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あなたに魅せられて:心からの小さな愛のささやき

親愛なる愛するパートナーへ

愛するパートナーであるあなたへエッセイ風のラブレターを書くという、この心のこもった試み。このエッセイ風ラブレターを書いていると、私の中にあるあなたへの感情の深さと大きさに圧倒されていることに気づかされました。私の心は言葉では言い尽くせないほどの感情で溢れています。

私たちの愛は、優しさ、強さ、揺るぎないつながりの糸で織られたタペストリーのように複雑で素敵な模様を描きだしている。あなたが私の人生に与えた深い影響は、あなたが思っているよりとても大きいものなのです。普段はあまり愛情をうまく言葉にできていなくて、ごめんね。ちょっと恥ずかしいんだ。

その代り、このエッセイ風ラブレターに私の心を注ぎ、私たちの間にある愛の本質を表現してみたいと思います。

おっと、愛を語る前になぜ私が「妻」という言葉の代わりに「パートナー」という言葉を使うのか説明しておきましょう。理由はシンプルに2つ。

1つ目の理由は、この自由な人を「妻」という狭いカテゴリーに閉じ込めたくなかったから。2つ目の理由もシンプル。相対するときもあれば、共に横を歩むこともあれば、背中を預けることもある人だから。「妻」という言葉は、私の愛する人には似合わない。

では、そのパートナーへ感謝の意を込めながら、このエッセイ風ラブレターを通して愛を伝えていきましょうか。

あなたと出会ったのは、私が社会人生活をしながら大学院進学のために受験勉強をしているときでしたね。仕事をしながら勉強するのは大変でした。それを知ったあなたは、笑顔で応援をしてくれ、ときにはお酒を飲みに誘ってくれたのはとても嬉しかったなぁ。そこで過ごした時間は、私にやる気を与え、気持ちを楽にさせてくれるリラックスの時間となりました。

いつからあなたのことが好きになったのだろう。

たぶん普段から見せてくれる笑顔と、私のことを気遣ってくれるところに惹かれ、いつの間にか恋に落ちていったのだと思う。その恋心が愛へと変わるのにそう時間はかからなかったのを心が覚えています。

付き合ってから結婚するまでには多少の勇気と時間が必要だったことを、ここで正直に告白します。私にとって大学院で研究するということは、学問に人生を捧げるぐらいの気持ちで、とても重要なことでした。

まだ何者でもない自分に、「あなたを幸せにする権利はあるのか?」「結婚生活と研究生活を両立させることはできるのか?」などさまざまな不安がありました。そんな不安要素しか思いつかない私には、あなたが望む幸せな結婚生活を過ごさせてあげられるのか分からず、結婚への二の足を踏ませてきました。

しかし、転機というものはふと訪れるもの。それは私の母方の祖母が亡くなったことから始まったある揉め事。このときに起きた揉め事をきっかけにして、私からではなく、あなたから「結婚しよう!」とプロポーズされたのには驚きました。しかし、驚きはしたけれども私もテンション高く「結婚しよう!」と答えたのを今でもはっきり覚えています。

祖母の死を機に起きた揉め事は、婚姻届という一枚の紙があれば簡単に解決するものでした。それを「結婚しよう」というパワーワードで軽々と乗り越えたあなたの胆力はすごいなと素直に感心していました。

急にプロポーズされたのには驚いたけれど、本当に結婚ってふとしたタイミングでやってくるものなんだなとあの時に実感しました。でも、あなたからプロポーズするというのは勢いあまったものであり、心外で不服だということも知っているから、今度はちゃんと私からプロポーズさせてもらうよ。ただ、まだ準備が整っていないからもう少し待っていてくれると嬉しいな。

無事に婚姻届けを出し、結婚もして幸せな夫婦生活を送れると私たちは思っていたね。しかし、ことはそう簡単には進みはしなかった。

未知と予測不可能の影に覆われたこの世界で、あなたは筋痛性脳脊髄炎(通称:慢性疲労症候群)、そして線維筋痛症という困難な試練に共に直面することになったね。筋痛性脳脊髄炎はまだ治療法のない難病。その上、あなたに襲いかかった病は線維筋痛症という、これまた治療法のない難病。結婚してすぐに発症したこの2つの病気は、私たちの生活に大きな困難として立ちはだかることになりました。

筋痛性脳脊髄炎の影響で、あなたは自力で立ち上がれなくなり、歩行も困難になり、電動車いすを使わなければどこにも行けなくなってしまった。そして、線維筋痛症により全身に引き裂かれるような痛みを感じながら、生きていかなければならなくなった。

しかし、この強大な病いに立ち向かいながら、私たちの愛は困難な状況や病気によって作り上げられた壁を乗り越えて、幸せの花を開き続けています。それは、私たち夫婦を特徴づける心のつながりと揺るぎない不屈の精神の証であるといえるのではないでしょうか。

筋痛性脳脊髄炎と線維筋痛症はあなたの日々に影を落とすかもしれません。でも、この闘いにおいて決して一人ではないことを知ってください。私は揺るぎなくあなたのそばに立ち、この予測不可能な道がもたらすあらゆる紆余曲折に立ち向かう準備ができています。

たまに不安にさせることもあるけれど、私たちは共に、時間や状況の限界に挑む愛、そして難病という境界を超える愛を育んできました。

そして、私はあなたがこの病気に直面したとき、あなたの揺るぎない強さを目の当たりにしてきました。最も暗い日でも、あなたが心の底から勇気を奮い起こすのを私は見てきました。あなたの笑顔と病いに負けない明るさは、私にとってインスピレーションの源であり、愛の力が最も手強い病いにさえ打ち勝つことができるということを思い出させてくれます。

あなたが弱気になったとき、私があなたを抱き、持ち上げ、あなたが素晴らしい人であることを思い出させるために一緒にいることを忘れないでください。

私たちが一緒に過ごす一日一日は天からの贈り物。そして、私が心から大切にする貴重な宝物。私たちの愛は、今この瞬間を受け入れ、最も単純な日常の一コマに喜びを見出すことを教えてくれました。

あなたと一緒にいることで、私は分かち合う笑いの美しさ、優しい触れ合いの心地よさ、理解あるまなざしによる慰めを実感しています。これらの瞬間は、愛であり、思いやりであり、つながりの深さを表していると思わないかい?

そのためにも、もっと話をして、互いの深いところを知っていこう。ドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェは次のように語っているんだ。

結婚生活は長い会話である。結婚生活では他のことはすべて変化していくが、いっしょの時間の大部分は会話に属する。

フリードリッヒ・ニーチェ『人間的、あまりにも人間的』ちくま学芸文庫

シニカルな表現が多い哲学者として有名な哲学者として有名なニーチェ。しかし、一緒に過ごす長い時間をもっと会話に充てることは重要だと説いている。それは結婚生活を続けるために時間をどのように過ごすか、そして会話の重要性を私たちに教えてくれている。あなたの痛みを、辛さを、困難さを私に伝えてほしい。私も全力でそれに立ち向かうから。

そして、あなたが闘っている病気の枠を超えて、私は隣でずっとあなたを見ていることを知ってほしい。あなたの中に宿る、生き生きとした愛に満ちた魂が私には見えているんだ。私たちの旅は予期せぬ方向に進んだかもしれませんね。一般的な「普通」の夫婦生活とは異なるかもしれない。

しかし、あなたと共に歩んだ一歩一歩に感謝しています。あなたは私に、無条件の愛、揺るぎない絆、そして両手を広げて人生の複雑さを受け入れることの本当の意味を教えてくれました。これからも共に歩んでいこう。どれだけ複雑な世界も、私たちにかかれば一足飛びだよ。

つい最近も静岡県伊豆下田に旅をしましたね。本音をいえば、最初は乗り気ではなかったんだ。あなたの体調や旅先でのトラブルを考えると正直、大変な旅になるだろうと思ったから。

でも、せっかくあなたが良くない体調を押してでも「行きたい!」という私の誕生日と結婚記念日のお祝い旅。困難やトラブルも良い記念になると発想を転換させて、思い切って旅に出ることに決めたんだ。

そして、案の定、トラブルはそこそこ起きたね。でも、予想より沢山ではない。あなたの乗っている電動車いすは宿に着いた途端に壊れるし、予想通りあなたの体調は長旅に耐えられず崩れてしまった。

そんな中でも、お腹いっぱい堪能したキンメダイを始めとした美味しい海産物。そして、一緒に見た白い砂浜、青い海と山の間に沈んでいく綺麗な夕日。どれもが楽しい思い出となったね。浜辺で太陽の熱い光に肌をじりじりと焼かれながら、喉に流し込んだ炭酸飲料は格別の味だったね。

ときに私の愛は頼りなさを感じさせてしまうときもあるかもしれない。しかし、揺るぎない決意と不屈の希望をもって、これからも前途にそびえ立つ困難に立ち向かっていこうじゃないか。

私はすべての答えを持っているわけでも、あなたの願いすべてを叶えてあげることはできないかもしれない。それでも、あなたの揺るぎない支えとなり、揺るぎない伴侶となることを約束します。共に未知の世界を航海し、たとえ最も暗い夜であっても、私たちの愛の温もりを共に分かち合っていこうよ。

心の奥底には、限りない愛と無限の可能性に満ちた未来のビジョンがある。私たちの旅は苦難に満ちているかもしれないけれど、私がここにいて、あなたのそばにいる。どんな試練のときもあなたの手を握るためにいることをここに誓います。私たちの愛は、時間と病気の境界を超越し、それは日を追うごとに強くなり、耐え続けるほどに強くなる愛なのだから。

ねぇ、わたしの最愛のパートナー。私は私たちが分かち合っている愛に、私たちが生きてきた瞬間に、そしてこれからの瞬間に、永遠に感謝するよ。

あなたの存在の中に、私は喜びと真に変容する愛を見出しているんだ。私たちの愛は明るく燃える炎であり、私たちの人生の暗闇を照らすもの。一緒にいれば、どんな困難にも立ち向かうことができるはず。そんな風に考えているし、あなたもそんな風に思っていてくれると嬉しいなぁ。

あなたの筋痛性脳脊髄炎と線維筋痛症との闘いは、あなたの勇気と不屈の精神の深さを明らかにしてきました。この不治の病が課す日々の試練に立ち向かうあなた。その中にある計り知れない強さを、私は目の当たりにしました。あなたは行く手に立ちはだかる困難にもかかわらず、毎日を精一杯生きようとする。生きるという揺るぎない決意をもって、ときには涙を見せることがあるけれど、病いを乗り越えていくあなたを誇らしく思っています。

あなたが弱音を吐く瞬間、私は思いやりと共感の本当の意味を理解するようになったよ。私たちは共に、愛が単なる言葉や身振りを超えて広がっていることを発見しましたね。

それは、人生の試練や苦難の中で互いに支え合い、手を取り合って歩むことを可能にする深い理解ともいえます。私たちが分かち合う経験とつながりにこそ、私たちの愛は揺るぎない確固たる基盤をより堅くしていけるさ。

筋痛性脳脊髄炎と線維筋痛症いう複雑な迷宮を進むにつれ、私は人生のはかなさと、私たちが分かち合える祝福された一瞬一瞬を大切にすることを思い知らされました。

私たちが一緒に目撃するすべての日の出、夜に残るささやくような会話、言葉以上に多くを伝える優しい触れ合い。これらは私たちの愛の物語のモザイクを構成する貴重な断片。それらは、私の存在そのものに刻み込まれた、大切な思い出となっています。あなたはどうかな?

思い出といえば、変わったことと変わらないことがあるね。変わったのはふたりの体型。ふたりとも体重の変化があって、あなたは体型が変わるたびに結婚指輪を大事にサイズ直ししてるね。ふたりで買った指輪があなたにとって、夫婦の絆を確かめる1つの証として大事にしているのを見ていて、とても微笑ましいよ。

髪型も出会ったときとは、また違う形になってるのも変化の一つかな。その中でふたりでヘアドネーションにチャレンジしたのも良い思い出。あなたより私の方が髪が長くなって、寄付する髪の量もびっくりするぐらいできたし、楽しい思い出として記憶だけじゃなく、記録にもなったね。

変わらないのは、結婚記念の月に撮影する記念写真。結婚した当初は似顔絵を描いてもらっていたけど、病気が進行して描いてもらっている時間も座れる体力が無くなってしまったあなた。

その代わりに近くの写真館で記念写真を撮影するようになってからは、似顔絵時代よりもふたりの姿の移り変わりが顕著に分かるようになったのは、ふたりの絆を深めることにつながったね。

写真撮影で、より記憶と記録に残るようになり、幸せを残せるイベントとなったのはちょっと意外で驚きだったな。

撮ってもらった写真を額縁に入れて壁に飾って、この年はなにがあったとか思い出を語ったりして、記憶を幾重の線でなぞるようになったことはふたりの絆をより深くしていくきっかけになって嬉しいよ。それにあなたの笑顔が増えるきっかけになってるのは、とても喜ばしいことだと思ってる。

年を経るごとに思いが深くなっていく大切なイベントとして、これからも記念写真の撮影を続けていこうね。

こんな風に私たちが育み、育んできた愛は、互いの人生に大きな影響を与えることができる証であることを知っていてほしい。

それは、私たちの愛を目にする人々の心を鼓舞し、高揚させ、希望の炎を燃え上がらせる力を持つぐらいの愛であることを証明していこうよ。私たちの愛は、時に私たちを包む暗闇を照らし、逆境に直面しても愛はすべてに打ち勝つことを思い出させてくれる、光の道標なのだから。

最愛の人よ、この2人で歩む人生という旅で決して一人ではないことを忘れないでいてほしい。私は揺るぎない味方として、どんな困難にも立ち向かう準備ができているよ。私たちの愛は、耐える力、癒す慰め、頑張る勇気を与えてくれる。

共に絶望の淵で抱き合い、人生が私たちに与えてくれる貴重な一瞬一瞬を受け入れよう。また、ニーチェの言葉がここで重要になってくると思うから引用させてもらうね。

どちらも相手を通して、自分個人の目標を何か達成しようとするような夫婦関係はうまくいく。

フリードリッヒ・ニーチェ『人間的、あまりにも人間的』ちくま学芸文庫

私たちはお互いを映す鏡みたいな存在なんだ。夫婦としてやっていく上で、独りよがりでは、一緒に生活はできない。ときには、どちらかがワガママを言うときだってあるだろう。そんなとき、しっかり目と目で見つめ合おう。そして、語らい、確かめ合おう。

良いワガママなら2人ともそのワガママを叶えようと努力するだろうし、悪いワガママなら自然と言葉を取り下げるぐらい相手のことを理解できるようになれれば最高。そんなことを繰り返して、最高の時間と経験を積んでいこうね。

私たちの人生という壮大で複雑なタペストリーの中で、筋痛性脳脊髄炎と線維筋痛症は一本の糸に過ぎない。これらの病いは、私たちの人生の道筋を変えるかもしれない。でも、私たちが分かち合っている愛を弱めたりすることはない。一緒にいれば、私たちはどんな苦悩よりも愛し合えるはず。

あなたは私が人生のすべてをあなたに捧げることを嫌がるだろうね。大丈夫、安心して。私は私なりに自分の人生を謳歌していくから。もっと在野の研究者として研鑽を積んで、もっと仕事して、もっとバカになるぐらい人生を楽しむよ。ただ、そんな中でも、私の眼の中心にはあなたが映っているだけの話だから。

さて、最後に一言だけ書いて、このエッセイ風ラブレターを終わりにしよう。心の準備はできたかい?それでは最後の一言だよ。

私はあなたを愛してる。

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