもの」と単純に換言することも許されない。

ここでいう聖性とは⑪~⑬段落を踏まえると、「自分自身を救済すること」であり、「カミ」に近い部分があるということなのだろう。よって、解答にも「カミ」「根源神」という内容が入っていることが得点発生へのポイントになると思われる。

<採点ポイント>

① 自分の心の中に/自分自身の中に 
→ 「内在する」とあるのでこの表現は反映させよう。
② 自分自身を救済できる「カミ」/「根源神」に通ずるもの/部分がある
→ 「救済」と「カミ(神)」の内容の反映が欲しいかな。

〇問五 言い換え(記述)

<タケガワ解答>

他者をあの世へと救済する超越性を持つことはなく、生前に達成した世俗的な事績の偉大さにより現世の人々の欲求を満たす存在。

<解答根拠>
答えるべきポイントは二つ。

A 救済者としての使命を放棄した
→ そもそも救済者とは「他者をあの世へと救済する」存在であり、超越者であるのだ。

B 小さな神々
→ 小さいのはAとの比較の上である。⑯~⑰段落を踏まえると、人を救済するという超越性をもたず、「自身の生前の業績の偉大さを笠に、他人の欲求/満たされなさを満たす」ような存在なのである。

<採点ポイント>

A 他者をあの世へと救済する/他者の救済を目的とした超越性
B 生前の世俗的業績で現世の人々の心を満たす

〇問六 言い換え(90字)

<タケガワ解答>

神社には超越的な力を持った抽象的な存在としてその場を守っているカミがいるのに対し、鳥居の奥には生前の業績を問わず死後を幸福に過ごしている世俗的で具体的な人物が存在している。(86字)

<解答根拠>
傍線部Ⅰ・Ⅱそれぞれの内容を吟味する

A 傍線部Ⅰ【神社】
これは⑤段落を参考にすると、「抽象的」かつ「超越的」な存在が存在していると言える

B 傍線部Ⅱ【鳥居の奥】
これは⑳段落以降の内容を踏まえるのだが、この際にAと対比的にまとめることを意識しよう。
つまり「超越的」⇔「世俗的」であり、「抽象的」⇔「具体的」とまとめられると良いのだ。

<採点ポイント>

上記AとBを対比的にまとめられているか。単なる要素の羅列になっていないか。

◇全体的な感想

かつての独特な問題構成に比べると、極めてオーソドックスなものになっている印象。しかし、受験生からすると考えさせられる問題なのかな、と。それなりに点差がつきそう。

今回は以上です。


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