元採用部長から就活生へー7、長くて短い就職活動

就職活動は、早い人だと3年の夏のインターンから始まり、長い場合には4年夏くらい(今ごろ)までかかったりします。
決まらない、決めない、始めない。
理由はいろいろありますが、結果として1年近くも就職活動に時間とお金をつかっていることになります。

これだけの時間をつかっての就職活動、皆さんは納得のいく、満足できる結果でしたでしょうか?

リクルートの調べによると、2017年の就職活動の満足度は約80%くらいで、前年より若干落ちているようですが、おおむね満足度は高いようです。
一方その期間については、様々なところから”長すぎる"という意見が出ています。

就職活動は本当に長すぎるのでしょうか?

私は、仕事を選ぶには短すぎて会社を選ぶには長すぎる、と考えています。

日本の新卒採用は、他の国から見ると特殊ということがいわれていますが、卒業後の一括採用は他国でも行われています。最近ではUSやヨーロッパの大手の会社でもそうした採用を行うようになってきていますので、その点だけでは特殊とは言えなくなっています。

それでも私は日本の新卒採用は特殊だと思っています。
それは、大学で学んだことと関係のない業界や職種に応募し採用される、ということです。
それ自体は悪いことではないと思います。私も学生の時の専門は光学を理論でやるというものでしたが、今は人事として、採用として仕事を楽しんでいます。
これはある意味、日本特有の専門性を求めず職種を限定しない”総合職採用”によって実現しています。総合職採用の場合、就職活動でそれまでに学んできたことは考慮されませんし、配属も企業が決めるので、結果として大学生活で何をどの程度学ぶか、ということは職業人生に大した意味を持たない、ということになります。

それでも、自分はどういった仕事(働き方ではなく)で身を立てるのか、ということを大学の前半、できれば大学入学前にある程度の方向性が持てるとよいのではないかと思います。

しかし残念ながら、そういう意識を持つ学生は少数で、大学自体もそこまでの考えには及んでいないように思います。

ある大阪の国立大学で新卒イベントに参加した時のことです。
時期的には2月くらいで、対象は3年生ということになります。皆さんもよく知る大手人材系の会社が大学と一緒に共催の形で行うイベントでしたが、その大学はどうも教授会が強いようで、このイベントにもいろいろと制約を付けました。

”3年の冬というのは就職活動としては時期が早すぎる。勉強にも身が入らなくなってしまう可能性があるので、今回は企業情報の展示、という形にとどめることにする”

ということになったのです。”企業情報の展示”なんてきいたことがありません。具体的には、下記のような状況になりました。

1)プロジェクターを利用しての投影は不可
2)机・椅子はなし、ただし展示者の休憩用として椅子は2つまで利用可能
3)資料の配布も禁止
4)企業情報を印刷したものを、企業ごとに設置するボードに掲示
5)学生に声はかけてはいけない
6)展示資料をみた学生からの質問には答える
7)学生への質問は不可
8)学生の個人情報の取得は不可

大きな体育館に多くの企業のボードが並び、そこにいつも投影で使っていた資料をはって、学生が見て回るのです。

当然学生も知りたい情報が得られないので、滞在時間は少なく、最初こそ人はいましたが、すぐにガラガラになってしまいました。
当然です。意味がないですから。

このイベントの目的はいったい何だったのか、他の会社の方とも話しましたが、まったくわかりません。
おそらくその教授会は、”学校教育法に定めてある通り、大学は研究機関であって育成機関ではない。就職活動によって、研究に身が入らなくなるのはよろしくない”ということなのでしょう。

確かに大学は研究機関として規定されています。
しかし、卒業後のことは考えなくて良いのでしょうか。

これはかなり極端な例(事実です)かもしれませんが、こうした考え方はまだ実在しているらしく、結局大学(特に中堅の国公立)は就職活動について積極的ではありません。一部の大学(特に私立)では、積極的に就職活動支援をしているようですが、それも企業の選び方とかESや面接についてのノウハウを提供しているところが多く、大手の人材系の会社に委託しているところも少なくありません。それらは目先の就職活動をどうするか、というところに集中しているようです。

私の就職活動の時はそんなこと考えもしませんでした。バブルでしたので、バラ色の将来しかみえなかったから、深く考えなかったのかもしれません。しかし、今は当時とは違っていると思うので、自分のことを棚に上げた話をしています。

転勤がない、ワークライフバランスといった働き方の視点も重要ですが、それでも人生の多くの時間を働くことに費やすので、自分にとって充実したものであったほうがよいと思います。そのためにも、どんな仕事をするのか、を考えることは大切だと思っています。

これから就職活動をする方はもちろんのこと、すでに就職活動を終えている方も、このことは一度しっかりと考えることをお勧めします。

皆様のご検討をお祈りします。

<あとがきに代えて>
私には二人の子供がいます。
一人は社会人になっており、もう一人は大学1年生です。
上の子が中学になったころに、仕事について一緒に考えるようにしました。いろいろな本を読んだり、自分の性格ややりたいことを大まかに掴むようにしたり。そうこうしているうちに、本人が”農業”に興味をもちました。というか、そうなるように誘導しまったのですが。
大学では農業経済を学び、サークルでは全国の農家を訪ねて回っていました。おかげで、その子供には全国の農家にネットワークがあります。一度その子供が農家の方と話しているそばにいたことがあるのですが、私には何を話しているのかさえわからない難しい言葉を使いながら、楽しそうに話していました。
その子供は本人の意思もあり、米を使った飲食店をやっているベンチャーに入社しました。残念ながら、いろいろと自分の考えていることと違ったようで、長時間労働もあって1年目の夏には辞めてしまいました。
その後、自分なりにいろいろと再度考えて、いまでは農業法人で米をつくっています。農家になったのです。
7月にそこを訪ねて、働いている様子を見させてもらいました。
子供が大きなトラクターを運転し颯爽としている姿をみて、とても関心しました。ちなみに、我が家では車の免許はマニュアルでないとダメとしているので、トラクターや農業に必須の軽トラも難なく乗りこなしていました。
本人も楽しんでいるようで、なにより自分で決めたことなので一生懸命やっていますし、私も応援しています。
どのような人生になるのか、とても楽しみです。

下の子供は、私が外資にいたこともあり、中学から英語を一生懸命やっていました。上の子供よりちょっと遅い高校になってから、英語を武器に働くことについて話をするようになりました。そのころには、帰国子女と同等レベル以上の英語力になっていました。私よりずっと高いレベルです。英語(他の言語も)は道具で通訳・翻訳までいかないと仕事にならないことを話して、それは違うということが確認できました。その後またいろいろ話をしているうちに観光に興味を持つようになりました。実はこれも私が誘導してしまったところはあります。そしてその道で働くことを目指して、大学の観光に関連した学部に入学しました。
どうもそういう意識をもって大学にいる人は少ないらしく、周りからは特殊な人物だといわれているようです。
東京オリンピックもあるので、大学時代に貴重な経験ができるのではと期待しています。
こちらも将来が楽しみです。

どちらも就職活動という意味では成功しないかもしれません。それでも人生という意味では充実してほしいと思っています。

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