先日、娘が３歳になった。
誕生日当日は大きな公園の芝生の上にレジャーシートを広げて、テイクアウトのお店で買ったオードブルやサンドイッチを食べた。偏食の娘は見慣れないものは食べようとしないのでアンパンマンのスティックパンを食べていた。ノンアルコールワインの小瓶を夫と分け合って乾杯した。
娘が３歳ということは、私と夫も親になって３歳だ。

ブランコが好きな娘は長い時間ブランコに乗ってはしゃいでいた。夫が強く押しても怖がらずに大笑いしている。あまりに長いこと乗っていたので、他の子も乗りたいから順番だよ、と言って下ろすと大泣きした。
彼女はブランコは大好きなのに滑り台は一人で滑れない。公園の遊具も、意気揚々と階段を登っていくものの、どこにも進めなくなって右往左往してしまう。
平日の人の少ない公園なら付き添ってあげられるものの、週末の子供が溢れかえった遊具でいよいよお腹が大きくなってきた私が一緒にくっついていることも出来ず、その様子をただ見守っていた。

吊り橋の前で「怖いよう」と小さく呟きしばらく立ち止まっていた娘を見て、見知らぬ小学校低学年位の女の子達が「この子怖いって言ってるよ」「そうなの？怖いの？」と言って、手をとって一緒に渡ってくれた。
その後、汽車の形をした遊具では、先頭に設置してあるハンドルを回したくて近づくと、娘より少しだけ大きな男の子が先に遊んでいてなかなか触らせてくれなかった。娘のことが邪魔そうで意地でもその場を譲ってくれない様子だった。

特に口を出すこともなく見守っていただけだけど、公園で遊ぶ子供を見てるだけでも社会の縮図のようだな、と感じた。困った時に誰に助けを求めなくても突然道が開ける時もあるし、その一方で自分の要求をきちんと相手に伝えないと自分の欲しいものは手に入らないこともある。これからそんなことをたくさん学んでいくんだなぁと思った。

妊娠中というのはホルモンバランスのせいでメンタルがぶれてしまうのか、娘を妊娠していた時と同じく、今回もまた自分の子供時代を思い出して落ち込む期間があった。
子供を持つと親のありがたみが分かると言うけれど、もちろん分かった部分や親の苦労に気づけた一方で、逆にどうしてあんなことを言われないといけなかったのだろう？と謎が深まってしまった部分も多い。
何度も考えて反芻することでいつかは答えが出せたり許したり出来るんじゃないかと思っていたけど、結局は毎回傷つき続けてるだけだった。そうすると娘に対する態度も厳しくなってしまっている気がして、どうにか解決の糸口を見つけたくて『毒になる親』（スーザン・フォワード著）を読んでみた。自分が親に受けてきたことも、自分が親としてどうすれば良いのかも知りたかったから。

結論から言うと、最後まで読むことが出来ずにいる。本の中で、読めば解決するわけでもないし、読み進めることも本書に書いてあることを実践することもとても辛く感じることがあるだろうと書いてあったけど、本当にそうだった。
でも本書に書かれている毒親の分類に私の親が当てはまっていることが知れてよかった。そして、それが私（読者）自身に原因があるのではないと何度も何度も書いてくれていることにも救われた。でも、事実としてそれを受け止めて幼少期を思い出すと言う行為があまりに悲しかったり腹が立ったり悔しかったりして疲れてしまい、長期的に見ればこのまま読み進めて掘り下げていくことは良いことなのかもしれないけれど、目の前の家族と向き合ったりお腹の赤ちゃんのことを思うと、ひとまずこの事について考えることはやめた方がいいと思って中断したのだった。

そんな矢先に娘の七五三を、私の実家の近くでやらないかと夫が提案してきた。私が子供の頃に七五三をした神社でやろう、お父さんお母さんにも孫の晴れ着姿を見せてあげようと言うことだった。
私が私の親のことをどう思っているかに関係なく、娘と祖父母の関係は良好なものであってほしいと心から思っていた。
孫の姿は見せてあげたいし、親に喜んでほしいと思う一方で、どうして親孝行なんてしないといけないんだろうとも思ってしまう。あんなに酷いことを言われてきたのに。あんなに酷い仕打ちを受けてきたのに。
でも親孝行のためにそうするのではないと心に決めて行くことにした。私が産んで育てた可愛い娘を見せびらかしにいくのだ。これは親孝行なんて綺麗事でもなんでもない。私がしたいからするだけなのだと。

公園からの帰り道、車内で爆睡している娘を見て初めて「守ってあげたい」と言う気持ちになって涙が出た。
生まれた時からずっと育ててきて、確かにちゃんと色んなものから守ってきてはいたんだと思うけれど、目の前の命を扱うことに精一杯だったのと、親として正しく育ててあげられるかずっと不安だった。
自分が傷つけられたように、私もまた娘を傷つけてしまうのでないだろうか、親として駄目なんじゃないだろうかという疑いを自分に対してずっと抱いていた。
これから色んなものに相対して生きていく中で味方でいてあげたいな、見守られているんだと言う自信だけは持ってほしいな、とも思ったし、そう言う感情が自然と湧いてくるのなら私もきっと大丈夫なんじゃないかと思えた。

今日やっとCreepy Nutsのメジャーデビュー5周年の武道館公演の録画を見れた。
全部知ってる曲だし、何回も聴いてきたし、ポップな部分もダークな部分も知っていたはずなのに知らない顔を見ている気持ちにもなった。
美しい言葉だけで綺麗事だけを言ってるわけでは全然ないのに、円形にぐるりと配置された観客席に囲まれた会場のステージでライトを浴びてる姿はなんでこんなに美しく見えるんだろうな、と思った。良いことも悪いことも綺麗なことも汚いこともアートに昇華されているからなんだろうか。だとしたら彼等が表現者としての生業を選んでくれたことに感謝しかない。
彼らを追い始めたのはここ3-4年くらいのことなのだけど、私の中でも曲の聴き方が変わったかもしれないと思う部分もあった。私の中にあるルサンチマンの根本はこれなのかもしれないと気付けた箇所もあったし、それすらも最後にだがそれでいいと肯定してもらえた気がした。
わたしにも色んなことがあって、彼らにも日々色んなことがあって、その月日の中で彼らの音楽が伴走するように流れていたことが嬉しい。これからも生々しく響かせてほしい。時が来たらきっとまた見届けに行きたい。