フォースターニング 奥山真司

どうもつながらなかった、歴史、哲学、現代の問題がうまくつながったと感じることができた奥山真司氏の翻訳本。

・近代アメリカの歴史の流れを春、夏、秋、冬と循環するとして年その20年においてそれぞれに生きた人々の特徴も(預言者、遊牧民、英雄、芸術家)という4つのアーキタイプに分類されるという考えの元、現代(特にアメリカ)の現状を分析している。
以下要約と感想。


第1章 冬はふたたびやってくる。


・歴史の中には、高揚、覚醒、分解、危機という4つの節目(ターニング)がある。
・時間には、混沌、循環、線形という3つの概念がありアメリカは線形に時間が進んでいると考えがちである。
・しかし、合衆国も例外的でなく80年の4つの節目を周期とした時間流れを持っている。
・その4つの周期は、春夏秋冬の様にそれぞれの特徴があり、現代は(1997年)は、秋から冬になりつつある時代である。
・冬は、2005年前後に到来する可能性多が高い。
・これまでの冬(危機の時代)には、独立戦争、南北戦争、世界恐慌から名太平洋戦争と破局的出来事があり、その都度社会はそれまでとは大きく違うものとなった。
・今回の危機の時代の前後でも社会は大きく変わる可能性がありそれは、2025年頃を境にする可能性が高い。
・冬は避けることはできないが、備えることはできる。

第2章 歴史の季節


・歴史の循環の考え方はローマ時代から存在した。
・循環は、人の一生分の80年~100年をベースとしていた。
・その後、中世において循環の思想は弱まるがルネサンス以降再び発見された。
・歴史の循環において、夏は覚醒、冬は危機に対応し、それぞれ対の関係になっている。
・この4分割の季節は、トインビー等多くの歴史家の中でも類似している。
・危機においては、破局的戦争が起きる場合がも多いが起きない場合もある。

第3章 人生の季節


・近現代において、人生のサイクルは幼年期、成長期、中年期、老年期とそれぞれ20年づつおよそ80年に分類される。また、歴史のサイクルも近現代においてはおよそ80年で循環している傾向にある。
・歴史に4つのサイクルに、人生のサイクルのどの段階で遭遇しているかによって世代が形成される。
・世代のペルソナ(外的人格)は、1.世代が歴史で共有している立ち位置、2.共通の行動と思想3.世代がみな参加していると考えれる集団によって特徴づけられる。
・それぞれの世代は、20年を区切りとして(預言者、遊牧民、英雄、芸術家)の原型(アーキタイプ)に分類される。
・人生において、危機か覚醒に必ず出会い、それに対峙する年齢によってそれぞれの世代の原型が形成される。
・直近でいえば、1929~1946が危機、1946~64が覚醒、1964~1984が高揚、1984~2004が分解の時代である。
・原型もそれぞれ対となるタイプに対して影響しあう。
・英雄は、年老いた預言者に導かれ、また預言者は前世代の年老いた英雄を洞察する。
・それぞれの原型に基づく寓話が世界各国にある。
・この4タイプと危機、覚醒の循環は伝統の惰性が弱まった現代、そして米国においてより顕著に
 現れると作者は言っている。

第4章 歴史の循環


・4つの節目において、アーキタイプは下記の状況にある。
 高揚→預言者(いなくなる)、遊牧民(老人)、英雄(中年)、芸術家(成人)、新たな預言者(子供)
 覚醒→遊牧民(いなくなる)、英雄(老人)、芸術家(中年)、預言者(成人)、新たな遊牧民(子供)
 分解→英雄(いなくなる)、芸術家(老人)、預言者(中年)、遊牧民(成人)、新たな英雄(子供)
 危機→芸術家(いなくなる)、預言者(老人)、遊牧民(中年)、英雄(成人)、新たな芸術家(子供)
・高揚において、危機を乗り越えた達成感とともに秩序を持った繁栄と安定が生まれる。
 未来像は希望に満ちている。
・覚醒において、高揚の時代が持っていた前提条件に対しての挑戦が行われる。文化的慣習は失われる。未来像は理想と災厄の間で揺れ動く。
・分解において、覚醒によって生まれた自由をもたらす文化の力が社会全体にいきわたる。個人の満足度は上がるが、社会の個人に対する寛容度は低下する。未来は、処罰、機能不全、邪悪なものとそれからの開放を示す。
・危機において、脅威は唐突にやって来る。変化に抵抗していた法や習慣は即座に取り除かれる。
 個人はリスクをとることは少なくなり、団結が求められる。成功には多くに犠牲が必要となる。
 危機が過ぎ去る頃には、人々は希望を持ち、社会はシンプルなものを切望するようになる。
・それぞれの節目は、社会、政治、文化、経済、家族に対して影響を与える。
・重要なのは、それぞれの節目の出来事自体ではなく、出来事に対してどう対処するかである。
・節目に沿わない対処をすればそれは効果を生むものとはならない。
・危機がどう訪れるかはわからないが、それに対してこれまでの危機からその対処法を導き出しておくことは重要である。

第5章 老年の保護者


・アメリカ独立の前夜、預言者が現れた。そして、その80年後また預言者が現れる事となる。そして、現在またその預言者が求めれている。

第6章 第4の節目の預言


・2005年の前後に第4の節目がやってくる可能性が高い。
・危機の時代での政治の勝者は場当たり的でない課題遂行の権力を手に入れる。
・危機において孤立主義的傾向は強まる。
・危機の終焉が近づくにつれ、米国の経済は抜本的に異なるものとなる。
・分解の自体にあった選択の複雑さは権威により単純化する。
・危機においては、バイオテロ、地方圏の独立等様々なものが考えられるがそれがどのように発生するかはわからない。
・2005年頃から突入する危機の時代において、ベビーブーマー(預言者)は老年期となり、第13世代(遊牧民)は中年、ミレニアル(英雄)は成人し、新たな沈黙の世代の子供たち(芸術家)が生まれる。

第7章 第4の節目に備えて


・危機の時代にはその時代に合った対処が求められる。例えば、分解の時代に覚醒の時代が持つ情熱を示すのは効果がない。
・危機の時代において、
 価値観→総意を作り文化を向上させる。
 組織→役立つものを見つける。ただしおおきなことを急いではいけない。
 政治→権利より義務を優先する。
 社会→コミュニティの協力によって地域問題を解決する。ただし、国家規模でやってはいけない。
 若者→国家の最優先事項とするが、子供の仕事を奪ってはいけない。(楽観性をはぐくませることが重要)
 老人→自分のことは自分でやる。
 経済→根本から修正する。
 国防→動員の準備をするがはじめからのめりこまない。
・国家として準備できていないと感じたらまず我々が準備をする必要がある。
・分解の時代には割に合わない美徳(信頼、根気、忍耐、倹約、無私)などの昔ながらの美徳を養う必要がある。
・個人としてのつながりを作る必要がある。
・英雄としてのシナリオは、ささやかな善行を行い、大きな夢を達成することを考えつつ、同調圧力を建設的な目的に使っていくことが重要。
第8章 永劫回帰
・時間をサイクルと考えることで、自らを過去の世代と結びつけることができその中で使命をもって生活をすることができる。

読後感

・著書中で、世代ごとのアーキタイムが示されているが単純な世代へのラベルを貼りという解釈であれば著書の解釈としては浅い。
・人間は必ず外部環境から影響を受けるので同じ時代を生きた人は必ずその影響を受ける。
・それは、同じ年齢でなくても影響は受けるわけなので、自分の中で無意識的に影響を受けてることに対して自覚的になるための指標になる。
・また個人の中にも4つのアーキタイプ(預言者、遊牧民、英雄、芸術家)が現れるはずなのでその共存と自覚のために本書は有効である。 


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