元採用部長から就活生へー6、決める力

この5年くらいでしょうか?
学生の方が、意思決定をするやり方が気になりはじめたのは。

気になることは3つあります。

一つ目は、ほかの会社も含めてすべての内定(内々定も含みます、以後同じ)がでそろってから考える、といいうものです。
選考過程で多くの情報提供があり、それぞれの会社のこともいろいろ理解ができていて、それでも本命が決まっていないということが不思議です。
最近では、会社側も自社についての理解を深めてほしいので、選考の途中もしくは選考が終わってからでも、質問やきになることがあれば電話や面談等で説明をしますし、先輩社員と話をする機会も用意したりします。
にも拘わらず、どうして並べてからでないと決められないのか?

二つ目は、簡単に内定を反故にすること。
外資系だと採用数を厳格にコントロールしていることが多いので、辞退を見越して多めに内定を出すといいうことができなかったりします。ですので、私は内定を受けてくださる方にしか内定を出さないのです。
つまり、採用枠を超えてしまうとどんなに良い人でも、”見送り”としなくてはいけないことがあるのです。
しかし現状では、内定は辞退しても構わないという風潮ができています。
大学でもそのように教えていたりしますし、メディアでもそのように報道していたりします。そのせいか、”御社に決めました”といっておきながら、平気で辞退します。その学生に内定をだすために、私は別の方に泣く泣くNGをだしているのに。
法的拘束力がない(私はあると思いますが)から、もらえるものはもらっておけ、という考え方でこうした行動をする学生が増えてきているように思います。確かに、内定受諾後の辞退について会社が法的対応をとることはありません。
しかし、口約束でも約束は約束です。
最近の大学では、約束は破ってよいものと教えているのでしょうか?
これは明らかに、公序良俗に反します。

三つ目は、自分で決められないことです。
内定をもらってから、改めていろいろな人に相談して、最終的に自分ではなく、その周りの人の意見を聞いてしまう。
不思議です、自分の人生なのに。

確かに、会社選びは学生の方がそれまでに行ってきた意思決定を大きくことなります。一般的には、ですが。

学生生活もしくはそれ以前でも、様々な場面で意思決定をして自分で選択するということはあると思います。しかし、その選択辞退が自分の生活や人生に大きな影響を影響を与える、というのはほとんどないのではなないでしょうか?

自分で決めて、決めたことに責任をもつ

就職活動は、おそらく初めてのそうした意思決定をする場所なのかもしれません。

昨日(7月30日)に、知人が主催者である「HR Café 2018 日本の未来は明るいか」https://colabhrcafe2018.peatix.com/?lang=ja に参加してきました。
この場でも、”自分で決める”ということが話題になっていました。
”親に言われたから入社した”というような学生が増えてきていて、それは良くない、というようなお話です。(他にも興味深い話がたくさんありました)

確かに、就職を決めるのは重要な意思決定なので、慎重になることはわかります。他にもっと良い会社があるのではないか、と思うこともあるでしょう。しかし、現実的にすべての会社の情報を取得してから決めるというこはできません。

”腹を据えて”自分で決める、そういうことが必要です。

当然にリスクはありますが、それをすべて排除するように意思決定をすると、何も残らなかったりします。確かに就職活動は大切です。多くの場合は一度しか経験しません。私も一生懸命やったほうが良いと思っています。

しかし、就職活動で人生が決まるわけではありません。

就職した会社で定年まで働くということを考える人もいるかもしれませんが、結果としてそうなることはあっても、新卒で入社するタイミングでそれを想定して会社選びをするのは、むしろ現実離れしているように思います。
これだけ変化する社会では、今は将来を約束しないからです。

決める力、いいかえればリスクをとる力、だと思っています。
皆さんは、意識したことはありますか?

皆様のご検討をお祈りしています。

<あとがきに代えて>
新卒で入社した会社を2週間で辞めたいと思い、それでも3年やったら仕事が面白くなって気が付くと29歳になっていました。
その29歳の私は転職をすることになります。
バブルがはじけ、採用数も減り29歳の私には後輩がいなくて、人事ではずっと一番下でした。
”そろそろ異動を考えないと”と部門長からいわれました。せっかく人事の仕事が面白くなってきたのに、他の仕事をするつもりなんてありません。しかたなく、転職活動をすることにしました。もちろん初めての転職活動なので、わからないことばかりでした。人材紹介会社の存在もしられておらず、インターネットがやっと普及しはじめた頃です。それでも、目の前の仕事を頑張り結果を出しながら、将来のためにがむしゃらに学んでいたことが、とても評価され、最も興味のあった外資系の小売業の人事に転職が決まりました。

先輩と部門長に会議室に来てもらい、事情を話しました。部門長は非常に驚ていました。後で聞いたことですが、当時の私が働いていた会社では、過去に純粋な転職目的での退職者は一人もおらず、その第一号が人事から、というのはある意味非常にショッキングな出来事だったようです。過去にも転職者はいましたが、実家に帰るとか稼業を継ぐとか、そういった理由ばかりでした。
先輩社員は、”お前ならやれる”と言ってくれて、快く送り出してくれました。自分で決めたとはいえ、申し訳ないという気持ちと、本当に転職先でやっていけるのか、という不安はありましたが、この先輩の言葉はそれらを大きく和らげてくれました。

つらいことも失敗もありましたが、私を育ててくださったこのお二人には深く感謝しています。


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