元採用部長から就活生へー5、コミュニケーション力

企業が学生に求める能力の一つとしてコミュニケーション能力があります。
おそらく多くの企業で選考にあたっての重要な項目となっていますし、
学生の皆さんもおそらく意識されていると思います。

この”コミュニケーション力”、非常によく使われる言葉ですが本当にみなさん同じ理解をされているのでしょうか?

私がある会社に採用のManagerとして入社したとき、
その会社は新卒採用の1次面接としてGroup Discussionを行っていました。
入社したその日にオブザーバーとして参加して、
私の部下にあたる採用担当とそれぞれ評価をしました。
その結果を付け合わせましたが、多くの項目で一致することがなく、
特にコミュニケーション力の評価はほぼ正反対の評価となりました。

その時のコミュケーション力の定義はそれぞれ以下のようなものでした。

私の定義
1.相手の意図(発言ではなく)理解する
2.自分の意図を伝える
3.その一致と差異を理解する

部下の定義
1.積極的に発言
2.言葉につまらない
3.豊かな語彙と表現力

これでは同じ評価になるわけはありません。
例えば、
”発言は一度だけでことばも少なめ、その発言はそれまでの議論を整理し、
次の方向性を示した”
という学生についての評価は、私であれば非常に高く評価しますが、部下の定義ではそれほど高くはならいでしょう。

残念ながら、これは新卒採用における縮図であるように思います。
日常的によく使われる同じ言葉を使っていても、
定義がことなるというのは非常に多く見受けられます。
これは採用を行う上でとても重要なことで、企業はまずそこを認識して
修正していく責任があります。

私自身はコミュニケーションは”意図”を相互に理解しようとする作業だと思っています。

皆さんはどう思いますか?

そういう意味でのコミュニケーション力が高い人というのは、例えば認知症障害を持っている方を介護をしている方、そして小さな子供をもつ母親がそうなのかもしれません。
そうした方々は日常的やりとりから、そうした方々の反応が何を意図するのかを推測し、対応をしていきます。

コミュニケーションスについて、もう一つお話したいと思います。
それは、社会人におけるコミュニケーション能力についてです。

社会人になるとやはり皆さん時間を大切にします。
ですので、メールでも電話でもコミュニケーションに必要なやり取りは限りなく少ないしたいと考えています。
しかしながら、とくに携帯電話やメール、チャットなどが普及してからは、そうしたコミュニケーションが苦手な方々が増えてきました。

理由は簡単です。

いつでも簡単に連絡ができるので、質を高める必要がないのです。
わからなければすぐに聞ける、
そういう環境が一つ一つのコミュニケーションを雑にしてしまい、
結果、コミュニケーションの能力を低くしてしまっているように思います。

この能力は、手紙を書いたり、字数制限があるなかで自分の考えを表現したり、ということで維持し高めることができます。
毎日2行の日記をつけるだけでも十分かもしれません。

この、”少ないやり取りで結果をだす”コミュニケーション能力は
社会人の能力のなかでも重要なもののひとつだと思っています。

皆様のご検討をお祈りしています。

<あとがきに代えて>
人事への新卒での配属は大変でした。
当時、人事は大変嫌われていて同期の飲み会にもよばれませんでした。
営業部門の飲み会に呼び出されていってみれば、
社内でも力のある課長に飲み会の席で罵倒されたりしました。
でも、塾長にいわれたとおり、3年が経過したところで仕事が面白くて仕方ない状況だったので、人事や会社を辞めるということは考えませんでした。入社以降がんばっていた自己啓発(?)の成果もあって、社内でも仕事のできる方々は私を認めて下さるようになってきました。
”理解者がいる”ということで、そうした環境でも続けられたと思います。

退職して何年もたってから、たまたまその会社の方々と食事をしたとき、
当時の経理の部長さんから、”こいつは一生懸命で優秀だった”
というようなお話をいただきました。
直接のやり取りはほとんどなかった方でしたが、
例え社交辞令であっても、見てくれていた方がここにもいた、と非常にうれしかったことがありました。

その時の自分は、”目の前の仕事を一生懸命やる”と
”10年後の自分のためにやる”という、二つの考え方を持っていました。
それがそうした評価をいただけることになったのかもしれません。

人事では、新卒であっても社長や役員と直接お話することも多いです。
最初は上長や先輩と一緒ですが、暫くして一人でいくようにもなりました。

”一度ですませるように”

その時によく先輩からいわれました。
同じ案件でなんども行き来するのは、組織としての準備不足や能力不足を露呈してしまうことになってしまうからです。

事前の準備は欠かせませんでした。
自分として持って帰ってくるべき役員の返答
そのためのやり取りのストーリー
それぞれの役員の方の質問や意見の想定とその答え
やることはたくさんありました。
この経験は私自身の社会人としての基礎的能力をとても高めてくれました。

社会人として、人事として、私を育ててくれた最初の会社の上長や諸先輩には、いまでも深く感謝しています。
今の自分があるのは、間違いなくこの会社の上司や先輩方のおかげです。

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