三ツ村崇志/Business Insider Japan 副編

Business insider Japan副編集長。 科学,テクノロジー,医療などに…

三ツ村崇志/Business Insider Japan 副編

Business insider Japan副編集長。 科学,テクノロジー,医療などに関する文章を書いています。Webならどういう記事がウケるのか,実験中です。科学に興味のない人や非専門家と科学コミュニティの間に橋を架けたい人。

最近の記事

消費者に「不要」な営業はどこまで必要か?

先日、洗濯機を新調しようと某大手家電量販店に足を運んだ際に、ひっきりなしに言われたこの言葉がまるで呪詛のように耳に残っています。 ドラム式洗濯機を買おうと意気揚々とお店に足を運び、店員の方を捕まえて ヒアリングをした上で無事に購入……。こちらの細かい質問にもめげずに応じてくださった店員の方に、かなり好印象を抱いていたのですが、その後の購入手続きを進める過程で入れ替わり立ち替わりやってきた別の店員による営業トークのお陰で、リピートする気持ちが根絶やしになってしまいました。

    • 何が「科学」を殺すのか?

      結局、この30年の経済の停滞が日本の科学を停滞させてしまったのでは? 先日、取材の中で思わずそう考えてしまう場面に出くわしました。 8月上旬、国立科学博物館が財政難を理由に1億円を目指したクラウドファンディングに挑戦したことが大きな話題となりました。日本最大の科学博物館にお金がな無い……という衝撃的な現実に、科博ファンをはじめとした多くの人からの支援が集まり、目標金額の1億円はたった9時間で達成。9月現在、7億6000万円を超える資金が集まっています。 Business

      • 「ほどほど」の知識、いかがですか?

        2021年の9月から、Business Insider Japan の有料サービスPREMIUMで「サイエンス思考」という科学技術に関連した連載を続けています。毎月1記事、ときおり2記事、ビジネスの現場でも注目されつつある科学技術を中心に紹介する連載です。 もうすぐ連載開始から3年経つのですが、これだけ科学技術が社会と結びついている現代において、連載開始当初に強く感じていた「科学との接点を持ち続けること」の重要性やそこから生み出される価値の大きさは、年々増しているように思い

        • 「水を守る」そのコストはどこから?

          先日、コカ・コーラが取り組む水資源保全戦略の強化に関する記者会見に参加しました。 飲料水という「水」を使ったビジネスを営んでいる以上、その消費量をできる限り少なくしたり、流域で雨水などがしっかりと地下へと染み込むように森林を保全したり……。実はコカ・コーラはもちろん、サントリーやキリン、アサヒなど、飲料メーカーは各社水資源を守るための取り組みを進めています。 日本にいると実感しにくいかもしれませんが、今後人口がさらに増加していくことが予想される世界においては、飲用に適した

        消費者に「不要」な営業はどこまで必要か?

          「技術はあるのに産業は作れない」をまた繰り返す?

          最近、研究開発系のスタートアップを意味する「ディープテック」という言葉や、大学発ベンチャーなどが注目されるようになってきました。 ただ、最近の取材の中で、まだまだ日本は新しい科学技術を産業化することが苦手なのだろうな、と感じてしまう出来事が続きました。先日、都内の某有名大学に所属する先生とお話ししていたときのことです。 その先生は、日本はもちろん、世界的に注目されている、ある科学技術の領域で世界トップクラスの成果を出している研究者でした。まだ産業化には遠いものの、既に世界

          「技術はあるのに産業は作れない」をまた繰り返す?

          「ウェルカムおにぎり」はいかが?

          ウェルカムおにぎり、あります! 先日、とある書籍の出版イベントに参加したのですが、会場に入るなりそんな看板が目に飛び込んできました。 調べてみると、どうやら会場となった写真集食堂「めぐたま」の名物だそうです。おそらく五穀米を使ったちょっと小さめのおにぎりとほうじ茶が、平日夜、イベントが始まる前の空いたお腹に染み渡りました。 恵比寿駅から徒歩10分ほどの場所にある「めぐたま」というお店は、その名の通り「写真集」に特化したお店だそうで、店内には壁一面に約5000冊の写真集が

          「ウェルカムおにぎり」はいかが?

          海が塩辛いのは、魚が泣いているから?

          「海が塩っ辛いのは、魚たちが涙をながしているから」 先日、珍しく早々と仕事を切り上げて原宿・神宮前のキャットストリートにある「ミルギャラリー神宮前」で開催中(6月12〜18日)の、水中写真家・鍵井靖章さんの写真展に行ってきました。 最初に書いた一文は、この展示会の説明文にあった言葉です。 前職時代、自然や動物の写真を撮影する写真家さんとのお付き合いが多かったこともあり、よくギャラリーなどで開催されている写真展に行っています。もともと海の生物などの美しくも面白い写真をたく

          海が塩辛いのは、魚が泣いているから?

          グラスの厚みで味が変わる?

          街をぶらぶらしながら、なんとなく入った雑貨屋で手作り感のあるグラスや小鉢などの什器を買うのが好きです。特に、ビール党の私がハマっているのが、ビール用のタンブラーです。 自宅の食器棚には、ステンレス製や陶器、プラスチックなど、素材や厚みの違うタンブラーが並んでいます。その日の気分に応じて使い分けているわけですが、なんとなくどのタンブラーを使うかによってビールの「味」も変わるような……。 実際どうなのか調べてみると、確かにグラスの素材や手触りなどによって味の感じ方が変わってく

          グラスの厚みで味が変わる?

          イーロン・マスクの「脳デバイス」が臨床試験に

          スペースXや、テスラなどのCEOを務めるイーロン・マスク氏が創業した「ニューラリンク」という企業が、アメリカの厚生労働省にあたるFDAからヒトに対する臨床試験をするための承認を受けたと発表しました。 ニューラリンクは、脳に電極を埋め込むことで、それを介して電気を流して治療をしたり、体を動かせず、話すこともできないような人の意思を読み取ったりすることを目指して開発されたデバイス。BMI『Brain-Machine Interface』と呼ばれるものの一種です。 近未来的なデ

          イーロン・マスクの「脳デバイス」が臨床試験に

          100億円は高くて安い?日本の核融合ベンチャーが資金調達

          先週に引き続き、今週も核融合に関して大きな発表がありました。 京都大学発ベンチャーで、国内最初の核融合スタートアップでもある京都フュージョニアリングが、105億円の資金調達を発表しました。これで累計調達金額が約122億円になったといいます。 京都フュージョニアリングは、世界的に核融合産業が加速する中で、遅ればせながら2019年に設立された日本のベンチャーです。 世界では、核融合炉を作ろうと数千億円規模の調達をする企業がザラにある中で、京都フュージョニアリングがそれに比較

          100億円は高くて安い?日本の核融合ベンチャーが資金調達

          核融合、2028年までにほんとにできるの?

          5月10日の夜、マイクロソフトが核融合ベンチャーと電力販売契約を結んだというニュースが飛び込んできました。 私自身、ここ2年ほど核融合産業の取材を進めている中で、世界からの期待度が加速的に高まっていることを感じます。ただ、若干期待が先行し過ぎている側面も否めません。 今回マイクロソフトへの電力供給契約を結んだヘリオン・エナジーは、創業10年の会社です。確かにこれまでいくつもプロトタイプを作っており、技術の蓄積もある…。とはいえ、実際に発電を実証したわけではありません。

          核融合、2028年までにほんとにできるの?

          飲みニケーション終了のお知らせ?

          コロナが5月8日から5類に変わることもあり、この連休中には旅行に行ったり、友人たちと飲みにいったりする人が多かったのではないでしょうか。 お酒といえば、コロナ前は上司と部下のいわゆる「飲みニケーション」の文化や、企業間での「会食」などによるコミュニケーションが「仕事をうまく回す要素」のように捉えられていた節がありました。お酒の席や喫煙室などのようにごく限られた人しか参加できない「密室」のコミュニケーションで仕事の方向性が決まってしまうのは問題ではあるものの、少なからずそうい

          飲みニケーション終了のお知らせ?

          あなたのストレス、「記憶」のせいかも?

          日々の生活で溜まるストレス。あまりにもストレスが溜まってしまうと、うつ病の発症などにつながることがありますが、同じストレスを受けても人によって影響はさまざまです。 よく考えると、これって不思議じゃありませんか? この違いは一体どこから来るのでしょうか。 実は4月20日、東北大学の佐々木拓哉教授と東京大学の池谷裕二教授の研究チームが、「記憶」によってストレスの影響の大きさが左右されるかもしれないという興味深い研究結果を発表しました。 あくまでもマウスを使った研究ではあるも

          あなたのストレス、「記憶」のせいかも?

          雷の“ゴロゴロ”音は,何の音?

          もはや夏の風物詩になったゲリラ豪雨。今日も今日とて,突如大雨に晒された関東圏では,いたるところで雷鳴が轟いていた。 雷が「ピカッ」と光ってから,「ゴロゴロ」という音が聞こえるまでの時間を数え,どれくらい離れた場所に落雷があったのかを計算する嫌な子供だった私だが,これほど落雷が頻発すると,さすがに少し怖いと思ってしまった。 ゴロゴロという雷鳴と共にやってくる,あの独特の大気の震えが,なんとも言えない恐怖心を煽ってくるのだ。 そもそも,落雷は,雲の中に蓄えられた電気が地面へ

          雷の“ゴロゴロ”音は,何の音?

          スズメの秘密を知っていますか?

          「スズメってどんな鳥?」と聞かれて,すぐにイメージできる人はどれくらいいるだろう。 とりあえず小さい。全体的に茶色っぽかった気がする。頭はそんなによくはない気がする……などなど,なんとなくぼやけたスズメ像なら,簡単にえがくことができるかもしれない。しかし,「どんな鳥?」と聞かれると,いささか答えにくい。 そんな,地味で,特筆すべき点がなさそうなスズメを研究対象としているのが,総合研究大学院大学 先導科学研究科 特別研究員の加藤貴大さんだ。 (4月からは大学に籍を残したまま

          スズメの秘密を知っていますか?