トインビー 吉澤五郎

読んだ理由

ニール・ハウのフォースターニングで歴史の法則的考え方、世代区分の考え方に共感する部分があったが、現代性はあるが、主観性も強いので同時に過去のものとなりやすいという点もある。
・フォースターニング自身も、これまでの歴史についての著書にその源泉が
あるはずという仮定の元、読んだ。
・「歴史の研究」は読み始めたら1年くらいかかりそうなので、トインビーに関する解説書を選択。

要約


(以下はトインビーに対する著者の見解と私の私見)
・歴史の春、夏、秋、冬の循環史観をトインビーも持っていたがこれはシュペングラーの影響があった。
・トインビーはさらにそこから、イギリス的経験論の方法を利用することで、文明の時代設定、文明同士の出会いの意味と理論を展開した。
・宗教は死んでおらずむしろ宗教の重要性を説いた。
・トインビーは知識階級と大衆があるという近代人の思考を持っており、その知識階級は大衆に対して孤独でありその救済として宗教が重要だとした。
・また、トインビーが宗教を強く意味付けた理由として、第1次大戦により
多くの身近な「死」を経験したことによるとしており、「死について」という著書もある。
・トインビーは「歴史の研究」で、歴史上の各文明を比較することでアングロサクソン文明(西欧文明)を相対化しようとしたが、アングロサクソン文明(西欧文明)は、他の文明と同じようような解体の道を歩まないとした。
・その理由は現代(歴史の研究が発表された時代)は、アングロサクソン文明
(西欧文明)の解体が全世界に強く影響を与える問題だからである。(というおごりがある。)
・トインビーの歴史観の中で「高度宗教」という概念が重要である。
・「高度宗教」とは、1つの文明の内側から生まれて、その文明が外部からの圧力により存亡の危機に陥ることで成立すると著者は考えている。
・宗教は、その宗教の示す真理への理解、社会への実際的貢献、本質剥離をすることで「高度宗教」となり、現代に再度意味を持つ。(と著者は考えている)
本質剥離とは、宗教に付随している利権等からはなれ、その倫理観や価値観を共有することを指すと思われ、これをメキシコのグアダルーペの聖母信仰における黒色のマリアで例示している。
・この、各宗教の持つ倫理観や価値観への共感とは、1つの宗教で神が存在するしないに関係なく、神がいることを含めたその宗教の物語に共感するかどうかの問題と思われる。

読後

・トインビーの死生観は、特に1次大戦での近親者の「死」が大きな意味を持っている。そこから、各文明の比較歴史学の中で各文明の持つ宗教の死生観に触れていると思われる。その中で、ヒンズー教的な死生観に共感をしていると著者は主張している。
・宗教を1つの物語と考え、個人という義務を持った人間という主体がその物語に共感することが宗教の価値であると考えている様である。
・その宗教は、各文明(国家)の成り立ちと関わる場合が多く従って、
国家と宗教と文明はそれぞれ不可分に関係している。
・したがって、宗教から現在読み取ることができることがあるとすれば、それは習慣の形成、死生観の成り立ち、人の行動原理に対する影響があげられるのではないか。


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