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位相空間入門:開集合、コンパクト性、連結性を理解する

集合と位相について勉強している中で、位相の概念の理解が曖昧だったので、頭の整理の意味も込めて整理します。

1. 開集合と位相の基本

1.1. 開集合の定義

開集合は、位相空間の基本的な要素です。
開集合の定義は次の通りです。位相空間 X において、集合 U が開集合であるとは、U 内の任意の点 x に対して、点 x の周りに U に完全に含まれるような十分小さな「近傍」と呼ばれる領域が存在することを意味します。
これは、U内のすべての点がUの「内部」にあるということです。

実数直線を考えると、開区間 (a, b) は開集合の例です。ここで、a と b は任意の実数です。開区間 (a, b) は、a より大きく、b より小さいすべての実数を含みます。開区間内の任意の点 x に対して、x の周りに a と b の間にある十分小さな区間が存在します。この区間は、開区間 (a, b) に完全に含まれます。これが開集合の概念を示す一例です。

「開区間内の任意の点 x に対して、x の周りに a と b の間にある十分小さな区間が存在します。」という箇所を掘り下げます。
開区間 (a, b) は、a より大きく b より小さいすべての実数を含みます。x をこの開区間内の任意の点とします。すなわち、a < x < b です。

ここで「十分小さな区間」とは、開区間 (a, b) に完全に含まれるような、x を中心とした別の開区間のことです。このような区間を見つける方法を説明します。

  1. まず、x と a の距離を計算します。これは、x - a です。

  2. 次に、x と b の距離を計算します。これは、b - x です。

  3. これらの距離のうち、小さい方を選びます。これを d としましょう。すなわち、d = min(x - a, b - x) です。

  4. ここで、x を中心とする半径 d/2 の開区間 (x - d/2, x + d/2) を考えます。

この新しい開区間 (x - d/2, x + d/2) は、x を中心とし、半径が d/2 です。したがって、この開区間は x の周りにある「十分小さな」区間です。さらに、この開区間は a と b の間にあるため、開区間 (a, b) に完全に含まれます。

この例から、開区間 (a, b) 内の任意の点 x に対して、その周りに十分小さな区間が存在し、その区間は開区間 (a, b) に完全に含まれることがわかります。この性質は、開集合の定義の一部であり、点 x が開集合の「内部」にあることを示しています。

開集合の概念は、集合の内部と外部を区別し、集合内の点の「近さ」や「連続性」を扱う際に非常に役立ちます。開集合を使って、位相の概念が導入され、さまざまな数学的概念が構築されます。

1.2. 位相の定義と性質

位相は、開集合の集まりに関する条件を満たすものとして定義されます。位相の定義は以下の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 空集合と全体集合は開集合である。

  2. 任意の開集合の有限個の交わりも開集合である。

  3. 任意の開集合の任意個の和(結合)も開集合である。

2と3について掘り下げます。
まず、「任意の開集合の有限個の交わりも開集合である」という性質について説明します。この性質は、開集合の定義により成り立ちます。

2つの開集合 A と B の交集合 A ∩ B を考えましょう。A ∩ B は、A と B の両方に含まれるすべての要素からなります。A ∩ B に属する任意の点 x を取ります。x は A と B の両方に属するので、A と B のそれぞれに対して、x の周りに十分小さな開集合が存在し、その開集合はそれぞれ A と B に完全に含まれます。このとき、x の周りに存在するこれらの開集合のうち、より小さい方の開集合を取ります。この小さい開集合は、A と B の両方に含まれるため、A ∩ B にも含まれます。これにより、A ∩ B が開集合であることが示されます。

この考え方は、任意の有限個の開集合の交集合にも適用できます。すべての開集合に共通する部分に対しても、任意の点の周りに十分小さな開集合が存在し、その開集合は交集合に含まれます。このため、有限個の開集合の交わりも開集合であるという性質が成り立ちます。

次に、「任意の開集合の任意個の和(結合)も開集合である」という性質について説明します。開集合の和(結合)とは、開集合の集まりの要素が少なくとも1つ含まれるすべての要素からなる集合です。これは、開集合の和(結合)を求める際に、開集合の集まりの要素が重なる部分を合わせて1つの開集合にまとめることを意味します。

開集合の和(結合)に属する任意の点 x を取ります。x は、少なくとも1つの開集合に属しています。その開集合に対して、x の周りに十分小さな開集合が存在し、その開集合は元の開集合に完全に含まれます。このことから、x の周りに十分小さな開集合が存在するため、開集合の和(結合)も開集合であることが示されます。

この性質は、任意の開集合の任意個の和(結合)に適用できます。つまり、開集合の集まりの要素がどのように多くても、それらの和(結合)は開集合であることが保証されます。

例として、開区間 (a1, b1)、(a2, b2)、(a3, b3) などの任意個の開集合を考えます。それらの和(結合)は、これらの開区間のいずれかに少なくとも1つ含まれるすべての要素からなる集合です。この集合に属する任意の点 x は、少なくとも1つの開区間に属します。その開区間に対して、x の周りに十分小さな開区間が存在し、その開区間は元の開区間に完全に含まれます。したがって、x の周りに十分小さな開区間が存在するため、開集合の和(結合)も開集合であることがわかります。

1.3. 「近さ」の位相による定義

位相は、集合内の点の「近さ」を扱う方法であり、開集合を用いて形式化されます。開集合によって「近さ」を定義することで、連続性や収束性などの重要な概念を位相空間に適用することができます。

開集合を用いた「近さ」の定義についてもう少し詳しく説明します。開集合を使って位相空間の中で点の「近さ」を扱う方法は、集合内の点の近傍という概念を導入することです。

近傍(または近接集合)とは、ある点 x の周囲にある開集合のことです。つまり、点 x がその開集合に含まれるような開集合です。近傍は、点の「近さ」を形式化する方法を提供します。以下に、この概念を使用して「近さ」を定義する方法を示します。

  1. 任意の2点 x と y が「近い」とは、x の近傍の中に y が含まれる(または、y の近傍の中に x が含まれる)ことを意味します。これは、x と y の間に十分小さな距離があることを示しています。

  2. ある点列がある点 x に「収束する」とは、点列のすべての点が x の任意の近傍に含まれるようになることを意味します。つまり、点列の点は、x に十分近づくことができます。

  3. 関数が「連続」であるとは、関数の定義域内の任意の点 x において、x の近傍を取ることができ、関数がその近傍内のすべての点に対して十分に「近い」出力値を持つことを意味します。これは、関数が連続的に変化し、急激なジャンプが存在しないことを示しています。

このように、開集合を用いて点の近傍を定義することで、位相空間内の点の「近さ」を形式化することができます。
この概念は、解析学や幾何学などの分野で、連続性や収束性を研究するための基礎となります。位相空間の枠組みを使用することで、これらの概念を一般化し、さまざまな数学的構造に適用することが可能になります。

2. コンパクト性:定義と重要性

2.1. コンパクト性の定義

コンパクト性は、位相空間の性質の1つであり、開被覆に関する性質を調べることで定義されます。空間がコンパクトであるとは、その空間の任意の開被覆が有限部分被覆を持つことを意味します。(開被覆については後述します)
言い換えると、コンパクト空間では、空間全体を覆う開集合の無限個の組み合わせがあっても、その中から有限個の開集合だけを選んで、それでも空間全体を覆うことができます。

2.2. 実数の閉区間のコンパクト性

実数の閉区間 [a, b] はコンパクトであることが知られています。閉区間のコンパクト性は、連続関数や収束性を扱う解析学において基本的な概念であり、多くの重要な結果につながります。

閉区間 [a, b] において、これが成り立つことを示すために、ハイネ=ボレルの定理を用いて説明します。

ハイネ=ボレルの定理:実数の閉区間 [a, b] は、任意の開被覆に対して有限個の開集合による部分被覆が存在する。

この定理により、閉区間 [a, b] がコンパクトであることが示されます。ハイネ=ボレルの定理の証明は、次のように行われます。

  1. まず、閉区間 [a, b] の任意の開被覆を考えます。これは、開集合の族で、その和(結合)が閉区間 [a, b] 全体となるものです。

  2. 次に、閉区間 [a, b] の中点 c を取ります。ここで、c は a と b の平均であり、c = (a + b)/2 です。

  3. 中点 c が開被覆のいずれかの開集合に属します。その開集合は、c の周りに十分小さな開区間を含みます。

  4. このプロセスを繰り返し、閉区間を次々に半分に分割していきます。この分割プロセスは無限回繰り返されますが、いずれ十分小さな閉区間に到達します。

  5. ここで、無限回の分割が行われた後、各閉区間の中点は開被覆のいずれかの開集合に属します。これらの開集合を選び出すことで、有限個の開集合による部分被覆が得られます。

  6. この部分被覆は、閉区間 [a, b] を完全に覆うため、ハイネ=ボレルの定理が証明されます。

このように、ハイネ=ボレルの定理によって、実数の閉区間 [a, b] がコンパクトであることが示されます。

2.3. コンパクト性に関連する定理

コンパクト性は、連続関数や収束性を研究する際に重要な役割を果たします。例えば、ボルツァノ=ワイエルシュトラスの定理やハイネ=ボレルの定理は、コンパクト空間における連続関数の性質を説明するために重要です。これらの定理は、コンパクト空間において、連続関数が一様連続であることや、有界閉区間上の連続関数が最大値と最小値を持つことを保証します。

3. 連結性:定義と応用

3.1. 連結性の定義

連結性は、位相空間の「一様性」に関連する性質です。位相空間の別の重要な性質であり、空間内の点が「つながっている」かどうかを調べることで定義されます。空間が連結であるとは、その空間が空でない開集合の交わりによって分割できないことを意味します。

3.2. 開区間における連結性

実数の開区間 (a, b) は、連結空間の典型的な例です。この開区間内の任意の2点間には、連続的なパス(直線)が存在します。一方、2つの離れた開区間 (a, b) と (c, d)(a < b < c < d)からなる空間は連結でない例です。これらの2つの開区間は、空間内で互いに離れており、連続的なパスが存在しないため、空間全体は連結ではありません。

3.3. 連結性の応用例

連結性は、位相空間の性質を研究する際に広く応用されます。例えば、連結性は関数の連続性や微分可能性を調べる際に用いられることがあります。また、連結空間におけるパス連結性や局所連結性など、連結性に関連するさまざまな概念が、位相空間の性質を理解するために重要です。

4. 開被覆と族:位相空間の性質を調べる道具

4.1. 開被覆の概念と定義

開被覆は、位相空間の性質を研究するために用いられる概念です。開被覆とは、位相空間 X の部分集合の族であって、その和(結合)が X を完全に含むものを指します。開被覆は、コンパクト性や連結性のような性質を調べる際に重要な役割を果たします。

4.2. 族の概念と定義

族は、集合の要素に順序や添字を付けたものです。族は数学記号で表現され、通常添字を使って要素を区別します。例えば、開集合の族は {U_i} と表記されることがあります。ここで i は添字で、通常は自然数や実数などの集合から取られます。

4.3. 有限部分被覆とコンパクト性

有限部分被覆は、開被覆の中で、有限個の開集合の和(結合)が位相空間全体を含むようなものを指します。コンパクト性は、位相空間が任意の開被覆に対して有限部分被覆を持つことを保証する性質です。

4.4. 開被覆と族の応用例

開被覆と族は、位相空間の性質を研究する際に広く応用されます。例えば、開被覆を用いてコンパクト性や連結性を調べることができます。また、開被覆と族は、連続写像や同相写像の性質を調べる際にも重要な役割を果たします。さらに、開被覆と族を用いて、位相空間の性質を比較することができます。これにより、位相空間の分類や同値性を理解することが可能になります。

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参考:位相と位相空間

位相

位相とは、ある集合上に定義された開集合の構造で、開集合の性質を満たす特定の条件を満たす開集合の集まりです。位相の定義は、開集合の3つの条件(空集合と全体集合が開集合であること、開集合の有限個の交わりが開集合であること、開集合の任意個の和が開集合であること)によって決まります。

位相空間

位相空間とは、集合とその上の位相の組み合わせのことです。すなわち、位相空間は、集合とその集合に対応する開集合の構造からなるものです。位相空間は、集合の「近さ」や「連続性」の概念を形式化する方法を提供します。

つまり、位相は集合上に定義された開集合の構造であり、位相空間はその集合と位相の組み合わせです。位相空間は、位相によって定義された集合の性質を研究する際に用いられます。

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