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2021最難関国立大学入試分析④-1-1 大阪大学(文学部以外)大問1(問1~問3)

このシリーズもそろそろ再始動していきます。

今回は大阪大学。まずは文学部以外の入試問題から始めます。
これまでよりも解答への思考回路をもう少し詳しく載せていきます。そして、ちょっと力を入れる関係で大問を一つずつ扱っていきます。ご了承ください。

【文章】

『ネガティブ・ケイパビリティ 答えのない事態に耐える力』 帚木蓬生

<概要>
・精神科医の筆者が患者を目の前にして感じた「白黒つけずに灰色を肯定する能力」(=ネガティブ・ケイパビリティ)の必要性について論じている。

・二元論的な善悪、明暗が求められる合理的な現代社会において生きづらさを感じる人は間違いなくその「負の位置」に追いやられる。精神科医の役割はそこから「正の位置」に戻してあげること、では決してないことを述べている。

論理展開は「抽象」「具体」の区別が明確で非常に追いやすい。難易度は標準としておく。

問一 漢字

a  至便  b  痛感  c 体得  d 権化  e 不断
→ aの「至便」は意味を考えればこれしかない。普段から不断に漢字の意味も考えながら体得しようとしているかが痛感されますね……。(権化あまり)

問二 傍線部換言

<プランニング>
① 「精神医学の限界」の内容を捉える
→ 傍線部を含む一文の確認。文の最初は「要するに」である。傍線部の直前にも注目する。(a)
→ 精神医学の「限界」についての記述箇所の確認。直後は傍線部の内容についての具体例(b)

② 字数の確認
→ 60字から80字なので決して多くはないので必要な要素を端的にまとめる

<解答への手順>
(a)傍線部の直前の確認

→ 「精神科医としての未熟さ」を痛感すること。
⇒ 傍線部は「精神医学」の限界なので、「精神科医としての未熟さ」は解答に反映させにくいと判断すべき。(よってここを使う必要性はかなり低い)

(b)具体例への注目
→ 9段落「いやそもそも医学の大きな分野のひとつである精神医学そのものに、どれだけの力があるのだろう。そんな不安感にさいなまれ…」
の部分が「精神医学の限界」に近い内容だが、このままでは使えないので抽象化する。

☆1「精神医学の果たす役割が極めて小さいものであるということ」(27字)

ここで「不安感」の反映を考えることになるのだが、あくまでも「精神医学の限界」について論じるのであれば、とりあえず削除。

そして、その上で9段落の具体例をもう少し使いたい。こちらも抽象化である。複数のエピソードがあるときはその共通点をもとにまとめていく。ともに研修医時代の話であるが、

・ うまく治ってたと思う患者さんがまた再入院している
・ 大学の外に出る前に入院していた患者さんがそのまま入院している

この二つをまとめると以下のような内容になる。

☆2「治療の効果がはっきりと目に見えない現実を目の当たりにする」(28字)

☆1と☆2を軸にして答えを作る。その際に以下のような構文をとる。

「☆2」は「☆1」という困難(を示す)

☆2と☆1の間に因果が存在しているわけではない。ここら辺の言葉の運用が解答づくりにおいては非常に重要である。文章中の関係性をもとに解答を作り上げることを意識する。

本文中では☆2、いやそもそも☆1という構文なので、「のみならず」などのつなぐ言葉を使用してみよう。

あとは字数の調整だ。

☆2 精神科の臨床においてその治療の効果が明確に感じられず、(27字)

う……減っちゃった。

☆1 医学の一分野に過ぎない精神医学がそもそも患者の治療に貢献することは極めて難しいということ。(45字)

字数は何とかなりそう。
とにかく「限界」=「難しい」という文末にこだわって答えをつくらないと「漠然とした感情」を表明した解答になってしまいます。気をつけよう。

☆2と☆1のつなぎ方を考えると、

<タケガワなりの解答>

☆精神科の臨床においてその治療の効果が明確に感じられないのみならず、医学の一分野である精神医学がそもそも患者の治療に貢献することは難しいのではないか、ということ。(80字)

文章の体裁を整えて、ぴったり80字。

問三 理由記述

<プランニング>
① 詩人と精神科医の共通点の抽出
→ それが明記されているならばそれで終わり。無いならば共通点を考える。

② 因果関係
→ ①が「ネガティブ・ケイパビリティ」を身につけるべきという因果関係をつくることを確認する。

③ 20字記述
→ これがかなり厄介である。字数は短いほど難しいと思った方がいい。

<解答への手順>
① 共通点
そもそも「ネガティブ・ケイパビリティ」については18段落に記述がある。

A「不確かさの中で事態や情況を持ちこたえ、不思議さや疑いの中にいる能力」
B「しかもこれが対象の本質に深く迫る方法である」

細かいところは割愛してしまうが、本文では「ネガティブ・ケイパビリティ」についての記述はここになり、詩人と精神科医に共通して必要な能力である。

② 因果関係
①の内容は「ネガティブ・ケイパビリティ」を身に着けるべき理由にはなっているのでOK。ここまではそんなに難しくない。

③ 20字にまとめる
上記の内容を20字にまとめる。
Aは内容の重複が見られる。重複は省くのが記述においては鉄則である。(これは字数の長短に拠らない)。

A 不確実な状況に耐えることで(13字)

ひゃー、あと7字。

ついでB。対象の本質に迫る、という内容であればよい。

B 対象の本質に近づくから。(12字)

はい、オーバー。

ここから内容を削らずに表現をまとめる。まさに推敲力が問われます。

<タケガワなりの解答>

☆ 不確かさに耐えることで本質に近づくから。(20字)

Aの内容は外せないここをとってしまうとネガティブ・ケイパビリティの意味合いが薄まってしまう。そこのギリギリのせめぎ合いをするのが短い字数の記述問題。難しい。

ここまででもう2,000字オーバー。予定外の「大問1の前半」ということにします笑

後編は後ほど。

それでは。

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